民主統一党のムスリム共同党首が一昨日発生した同党への要撃の背後にシリア・クルド国民評議会がいることを示唆、EU・GCC諸国は外相会議後に発した共同声明のなかで「ヒズブッラーなどによるシリアでの軍事作戦への参加」を批判(2013年6月30日)

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シリア政府の動き

アサド大統領は、18歳以下の幼児・未成年を戦闘に参加させた者に10年から20年の禁固刑、ないしは300万シリア・ポンドの罰金刑に処するための刑法改正を定めた2013年法律第11号を施行した。

反体制勢力の動き

シリア・イスラーム戦線は声明を出し、ハサカ県アームーダー市のデモに対する民主統一党アサーイシュの弾圧を「平和的座り込みを排除するため直接発砲し、平和的参加者を殺戮、脅迫した」と非難、「体制の手先である犯罪者を近く、処罰することを約束する」と発表した。

またシリア・イスラーム戦線は、アームーダー市でのデモ弾圧が、人民防衛隊と、武装集団、ないしはサラフィー主義集団の交戦の結果だとする民主統一党の発表を拒否するよう呼びかけた。

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民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首は、ハーヴァール通信(6月30日付)のインタビューに応じ、そのなかで、ハサカ県アームーダー市での28日のデモや民主統一党要撃の背後にシリア・クルド国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー前事務局長がいると疑った。

ムスリム共同党首は「人民防衛隊戦闘員を要撃した集団と彼が無関係だと希望するが、彼は国家反逆罪を犯している…。我々はスィーダーが関与しなければよかったと思っている」と述べた。

一方、ジュネーブ2会議に関して、ムスリム共同党首は、クルド最高委員会ではなくシリア革命反体制勢力国民連立を通じて、クルド人の代表者を大会に参加させようとしていた米国の方針を拒否していたことを明らかにした。

そのうえで「クルド最高委員会を選ばない(代表として)者は、クルド人民を代表できない。それゆえに我々はジュネーブ2に参加し、大会でクルド人民を代表しようと計画している。クルド人の意思から逸脱したいかなる在外の者も、クルド人を代表できない」と主張した。

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シリア国民評議会は声明を出し、エジプト、レバノン、ヨルダン、トルコに滞在するシリア人に対して、これらの国の内政に干渉しないよう呼びかけた。

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シリア自由人旅団は声明を出し、アレッポ市ブスターン・カスル地区で、軍事情報局の支持を受け、自由シリア軍内で諜報活動を行っていた「アブー・ウマル」を名のるスパイを摘発したと発表した。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、軍がヒムス市ハーリディーヤ地区と旧市街に対して集中的に空爆・砲撃を加え、他の地区との分断を試みた。

一方、SANA(6月30日付)によると、カルヤタイン市周辺、ヒムス市ハーリディーヤ地区、クスール地区、カラービース地区、ジャウラ・シヤーフ地区、ダーラ・カビーラ市、ガントゥー市、ラスタン市、タルビーサ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、『ハヤート』(7月1日付)によると、反体制武装集団がヌッブル市上空を飛行中のシリア軍のヘリコプターを赤外線誘導方式の地対空ミサイルで攻撃、撃墜した。

SANA(6月30日付)によると、ヘリコプターに乗っていた6人が死亡、そのなかには、学校の学年末試験の問題を運ぶために同乗していたアレッポ県教育局の職員もいたという。

このほか、シリア人権監視団によると、タッル・リフアト市、マーイル町が、軍の空爆を受けた。

またアレッポ市では、シリア人権監視団によると、旧市街各所、ブスターン・カスル地区などで軍と反体制武装集団が交戦、ザバディーヤ地区には迫撃砲が着弾した。

一方、SANA(6月30日付)によると、マンナグ村、マーイル町、アウラム・クブラー町、アブティーン村、アレッポ中央刑務所周辺で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、サイフ・ダウラ地区、ザバディーヤ地区で、軍が反体制武装集団と交戦、両地区の制圧を進め、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。さらに、カーディー・アスカル地区、旧市街でも、軍が反体制武装集団と交戦、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、バーラ村、マアッラト・ハルマ村、バンシュ市などに対して、軍が砲撃を行い、女性、子供を含む3人と、戦闘員1人が死亡した。

一方、SANA(6月30日付)によると、ビンニシュ市、ブワイティー市、サルジャ村、マアッラトダブサ市、カフルルーマー村、カフルシャラーヤー市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、第17師団基地周辺、フナイズ村で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(6月30日付)によると、軍がアイン・イーサー地方で反体制武装集団の掃討を完了し、同地方の治安を回復した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で、軍と反体制武装集団が交戦し、反体制武装集団の司令官が死亡した。

一方、SANA(6月30日付)によると、ダイル・ザウル市ハウィーカ地区、ハミーディーヤ地区、工業地区、アルディー地区、マリーイーヤ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またマヤーディーン市では、シャームの民のヌスラ戦線を含む反体制武装集団どうしが略奪品の分配をめぐって交戦し、双方に死傷者が出た。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、シャルムーフ市、タッル・ハミース市・カーミシュリー市間のバフリー農場で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(6月30日付)によると、カラーマ村、カーナー村、アリーシャ村、カーミシュリー市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

