複数の欧米紙が直近の戦闘で「化学兵器」が使用された可能性を報じるなか、民主統一党のムスリム共同党首がアレッポ市での軍と人民防衛隊との交戦に関して「クルド人と反体制武装集団が停戦に合意したことが原因」との見解を示す(2013年4月19日)

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国内の暴力

ダマスカス郊外県では、反対消息筋によると、ダーライヤー市、スバイナ町、ズィヤービーヤ町、ヤルダー市、ダイル・ハビーヤ村、ジュダイダト・アルトゥーズ町、ムウダミーヤト・シャーム市、ジュダイダト・ファドル町などが軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(4月19日付)によると、アドラー市、ナバク市、ザーキヤ町、ミスラーバー市、ダーライヤー市、フジャイラ村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、反体制消息筋によると、ハウラ地方、クサイル市周辺が軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(4月19日付)によると、ラスタン市、ダール・カビーラ村、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またレバノン領内からタッルカラフ市郊外に潜入しようとした戦闘員を軍が撃退した。

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ハマー県では、反体制消息筋によると、カフルズィーター市が軍の砲撃を受けた。

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イドリブ県では、反体制消息筋によると、バーブーリーン村に対する軍の攻撃が続いた。

またシリア人権監視団などによると、タッフ市、バシーリーヤ村、ビンニシュ市、マアッラトミスリーン市などが軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(4月19日付)によると、ジスル・シュグール市、バシュラームーン村、アイン・バーラ村、カスティン市、フーカーニー市、バシーリーヤ村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、反体制消息筋によると、アレッポ市スッカリー地区などが軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(4月19日付)によると、マンナグ村、アルカミーヤ村、タッル・アッジャール村、カフルアントゥーン市、マーイル町、アナダーン市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、マルジャ地区、シュカイイフ地区、ライラムーン地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、反体制消息筋によると、ダイル・ザウル市の航空基地周辺、ラサーファ地区、工業地区で軍と反体制武装集団が交戦、またムーハサン市に対して軍が砲撃を加えた。

一方、アラビーヤ(4月19日付)がダイル・ザウル市内の将校クラブで爆発があったと報じた。しかしSANA(4月19日付)はこれを否定した。

またSANA(4月19日付)によると、ダイル・ザウル市のハウィーカ地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、軍がカーミシュリー市に砲撃を加えた。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ジャムラ村、サイダー町、フラーク市、ヌアイマ村、ナスィーブ村などが軍の砲撃を受けた。

また軍がダルアー市クスール地区に突入する一方、ナーミル村・ヒルバト・ガザーラ町間の国際幹線道路で反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(4月19日付)によると、ダルアー市などで、軍が反体制武装集団を追撃、サウジアラビア国籍のシャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ラビーア町一帯に軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(4月19日付)によると、ムライジュ村、ジュッブ・アフマル村、ガマーム村、ラビーア町で軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

殺害されたヌスラ戦線メンバーのなかには、ベルギー人、チェチェン人、リビア人が含まれている、という。

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ダマスカス県では、SANA(4月19日付)によると、バルザ区で、反体制武装集団が、車で移動中のタミーム・アブドゥッラー大佐を襲撃、暗殺した。

またマッザ区でも、反体制武装集団が、レストランで食事中の社会問題省計画局のアリー・バッラーン局長を撃ち、暗殺した。

またジャウバル区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

国内の動き

SANA(4月20日付)は、ダルアー県高官筋の話として、シリア人避難民約5,000人がヨルダンからシリアに帰国した、と報じた。

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クッルナー・シュラカー(4月20日付)によると、ハマー県サラミーヤ市で「イランとヒズブッラーはアサドとともに敗れる」と銘打った抗議デモが行われた。

またAFP(4月19日付)などによると、イドリブ県カフルナブル市などで反体制デモが行われ、参加者が米ボストンでの爆弾事件に対して弔意を示した。

反体制勢力の動き

民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首はロイター通信(4月19日付)に対して、アレッポ市シャイフ・マクスード地区、アシュラフィーヤ地区などでの軍と人民防衛隊との交戦に関して、「クルド人と反体制武装集団の穏健派の一部が停戦に合意したことが原因だろう」と述べた。

