G8首脳会議が2日間の日程を終え閉幕、首脳宣言ではジュネーブ2会議への支持や化学兵器使用に対する非難などが盛り込まれる、仏大統領「もし有益であるなら、(ロウハーニーイラン新大統領のジュネーブ2参加を)歓迎する」(2013年6月18日)

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諸外国の動き

英国・北アイルランドのロックアーンで2日間の日程で開かれていたG8首脳会議は、首脳宣言を採択して閉幕した。

中心議題となったシリアの紛争については、以下の7点で合意したことが明記された。

1. 人道支援を一段と進め、15億ドルを拠出。
2. シリアの全当事者による対話の場所を早期に設置するため最大限の外交圧力を行使。
3. シリアに移行期政府を作るため、ジュネーブ2会議開催を支持。
4. 政権移行時に権力の空白が生じないよう責任ある国家組織を維持。
5. シリアからテロリストや過激派を排除するよう協力。
6. あらゆる者による化学兵器使用を非難。
7. 将来のシリアの政権が一部の宗派によらずすべてのシリア人によって構成されることを支持。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はクウェート通信(KUNA)のインタビューに応じ、「我々は、(ジュネーブ2)大会が(シリア)政府使節団の降伏宣言のようなものになり、その後に反体制勢力への権力移譲がなされることを断固として拒否する…。もっとも重要なのは、この大会を準備するのにふさわしい雰囲気を外国の当時者が作り出すことだ」と述べた。

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フランスのフランソワ・オランド大統領は、イランの大統領選挙で当選したハサン・ロウハーニー氏のジュネーブ2会議への参加の是非について、「もし有益であるなら、歓迎する」と述べた。

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オーストリアのマイケル・スピンデルガー外務大臣は、UNDOFオーストリア部隊のゴラン高原からの撤退に関して、国連の要請に従うかたちで、4週間で撤退を完了するとの当初の予定を改め、撤退期間を約1ヶ月延長し、7月まで完了させることを明らかにした。

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イランのメフル通信(6月18日付)は、シリアに4,000人にイラン軍兵士の派遣を決定したとの一部報道を外務省報道官が否定したと報じた。

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『ハヤート』(6月19日付)は、ヨルダンの複数の高官の話として、米国がアサド政権による化学兵器使用を一方的に断じ、「穏健な」反体制勢力への軍事支援を公然と行うことを決断したことで、ヨルダンが「強制的にシリアの嵐の渦中に置かれた」と報じた。

ヨルダンは、米国による「穏健な」反体制武装集団への支援を行い拠点となっているという。

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チュニジアのNGOは火曜日(18日)、シリア政府が、シリアでの戦闘に徴用されたが戦闘には参加しなかったチュニジア人囚人43人の「引き渡し」に同意、また「武器を所有し、シリア当局に投降した」チュニジア人戦闘員に対する「公正な裁判」を保証することを誓約したと発表した。

今月このNGOとともにシリアを訪問したダリーラ・ムサッディク弁護士によると、シリア当局は、チュニジアとシリアの市民社会組織の代表らによる「イニシアチブ」に同意したという。

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AFP(6月18日付)によると、シリアで「テロ」活動を行うために戦闘員の募集を行い、シリアの反体制武装集団に参加していたイタリア人青年が、シリアでの戦闘で死亡したとイタリア各紙が報じた。

死亡したのはジュリアーノ・デルネヴォ。ジェノバ出身の23~24歳。2008年にイスラーム教徒に改宗し、イブラーヒームを名のっていた。

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『シャルク・アウサト』(6月18日付)は、自由シリア軍司令部筋の話として、中東地域のある国が6月9日にトルコ経由でシリアの反体制武装集団に高性能兵器を供与したと報じた。

同報道によると、高性能兵器のなかには、旧ソ連製のコンコールス対戦車ミサイル200発、B-10無反動砲1,000発などで、ダルアー県を除く、ダマスカス郊外県、アレッポ県、イドリブ県、ヒムス県の武装集団に支給された。

武器を受け取ったのは、イスラーム旅団、カーブーン・イスラーム教徒軍、ハビーブ・ムスタファー旅団、使徒末裔旅団、サハーバ旅団、北部嵐旅団、タウヒード旅団、シャームの鷹旅団、ファールーク大隊などいずれもサラフィー主義者で、自由シリア軍参謀委員会を経由せずに供与されたという。

武器供与は、「シリアの同胞を救済するためのジハード」を呼びかけたカイロでのイスラーム・ウンマ・ウラマー大会に合わせて行われたという。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市サーフール地区、旧市街などで、軍と反体制武装集団が激しく交戦する一方、アシュラフィーヤ地区の軍の拠点を、反体制武装集団が迫撃砲で攻撃し、多数の死傷者が出た。

