シリア革命反体制勢力国民連立のスタンドプレイに対して主にシリア国内の諸組織から激しい反発の声が沸き起こるなか、アレッポ県では人民防衛隊がイスラーム国と交戦し後者のアミールを殺害、ヌスラ戦線司令官は後者によって拉致される(2013年9月26日)

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反体制勢力の動き

ザマーン・ワスル(9月26日付)は、シリア国内のサラフィー主義武装集団が、「ムハンマド軍」の名で統合をめざしていると報じた。

この動きは、シリア革命反体制勢力国民連立による「シリア国民軍(中核)」の創設に向けた動きに対抗して4ヶ月前に始動したという。

ヌスラ戦線をはじめとする13の武装集団が、シリア革命反体制勢力国民連立を拒否する声明を出したのも、この動きの一環だという。

「ムハンマド軍」には、シャーム自由人大隊、イスラーム旅団、タウヒード旅団などの参加が見込まれ、その兵力は約50,000人に達し、スンナ派戦闘員のみから構成され、2014年末までの結成をめざすという。

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弁護士組合評議会を名乗る組織が声明を出し、同評議会および現地の軍事部門が、シリア革命反体制勢力国民連立を拒否するとしたシャームの民のヌスラ戦線など13の武装集団に同調すると発表、「連立はシリア国民の代表ではない」と非難した。

またジュネーブ2会議への参加を示唆した最近の幹部らの発言に関しても「革命の要請に反する」と批判した。

一方、アフマド・トゥウマ氏が発足をめざしている暫定政府については、シリア国内の勢力をもって構成するよう呼びかけるとともに、「責任を負うことができなければ承認しない」と述べた。

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シリア国民評議会元事務局長のブルハーン・ガルユーン氏は、シリア革命反体制勢力国民連立を拒否するとしたシャームの民のヌスラ戦線など13の武装集団の声明に関して「反体制勢力の信頼回復の努力を打ちのめす」動きと批判した。

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シリア民主世俗主義諸勢力連立は声明を出し、化学兵器使用を口実とした米英仏のシリア攻撃の試みを非難する一方、シリア革命反体制勢力国民連立を構成する諸勢力に対して、連立を脱会し、新たな政治同盟を結成するよう呼びかけた。

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アンマール・ワーウィー空挺大尉はユーチューブ(9月26日付)などを通じて声明を出し、シリア国内の30以上の反体制武装集団がシリア革命反体制勢力国民連立と自由シリア軍参謀委員会を承認しないと発表した。

連立と参謀委員会を拒否した武装集団は「シリア国内総合司令部」を名乗る連合組織に所属する武装集団で、共同声明には、リヤード・アスアド大佐、アブー・ワファー大佐(ダマスカス郊外県革命評議会)などが署名しているという。

http://www.youtube.com/watch?v=cyM-8GybxHU

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ジャンディーラス地方とイドリブ県アティマ地方の間で、民主統一党人民防衛隊がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と交戦し、後者のアレッポ州のアミールを名乗るUAE人が死亡した。

またクッルナー・シュラカー(9月26日付)は、複数の活動家らの話として、ラッカ県のシャームの民のヌスラ戦線を指揮するアブー・サアド・ハドラミー司令官が、24日にアレッポ県カフルダーイル村で消息を絶ったと報じた。

同報道によると、ハドラミー司令官は、シリア東部、北部で躍進するイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)への対応についての指示を受けるため、シリア国内の某所でヌスラ戦線指導者のアブー・ムハンマド・ジャウラーニーと会う途中に、ダーイシュに拉致されたとみられる。

ハドラミー司令官はシリアのラッカ県出身で、本名はムハンマド・サイード・アブドゥッラーで、当初は平和的なデモを主導していたが、その後、ヌスラ戦線に参加、ラッカ県の司令官になったという。

一方、SANA(9月26日付)によると、カブターン・ジャバル村、マンスーラ村、クワイリス村、ラスム・アッブード村、ナイラブ村、ハーン・アサル村、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院周辺、アッザーン市、ザバディーヤ市、バヤーヌーン町、シャイフ・サアド村、ハイヤーン町、アズィーザ村、カフルカール村、ミンタール村、ハーン・トゥーマーン村、アレッポ市ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘員がラッカ市内のサイイダ・ビシャーラ教会(ギリシャ・カトリック教会)の、十字架やイコンを焼き討ち、教会にイスラーム国の旗を打ち立てた。

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ダルアー県では、クッルナー・シュラカー(9月26日付)が、シャームの民のヌスラ戦線と反体制武装集団のスルターン・バーシャー・アトラシュ大隊の間で、拉致合戦が激化、緊張が高まっていると報じた。

同報道によると、ムサイフラ町のヌスラ戦線シャリーア委員会に、アトラシュ大隊のファドル・ザインッディーン司令官らが、身柄拘束中の同大隊戦闘員2人の釈放を直談判したことが事の発端。

