シリア革命反体制勢力国民連立がG8首脳会談の閉幕宣言をうけ「軍事活動をはじめとするあらゆる手段の行使を留保する」との意思を示す、アレッポ県では人民防衛隊と自由シリア軍が前者によるアフリーン市包囲解除などを骨子とする停戦合意を結ぶ(2013年6月19日)

Contents

反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、「(北アイルランドでのG8首脳会談で)参加国が表明した姿勢を受け、流血を停止させ、アサド体制打倒と、シリア人に対して犯罪を犯した者すべての処罰を求めるシリア国民の意思を実現するあらゆる政治的解決の受諾を遵守し、そのために、軍事活動をはじめとするあらゆる手段の行使を留保する」との意思を示した。

また「アサドの退任は政治的解決の第一条件」として、対話に消極的な姿勢を示した。

一方、連立は、150億ドルの人道支援に謝意を示し、連立の各機関を通じてその配分にあたる必要があると強調した。

さらに、化学兵器使用疑惑に関して、連立は、アサド政権による使用を断じ、国連による調査を改めて求めた。

**

クッルナー・シュラカー(6月19日付)は、反体制勢力の「解放区」で活動する「市民団体」がシリア・ポンドの下落に対処するため、トルコ・リラかヨルダン・ディーナールの流通を求めていると報じた。

**

シリア・ムジャーヒドゥーン連隊を名のる反体制武装集団がビデオ声明を出し、今週になってレバノンのシーア派4人を殺害したと発表した。

シリア政府の動き

『ディヤール』(6月18日付)は、イランがサウジアラビア、クウェート、UAEの石油関連施設、カタールの米軍基地を攻撃するため、長距離ミサイル十万発を配備し、トルコがシリアを攻撃した場合の報復に備えている、とのメッセージをアサド大統領が湾岸諸国に送ったと報じた。

**

マフムード・ズウビー情報大臣はマヤーディーン(6月19日付)に対して、G8首脳会議の首脳宣言に関して、会議参加国がシリア国内でのテロ・暴力、部位供与、資金援助を停止させるための措置を講じられるかどうかにその評価はかかっていると述べ、反体制武装勢力への武器供与を本格化させる意思を示している米仏英を暗に牽制した。

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団が、アリーハー市とラタキア市を結ぶ国際幹線道路にある軍の検問所3カ所を制圧、戦車2輌を破壊、複数の兵士を殺傷した。

同監視団によると、「もしこの街道が完全に制圧することに成功したら」、シリア北部と地中海岸地域の兵站路は遮断される、という。

一方、SANA(6月19日付)によると、トゥウーム村、マアッラトミスリーン市、イドリブ中央刑務所周辺、アブー・ズフール軍事基地周辺、ジスル・シュグール市郊外、マジュダリヤー村、タフタナーズ市、サラーキブ市、サルジャ村、ザルダーナー市、アリーハー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団、ハック旅団のメンバーなど戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ズィヤービーヤ町で、シリア軍とヒズブッラーの戦闘員が反体制武装集団と激しく交戦、また軍がズィヤービーヤ町、バービッラー市などを砲撃した。

同監視団によると、ズィヤービーヤ町を含むサイイダ・ザイナブ町一帯にヒズブッラーの戦闘員とイラクのアビー・ファドル・アッバース旅団の戦闘員の増援部隊が到着しているという。

このほか、同監視団によると、ザマルカー町を軍が砲撃した。

一方、SANA(6月19日付)によると、ハルブーン市、バフダリーヤ村で軍が反体制武装集団の掃討を完了、治安を回復した。

また、ダイル・サルマーン農場、バイヤード村、アルバイン市、ハラスター市、アーリヤ農場、アドラー市、ドゥマイル市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

このほか、ドゥーマー市では、反体制武装集団の東グータ地方からの退去を求めるデモが敢行され、住民数百人が参加した。

**

ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ラタキア市南部入り口にあるバッサ地区の軍の武器庫で爆発があり、少なくとも兵士13人が負傷した。

これに関して、シリア・アラブ・テレビ(6月19日付)は「技術的なミスによるもの」と報じた。

一方、SANA(6月19日付)によると、スッカリーヤ町で、軍がシャームの民のヌスラ戦線の拠点を攻撃、殲滅した。

**

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、マンナグ村、マンナグ航空基地周辺、ドゥワイリーナ市、アレッポ市ライラムーン地区などに空爆を行った。

また、アフリーン市郊外のバイナフ村で、民主統一党が反体制武装集団を放逐、制圧した。

アレッポ市バーブ・ナイラブ地区、カーディー・アスカル地区では、軍が空爆を行った。

カーディー・アスカル地区には、サラフィー主義者の「シャリーア委員会本部」がある。

一方、SANA(6月19日付)によると、マンスーラ村、クワイリス航空基地周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市のライラムーン地区、サラーフッディーン地区、シャイフ・ヒドル地区、ブスターン・カスル地区、サーフール地区、ブスターン・バーシャー地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