アレッポ市サイフ・ダウラ地区では、軍との戦闘で4日前に負傷していたイラク・シャーム・イスラーム国に属す14歳の戦闘員が死亡した。

またマンナグ航空基地周辺などでも軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(6月18日付)によると、アレッポ市バニー・ザイド地区、ジャンドゥール交差点、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

また反体制武装集団がニブル市を迫撃砲で攻撃した。

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ダマスカス県では、SANA(6月18日付)によると、バルザ区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またシャーグール区では、ダマスカス大学文学部のザーヒラ・ジャディーダ副学部長の車に仕掛けられた爆弾が爆発し、同副学部長が重傷を負った。

このテロに関して、『ハヤート』(6月19日付)は工業地区で発生したと報じた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ズィヤービーヤ町、フサイニーヤ町(避難民キャンプ)、ドゥーマー市、ハラスター市、ムライハ市などで、軍がシャームの民のヌスラ戦線などからなる反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(6月18日付)によると、ドゥーマー市、アドラー市、ムライハ市(TAMICO周辺)、ハルブーン市、ダーライヤー市、アフマディーヤ市、ダイル・サルマーン市、ハーン・シャイフ・キャンプで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アブー・ダーリー村が軍の迫撃を受け、バニー・イッズ部族の族長の家が被弾し、アフマド・ムバーラク人民議会議員が死亡した。

一方、SANA(6月18日付)によると、サルジャ村、タフタナーズ市、ビンニシュ市、ラーム・ハムダーン市、シャイフ・バフル市、ハミーディーヤ市、ウンム・ジャリーン村、イフスィム村、カフルシャラーヤー市、ムウタリム村、ナフラ市、アブー・ズフール市、マアッラトミスリーン市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ガントゥー市などに軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(6月18日付)によると、レバノン領内からタッルカラフ市郊外に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退した。

また、タッルドゥー市、タッルダハブ市、カフルラーハー市、ラスタン市、ヒムス市ワーディー・ザハブ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

このほか、タドムル市では、軍がパルミラの遺跡地区(ベル神殿など)を占拠していた反体制武装集団(シャームの民のヌスラ戦線)を掃討した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カフルズィーター市などが軍の砲撃を受けた。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市工業地区、ラサーファ地区などで、軍と反体制武装集団が交戦した。

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タルトゥース県では、SANA(6月18日付)によると、バーニヤース市マイダーン地区で、関係当局がアメリカ製、イスラエル製の武器、湾岸諸国の銀行の振り込み通知書などを押収した。

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ラタキア県では、SANA(6月18日付)によると、シャフルーラ村、ハヤート村、ビント・アブラク村、ワーディー・シャイハーン村、スーラース遺跡、バイト・ファーリス村で、軍がシャームの民のヌスラ戦線の拠点を攻撃・破壊、外国人戦闘員やシャーム自由人大隊戦闘員らを殺傷した。

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ダルアー県では、SANA(6月18日付)によると、ダルアー市、カフルシャムサイン市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(6月18日付)によると、カーミシュリー市のワフダ通りにあるカーディスィーヤ学校で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、市民3人が負傷した。

反体制勢力の動き

パリの自由シリア軍合同司令部中央広報局は、6月28日にシリア国民との連帯と救済を求めるデモの実施を全世界に対して呼びかけた。

中東通信(6月18日付)が報じた。

レバノンの動き

ナハールネット(6月18日付)などによると、南部県サイダー郡のアブラー市で、シャイフ、アフマド・アスィールの支持者とヒズブッラーの支持者が衝突、撃ち合いとなり、1人が死亡、4人が負傷した。

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AFP(6月18日付)によると、ベカーア県バアルベック郡のタイバ渓谷にシリア領から発射された迫撃砲弾2発が着弾した。

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『アフバール』(6月18日付)は、ベカーア県バアルベック郡でシリアの反体制武装集団(サラフィー主義者)に武器供与を行っていたヨルダン人をレバノン軍が身柄拘束したと報じた。

身柄拘束されたのは、マフムード・S(43歳)で、偽造IDを保持し、パレスチナ人のアフマド・フジャイルと名のっていた。

身柄拘束されたSは、当局に対して、レバノン経由でシリアのサラフィー主義者に武器を供与していたことを「誇らしげ」に自供したという。

またSは、カタール赤新月社のハーリド・ディヤーブなる人物から220万ドルを受け取り、サイダー市のアイン・フルワ・パレスチナ難民キャンプでRPG、迫撃砲、カラシニコフ銃、弾薬を購入したほか、トリポリ市の著名なサラフィー主義シャイフにも資金を提供したと自供している。

AFP, June 18, 2013、al-Akhbar, June 18, 2013、al-Hayat, June 19, 2013、Kull-na Shuraka’, June 18, 2013、Kurdonline, June 18, 2013、MENA,
June 18, 2013、Naharnet, June 18, 2013、Reuters, June 18, 2013、SANA, June
18, 2013、al-Sharq al-Awsat, June 18, 2013、UPI, June 18, 2013などをもとに作成。

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