他方、クッルナー・シュラカー(6月30日付)によると、カーミシュリー市でアームーダー市との連帯を呼びかける反民主統一党デモが行われ、約100人が参加した。

このデモに対して、民主統一党のアサーイシュが介入、デモを排除した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区、カーブーン区、バルザ区で、軍と反体制武装集団が交戦し、複数の迫撃砲弾が軍警察署、総合情報部第211課などに着弾した。

一方、SANA(6月30日付)によると、バルザ区のスワイダ、タッラ・ミスターフの両街区で、軍が反体制武装集団の掃討を完了し、治安を回復した。

またカーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続けた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、キスワ市の市庁舎近くで爆弾が仕掛けられた車が爆発し、治安要員複数名が死傷した。

またドゥーマー市、ナシャービーヤ町、ダイル・サルマーン市、ムライハ市、ヒッラーン・アワーミード村、アイン・タルマー村、ダーライヤー市郊外などで、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(6月30日付)によると、ドゥーマー市、ハラスター市、ダイル・サルマーン市、ハーミスィーヤ市、ズィヤービーヤ町、ナバク市東部、ランクーシュ市、カーラ市、アドラー市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団、ドゥーマー殉教者旅団メンバー、外国人戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、反体制活動家によると、ダルアー市郊外の対ヨルダン国境地帯に位置する軍の「第37ポイント」を反体制武装集団が制圧した。

一方、SANA(6月30日付)によると、ジャースィム市郊外、ジッリーン村、ナースィリーナ市、スィースーン市、シャブラク村、シャジャラ町、ダルアー市郊外の避難民キャンプで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またムサイフラ町では、反体制武装集団どうしが略奪品の分配をめぐって交戦し、20人以上が死傷した。

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ラタキア県では、SANA(6月30日付)によると、ドゥーリーン村の反体制武装集団の拠点を軍が攻撃し、シャームの民のヌスラ戦線に属すムハージリーン・イラー・アッラー大隊の司令官らを殲滅した。

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ハマー県では、SANA(6月30日付)によると、反体制武装集団がイドリブ県ザーウィヤ山からジューリーン村に向けてロケット弾を発射し、住居、森林、畑で火災が発生した。

またムーリク市では、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

EUとGCCはバーレーンの首都マナーマで第23回合同外相会議を開催し、シリア情勢などについて協議した。

会議後、EUとGCCは共同声明を発表し、「ヒズブッラーなど外国の部隊のシリアでの軍事作戦への参加」を批判、「シリア危機の早急な政治的正常化と、すべての当時者がこの目的を実現するために積極的に貢献することが火急に必要…ジュネーブ2会議を成功させるための条件を作り出すべくあらゆる努力を行うことを誓約」すべきだと表明した。

これに先だって、GCCは29日から30日にかけて外相会議を開き、ヒズブッラー、イラン・イスラーム革命防衛隊の介入、アサド政権へのロシアの無制限な軍事支援を非難する声明を出していた。

なおEUとGCCの共同声明に関連して、サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は「シリア政府への武器供与阻止…、シリアからの外国の占領軍の撤退」を求めるとともに、「シリアのレジスタンスは、今や正統性を失った体制と戦っているのではなく、外国の占領者に対する熾烈な戦争を行っている」と述べ、シリアの紛争を執拗にスンナ派対シーア派の宗派対立として位置づけようとした。

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『ハヤート』(7月1日付)は、複数の消息筋の話として、米上院武器問題特別委員会のメンバー2人が近く、ヨルダンとトルコを訪問し、両国高官と、シリアの反体制勢力への武器供与の可否に関する意見交換を行うと報じた。

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イラン軍のハサン・フェイルーズ・アーザーディー参謀長は、「シリアの合法的な政権に対するテロリストの活動を支援するいわゆるシリアの友連絡グループは、アル=カーイダに依存して孤立したカタールの主張の末路を教訓としなければならない…。それは最近カタールで開催されたシリアの友の会合の全出席者の末路を映し出している」と述べた。

メフル通信(6月30日付)が報じた。

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イラク・クルディスタン地域政府のマスウード・バールザーニー大統領は報道官を通じて声明を出し、ハサカ県アームーダー市でのデモや人民防衛隊要撃を受けて緊張が高まる民主統一党とシリア・クルド・イェキーティー党などの関係に関して、「西クルディスタンのいかなる問題における意見の相違の解決に武力が行使されることを拒否する」との意思を示した。

AFP, June 30, 2013、al-Hayat, July 1, 2013、Kull-na Shuraka’, June 30, 2013、Kurdonline, June 30, 2013、Naharnet, June 30, 2013、Reuters, June 30, 2013、SANA, June 30, 2013、UPI, June 30, 2013などをもとに作成。

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