アサド大統領が独立記念日にあわせて2013年4月16日以前の犯罪に対する恩赦の実施を決定、シリア革命反体制勢力国民連立のヒートゥー暫定政府首班がヌスラ戦線を「同志」と表現(2013年4月16日)

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国内の暴力

アレッポ県では、『ハヤート』(4月17日付)によると、サッハーラ村でタウヒード旅団のヌールッディーン・ザンキー大隊司令官のタウフィーク・シハーブッディーンが負傷し、トルコ領内の病院に搬送されたが死亡した。

またアレッポ市のアンサール地区では、灰色(シャフバー)の楯旅団司令官のアブー・ウバイダが何者かに撃たれ、重傷を負った。

一方、SANA(4月16日付)によると、ハンダラート・キャンプ(キンディー大学病院一帯)、マンナグ村、アルカミーヤ村、マッルアナーズ市、ハーン・アサル村、ナッカーリーン村などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、バーブ・ハディード地区、シュカイイフ地区、シャイフ・マクスード地区などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

他方、シリア人権監視団によると、タラール市からトルコ領内に避難しようとしたシリア人に対して、トルコの国境警備隊が発砲し、複数の負傷者が出た。

ロイター通信(4月17日付)によると、アレッポ市で、シリア赤新月社スタッフと地元評議会メンバーが車でサーフール地区に入り、軍と反体制武装集団に巻き込まれて死亡した市民らの遺体31体を搬出した。

この間、軍と反体制武装集団は戦闘を停止した。

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イドリブ県では、サマーン・ワスル(4月16日付)によると、自由シリア軍の司令官の一人イスマーイール・ウラービーがダーナー市で暗殺された。

同報道によると、自由シリア軍は暗殺を行ったとされるアブー・バナート大隊の戦闘員を追跡し、ダイル・ハッサーン市で4人を殺害、12人を捕捉した。

ウラービーの部隊は、同地域で武装解除キャンペーンを行っていたが、マシュハド市で「イスラーム首長国」樹立をめざすアブー・バナート大隊などと対立、暗殺されたという。

ウラービーはバーブ・ハワー国境通行所制圧を行った活動家一人。

なお、外国人戦闘員が参加しているムハージリーン大隊が最近、反体制武装集団の「穏健派」への暗殺作戦を開始したという。

また、シリア人権監視団によると、ワーディー・ダイフ軍事基地、ハーミディーヤ航空基地の包囲を解除し、タッフ村に進軍した軍を反体制武装集団が撃退、バーブーリーン村に後退させた。

この戦闘で、反体制武装集団の戦闘員1人が死亡した。

一方、SANA(4月16日付)によると、ジスル・シュグール市および同市郊外、サラーキブ市郊外、マアッラトミスリーン市、ワーディー・マハーミール市、ハーン・シャイフーン市郊外などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、シャームの民のヌスラ戦線、イスラームの剣旅団メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またイドリブ市では、医療センター前で武装集団が爆弾を積んだバイクを爆破した。爆発によりセンターや周辺の住宅に被害が出た。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市、ウタイバ村、ハラスター市、スバイナ町(パレスチナ難民キャンプ)などで軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(4月16日付)によると、ハラスター市、ウタイバ村、アドラー市、ナシャービーヤ町などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、ファールーク大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区、ヤルムーク区などで軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(4月16日付)によると、ファハーマ地区で、反体制武装集団が車に仕掛けた爆弾が爆発した。

また、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市の空港周辺を軍が砲撃した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ブスラー・シャーム市、ジャースィム市などを軍が空爆した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市郊外のタッル・ナビー地区で軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(4月16日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、ワーディー・サーイフ地区、カラービース地区、タッルドゥー市、ラスタン市などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

国内の動き

アサド大統領は独立記念日(4月17日付)に合わせて政令第23号を発し、2013年4月16日以前の犯罪に対する恩赦の実施を決定した。

恩赦は、「民族感情を弱め、人種的・教条的な亀裂をもたらした」プロパガンダ活動、「民族の精神を弱めるような嘘の情報や誇張された情報の発信」、「当局に対して武装内乱を引き起こそうとして行われたすべての行為」、逃亡罪、兵役忌避罪、武器・麻薬取引以外に関する密輸罪に対する刑を全免するとしている。

また「テロ活動を犯すことを意図した陰謀」、「国家の経済的、社会的実体の変更を意図した結社の結成」に対する刑期を4分の1に減刑することを定めている。

なお2012年法律第19号(テロ撲滅法)が定める犯罪は恩赦の対象から除外されている。

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クルドオンライン(4月16日付)は、ハサカ県ハッダード村に対する軍の空爆(11人の民間人が死亡)に関して、複数の住民の話として、「バーディヤ自由人」を名乗る自由シリア軍が村にいたことが原因だったと報じた。