しかし、ヌスラ戦線は、ザインッディーン司令官ら全員をフラーク市で逮捕、これに対してフラーク市の活動家らがヌスラ戦線のメンバー4人を逮捕し、ザインッディーン司令官らとの捕虜交換を行ったという。

また、シャリーア委員会は、身柄を拘束していた2人のうちの1人ファドル・サーミー・ザインッディーンを釈放した。

スルターン・バーシャー・アトラシュ大隊は自由シリア軍の部隊で、スワイダー県出身者が主体で、指導者のハルドゥーン・ザインッディーン氏らは2013年初めに軍との戦闘で戦死している。

一方、SANA(9月26日付)によると、ナワー市、インヒル市、ヌアイマ村、アトマーン村、アドワーン村、ザアルーラ市、アイン・バーシャー市、ヒーラーン村、ガディール・ブスターン市、カラク村、ヤードゥーダ村、ブスラー・シャーム市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(9月26日付)によると、ハミード村、ジャフファ村、ダルダーラ村で、民主統一党人民防衛隊がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線と交戦、両村を制圧した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(9月26日付)によると、フタイタト・トゥルクマーン市、シャブアー町、リーハーン農場、シャイフーニーヤ村、カースィミーヤ市、ダブラ市、ダーライヤー市、ムウダミーヤト・シャーム市、ランクース市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(9月26日付)によると、マーリキー地区のイラク大使館内の領事館棟に迫撃砲弾が着弾し、イラク人女性1人が死亡、3人が負傷した。

シリア人権監視団によると、バルザ区、ジャウバル区で、軍と反体制武装集団が交戦、軍が砲撃を加えた。

さらに、ドゥンマル区では、10人が軍に逮捕された後、拷問を受けて死亡した。

一方、SANA(9月26日付)

によると、カーブーン区、バルザ区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、スーラーン市、東西ムファッキル村内の軍施設を、反体制武装集団が迫撃し、三村を制圧した。

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ヒムス県では、SANA(9月26日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、クスール地区、ジャウラト・シヤーフ地区、ワルシャ地区、カラービース地区、タルビーサ市、ガントゥー市、ラスタン市、ハウラ地方、ダール・カビーラ村、サムアリール村、タドムル市郊外、カフルラーター市、マアッルブライト市、カフルヌブーダ町、マアッルダッス市、バザーブール村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(9月26日付)によると、ダイル・ザウル市ウルフィー地区、ムワッザフィーン地区、ハウィーカ地区、労働者住宅地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(9月26日付)によると、スーダー村、トゥッファーハ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は「(シリアの)化学兵器廃棄のプロセスが実機段階に入れば、これらの武器が破壊される場所の安全を保障する必要が生じるだろう」としたうえで、「ロシア側はこれらの場所を守ることを支援する用意がある」と述べた。

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シリアの友連絡グループがニューヨークの国連本部で会合を開き、シリア革命反体制勢力国民連立への支援継続・強化などについて協議した。

会合には、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長ら使節団が出席した。

『ハヤート』(9月28日付)によると、フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、会合で、シリアの化学兵器廃棄を定めた国連安保理決議の必要を強調した。

またジョン・ケリー米国務長官は「ここにいる皆が、軍事的勝利などないと考えている。いずれかの当事者が勝利を宣言する前にシリアは崩壊するだろう」と述べた。

さらに、サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、化学兵器廃棄に関する米露合意の履行を、国連憲章第7章に基づく国連安保理決議を通じてシリア政府に迫るべきだと述べる一方、化学兵器問題をめぐるアサド政権の姿勢については「国民の虐殺と正統性回復…のため、時間稼ぎを行っている」と非難した。

また反体制勢力への支援に関して「シリアの将来に過激派が影響を及ぼす道を経つ最善の手段が、穏健派に最大限の支援を行うことだと何度も確認してきた」と述べ、シリア革命反体制勢力国民連立と自由シリア軍(参謀委員会)への全面支援の必要を訴えた。

一方、シリア革命反体制勢力国民連立のジャルバー議長は、国内で台頭する反体制サラフィー主義者を「アサド政権の産物」と断じた。

ジャブラー議長は「アル=カーイダとつながりのある組織は、シリア国民、彼らの革命、愛国的な自由シリア軍とは無関係だと考えている…。過激化の現象は、政権の支援と計画のもとに顕在化した。政権は自由のための革命を宗派内戦にしようとしており、多くのテロ組織を作り出し、彼らに武器を供与した」と述べた。

AFP, September 26, 2013、al-Hayat, September 27, 2013, September 28, 2013、Kull-na Shuraka’, September 26,
2013, September 27, 2013、Kurdonline, September 26, 2013、Naharnet, September
26, 2013、Reuters, September 26, 2013、Rihab News, September 26, 2013、SANA,
September 26, 2013、UPI, September 26, 2013、Zaman al-Wasl, September 26,
2013などをもとに作成。

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