ムスリム共同党首は、トルコ政府とPKKのアブドゥッラ・オジャランとの停戦合意(3月)に関して、「シリアの反体制勢力を支援し、政権退陣を求めるトルコがクルド人マイノリティと和平交渉に入ったのを受けて、トルコがシリアのクルド人を支援することを懸念している」との見方を示した。

一方、自由シリア軍と自らの党の統合に関しては「自由シリア軍が世俗的・民主的シリアをめざすと制約しなければ不可能だ…。自由シリア軍には過激なジハード主義者やサラフィー主義者が参加している」と否定した。

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シリア国内外で活動する著名は反体制活動家が声明を出し、シリア市民権センターの設立を宣言した。

声明に署名したのは、ハビーブ・イーサー、フアード・ハミール、アーリフ・ダリーラ、ナビール・マルズーク、ルーリー・ラクビーら。

センターは、「祖国」概念の再構築、「市民文化とその価値観」の普及をめざすとともに、シリアを「宗教、宗派、エスニシティに基づく差別を越えたすべてのシリア人のもの」と位置づけ、「国民の一部ではなく、全体が最終的な政治権威の行使者」と訴えている。

諸外国の動き

国連安保理は、シリア情勢に関して、人道支援物資配給に対する「妨害」に遺憾の意を示し、「すべての当時者」に対して、シリア全土における人道支援機関の活動を保証することを求める議長声明を全会一致で採択した。

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アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は、国連安保理での非公式会合後、記者団に対して、「私はまだ職務を辞していない。毎日目が覚めては、辞めなければならないと考えているが、今のところそうはしていない。いつか辞めるかもしれないが…、今のところは辞めない…。私の職務の任期が3ヶ月しかないなどと初めて耳にした。まったく根拠がない」と述べた。

またブラーヒーミー共同特別代表は、シリア情勢を「世界でもっとも深刻な危機」としたうえで、「私は今日、安保理に軍事介入は不可能で、望まれていないと言った」と述べた。

さらに「反体制勢力に(移行期)政府樹立を急がないよう忠告した…。反体制勢力に属する多くの人々が政府樹立が、有益で必要だと考えていない」と付言した。

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AFP(4月19日付)は、米匿名高官が、最近のシリア国内での戦闘で化学兵器の「疑いが強い」兵器が使用されたと情報を限定的だが得たと報じた。

同高官によると、化学兵器が限定的・局地的に使用された可能性があり、米諜報機関はこの情報の真偽を確認中だという。

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『ワシントン・ポスト』(4月20日付)と『フォーリン・ポリシー』(4月20日付)は、匿名高官の話として、英仏が国連の潘基文事務総長に対して、シリア国内で入手した土壌サンプルの検査と、目撃者・反体制武装集団の証言をもとに、シリア軍がアレッポ市および同市周辺、ヒムス市およびその周辺、そしておそらくはダマスカス(郊外県)で化学兵器を使用したと報告したと報じた。

『ハヤート』(4月20日付)は、英仏の報告に関して、真剣に検証を行っているとの米国高官の発言を伝える一方、それ以外の高官、専門家が両国の報告を実証することはきわめて困難だと見ていると報じた。

また『ハヤート』は、(米国の)別の匿名高官が、「諜報機関はシリアでの化学兵器の使用を確認できなかった」と述べた、と報じた。

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ザアタリー避難民キャンプで、ヨルダン治安当局がキャンプ外への逃走しようとしたシリア人避難民を取り締まったことに抗議して、避難民数百人が暴徒化し、治安部隊などに投石を行い、治安要員10人が負傷した。

AFP(4月20日付)が報じた。

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RT(4月19日付)は、ロシア外務省のアレクサンドル・ルカシェヴィッチ報道官が、ヨルダン政府による米兵200人の受け入れに関して、シリア危機を悪化させかねないと批判したと報じた。

AFP, April 19, 2013、Akhbar al-Sharq, April 19, 2013、Alarabia.net, April 19, 2013、The Foreign Policy, April 20, 2013、al-Hayat, April 20, 2013、Kull-na Shuraka’, April 19, 2013, April 20, 2013、Kurdonline, April 19, 2013、Naharnet, April 19, 2013、Reuters, April 19, 2013、SANA, April 19, 2013, April 20, 2013、UPI, April 19, 2013、The Washington Post, April 20, 2013などをもとに作成。

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