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ロシアの複数のメディアが報じたところによると、カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣は、モスクワでロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談し、「シリア国内の反体制勢力の指導者たちは、シリア革命反体制勢力国民連立が外国の介入を拒否し、暴力を否定すれば、その指導者と対話を行う用意がある」と述べた。

これに対して、ラブロフ外務大臣は、シリア人同士の対話を通じた危機解決に向けた平和的イニシアチブを支援するとの意思を示した。

またジャミール副首相は、RT(4月16日付)に対して「我々は今、かつてなく政治的解決に近いところにいる」と述べる一方、シャームの民のヌスラ戦線に関して、「政治的解決の論理の外にいる」と批判し、シリア国民に対して「こうした現象をシリアの国土から一致団結して放逐しよう」と呼びかけた。

反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立のガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班は、トルコのイスタンブールで、シャームの民のヌスラ戦線に関して、「体制打倒のために武器を持つ同志だ」としたうえで、すべての当時者には、制約無しに自由に意見を述べる権利があると述べた。

その一方で「シリア国民は穏健で、テロや過激主義を拒否する…。我々は外国からの戦闘員を必要としていない。支援を必要としているのだ。我々には十分な戦闘員、シャイフがいる」と強調した

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AFP(4月16日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立が、レバノン政府に対して、国境管理を強化し、対シリア国境付近でのヒズブッラーの軍事作戦のすべてを停止させるように呼びかけた、と報じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長はフェイスブック(4月16日付)で、「複数の機関が…人々が依拠できるものすべてを破壊しようとしている」と述べ、メディアを非難し、「我々全員の首を絞めようとしている者がいる…。外国を信用するな、自分自身に頼れ」と呼びかけた。

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またハティーブ議長はアサド大統領の恩赦に関して、「恩赦の前に、16,000人以上にのぼる無実の人々、とりわけ女子供を釈放して欲しい」と批判した。

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イスラーム旅団の殉教志願者大隊が声明を出し、5つの「連隊」が新たに大隊に加入したと発表した。

新たに加入したのは、殉教者サイード・ワーニリー・アブー・ラシード連隊、ルクン・ディーン・フィダーイー連隊、殉教者ハムザ・ヒンディー・アブー・ラーミズ連隊、殉教者アドナーン・ハイドゥー・アブー・ターハー連隊、サーリヒーヤの楯連隊。

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シリア北東部で活動する11の反体制武装集団が、ラッカ第2軍団の発足を宣言した。

司令官はバッシャール・トゥラース少佐。

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シリア革命反体制勢力国民連合は声明を出し、アサド大統領による恩赦に関して、アサド政権から前向きな行為を期待できず、さらなる殺戮と破壊を行おうとしていると非難した。

諸外国の動き

ベルギー連邦検察の報道官は声明を出し、4月16日朝、ベルギー警察がアントウェルペン市とヴィルヴォールデ市の46カ所に突入し、シリアでの戦闘に参加しようとしていた約80人を逮捕したと発表した。

声明によると、逮捕者のなかには、「ベルギー・シャリーア」を名乗る組織のフアード・ベルカースィム報道官らが含まれていた。

「ベルギー・シャリーア」はベルギーでイスラーム国家の樹立をめざす過激派。

警察当局はまた、シリアでの戦闘で負傷しブリュッセルの病院に入院中の男1人に対して事情聴取を行った。

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『ザマン』(4月16日付)は、トルコ警察が、コンヤ市とイスタンブール市シリアへの戦闘員派遣を行う「M.G.」をリーダーとする集団のメンバーの自宅に突入、10人を逮捕した。

同報道によると、逮捕のために、トルコ警察は半年にわたって準備を行っていたという。

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ジョン・ケリー米国務長官は、米国を訪問したサウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣と会談し、シリア情勢、中東和平問題などについて協議した。

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ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ベルリンでカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣と会談し、シリア情勢などについて協議した。

会談後の記者会見で、メルケル首相は「みなが解決を望んでいる。しかし(シリア)情勢はきわめて複雑だ…。反体制勢力に武器を渡すことはないだろう。EUでこの問題について検討したが、意見の相違があった」と述べた。

一方、ハマド首相は、アサド大統領が「正統性を失った。我々はシリア国民と反体制勢力の望みを実現させたいが、アサドには政治的解決への門戸を開く用意がない」と述べた。

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ウィリアム・ヘイグ英外務大臣は下院で、シリアの反体制勢力への装甲車34輌と防弾シールド20セットを増強すると述べた。

AFP, April 16, 2013、Akhbar al-Sharq, April 16, 2013、al-Hayat, April 17, 2013、Kull-na Shuraka’, April 16, 2013, April 17, 2013、Kurdonline,
April 16, 2013、Naharnet, April 16, 2013、Reuters, April 16, 2013, April
17, 2013、SANA, April 16, 2013、UPI, April 16, 2013、Zaman, April 16, 2013、Zaman
al-Wasl, April 16, 2013などをもとに作成。

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