クッルナー・シュラカー(6月19日付)は、民主統一党人民防衛隊と反体制武装集団(自由シリア軍)の代表団がアフリーン市で数時間にわたって会合を開き、前者によるアフリーン市包囲解除などを骨子とする停戦合意を結んだと報じた。

同報道によると、この停戦合意は、①6月20日0時00分からの発砲停止、②アフリーン市の包囲解除、③クルド人が居住するアフリーン市郊外の村からの反体制武装集団の撤退、④双方による身柄拘束者の釈放、⑤タウヒード師団司令官(シャーミル)の殺害に関する調査委員会の設置などといった項目からなっているという。

**

ダルアー県では、ヤードゥーダ村、ブスラー・シャーム市、ブスル・ハリール市に対して、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(6月19日付)によると、シャブラク村、スィースーン市、タスィール町、ジッリーン村、ダルアー市各所で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ヒムス県では、カルアト・ヒスン市、アレッポ市ハーリディーヤ地区、タルビーサ市、ダール・カビーラ村、ラスタン市に対して、軍が砲撃・空爆を行った。

一方、SANA(6月19日付)によると、ダイル・フール村、ラスタン市、ハウラ地方、ジュースィーヤ村、タドムル市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団メンバーら戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またタッルカラフ市郊外では、レバノンからの潜入を試みた反体制武装集団を軍が撃退した。

**

ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(6月19日付)によると、カーミシュリー市南部で、反体制武装集団が早朝、爆弾2発を爆破、また晩には国防隊や「シャッビーハ」の拠点・車に対して攻撃を加えた。

**

ダマスカス県では、SANA(6月19日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、SANA(6月19日付)によると、シャーグール区で反体制武装集団が仕掛けた爆弾が爆発し、市民1人が負傷した。

**

ダイル・ザウル県では、SANA(6月19日付)によると、ダイル・ザウル市内で反体制武装集団どうしが略奪品の分配をめぐって衝突し、複数の戦闘員が死傷した。

またシャームの民のヌスラ戦線は市内のシリア正教会に放火した。

これに対して、軍はダイル・ザウル市ジュバイラ地区、マリーイーヤ村で、反体制武装集団の追撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

その他のシリア国内での動き

クッルナー・シュラカー(6月19日付)は、シリア国民評議会のウサーマ・カーディー経済局長の話として、急落を続けるシリア・ポンドが6月末までに1ドル300ポンドにまで下落する勢いだと報じた。

シリア・ポンドは、紛争発生前の2011年3月は1ドル47ポンドだったが、6月半ばには1ドル200ポンドにまで下落している。

諸外国の動き

ヨルダンの治安筋によると、シリア側からヨルダン領内に潜入し、ヨルダン軍部隊を攻撃したシリア人にヨルダン国境警備隊が応戦し、1人を殺害、2人を負傷させた。

**

ヨルダンのインマール・ハムード・シリア避難民問題担当報道官は、シリア人避難民約3,000人が19日に、自発的にシリアに帰国したと発表した。

2011年3月以降ヨルダンに避難していたシリア人の数は約60万人とされ(紛争発生前のヨルダン在住シリア人の数は75万人)、シリアに自発的に故国した避難民の数は61,000人に達したという。

UPI(6月19日付)が報じた。

**

AFP(6月19日付)は、パレスチナのハマースに近い信頼できる複数の消息筋の話として、ハマースがシリアの紛争への対応をめぐり内部対立を露呈しつつあると報じた。

同消息筋によると、ハマースには、現在、イランやヒズブッラーとの関係を維持・強化をめざす勢力と、カタール、エジプト、トルコとの関係強化をめざす勢力に二分されているという。

このうち、カタール、エジプト、トルコとの関係強化をめざす代表人物がハーリド・ミシュアル政治局長だという。

一方、イランやヒズブッラーとの関係の維持・強化をめざす勢力には、イッズッディーン・カッサーム大隊の司令官らがおり、彼らは、ミシュアル政治局長らに対して、これまでイスラエルと軍事的に対抗できたのは、湾岸諸国の支援ではなく、イランやヒズブッラーの支援があったためだと主張している、という。

**

ロイター通信(6月19日付)は、フランス外務省高官の話として、6月22日にドーハで開催されるシリアの友連絡グループ外相級会合で、自由シリア軍参謀委員会への具体的な支援のありようについて審議される予定だと報じた。

AFP, June 19, 2013、al-Diyar, June 18, 2013、al-Hayat, June 20, 2013、Kull-na Shuraka’, June 19, 2013、Kurdonline, June 19, 2013、al-Mayadeen,
July 19, 2013、Naharnet, June 19, 2013、Reuters, June 19, 2013、SANA, June
19, 2013、UPI, June 19, 2013などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.