アサド大統領がフランス2のインタビューに応じる:「責任がないというのは正確な言い方ではない。なぜならみなに責任があるからだ。政府にも責任はあり、我々一人一人に責任がある」(2015年4月20日)

アサド大統領はフランス2の単独インタビューに応じた(http://www.francetvinfo.fr/monde/revolte-en-syrie/video-regardez-l-entretien-integral-de-bachar-al-assad_882167.html#xtatc=INT-5)。

インタビューは主に英語によって行われ、全文(http://www.sana.sy/en/?p=37034)およびアラビア語全訳(http://www.sana.sy/%d8%a7%d9%84%d8%b1%d8%a6%d9%8a%d8%b3-%d8%a7%d9%84%d8%a3%d8%b3%d8%af-%d9%84%d9%82%d9%86%d8%a7%d8%a9-%d9%81%d8%b1%d8%a7%d9%86%d8%b32-%d9%81%d8%b1%d9%86%d8%b3%d8%a7-%d9%83%d8%a7%d9%86%d8%aa-%d8%b1.html)はSANA(4月20日付)に掲載された。

SANA, April 20, 2015

SANA, April 20, 2015

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

「紛争の最初の数週間に、テロリストは欧米諸国や地域諸国の支援を受けてシリア情勢に浸透した…。政府である我々の役割は社会と市民を守ることにある。もしあなたが言ったこと(アサド大統領は弾圧という蛮行などを行ったがゆえ、混乱の責任があるとのインタビューアーの発言)が正しいと言うのなら、国民に対して野蛮な振る舞いをし、彼らを殺し、対立する当事者が大国の支援を受けているなかで、政府、あるいは大統領が…どうして4年間も持ちこたえることができたというのか?」

「紛争の6日目に最初の警官が殺害された。どのように? 平和的デモによってか?… 彼はテロリストに殺害されたのだ。銃を持ち、警官を撃つような者はテロリストだ。ジハード主義者であろうがなかろうが問題ではない。なぜなら警官を殺したからだ」。

「すべての政府は自由を支持すべきだ。だがそれは憲法のもとにおいてだ。自由は市民を殺すことを意味するのか? 警官を殺し、学校、病院、電力、インフラを破壊することか? これらは政府ではなくシリア国民のものだ」。

「ISIS(ダーイシュ(イスラーム国)は2006年にイラクで米国の監督のもとに作られたようなものだ。私はイラクにいたことはないし、イラクを支配もしていない。米国がイラクを支配していた。ISISがイラクからシリアに来たのは、混乱が波及したためだ…。シリアに混乱が生じたため、ISISはシリアに来た。ISISが来る前は、ヌスラ戦線、すなわちアル=カーイダが来たし、その前はムスリム同胞団が来た。彼らはいずれも同じ根を持っている」。

「(シリアでの混乱発生・激化の)責任がないというのは正確な言い方ではない。なぜならみなに責任があるからだ…。政府にも責任はあり、我々一人一人に責任がある。すべてのシリア人に責任がある。しかしここにISISをもたらしたのかが何かについて私は話したい。それは混乱、あなたがたの政府…、フランス政府だ」。

「欧米諸国の武器を持ち、その支援を受けている者たちがISISになった。彼らはあなたの国、欧米諸国の支援を受けていた…。あなた方が「穏健」だという者たちは、ISISが台頭したり、欧米諸国が…ヌスラ戦線の存在を認める以前の2012年には、シリア軍兵士の心臓を食べるビデオを公開していた」。

(樽爆弾に関して)「我々の軍が無差別殺戮兵器を使用しているなどということは聞いたことがない。我々の軍を含めて、標的を定めないで兵器を使用する軍などない…。また無差別殺戮という場合…それは使い方が問題になる。その証拠に、米国の無人戦闘機はパキスタンやアフガニスタンで、テロリストよりも多くの民間人を殺している。世界でもっとも精巧な兵器なのにだ。爆弾の種類が問題なのではない。我々が保有しているのは通常の爆弾、兵器だ」。

(シリア軍ヘリコプターが樽爆弾を投下するビデオ、写真などの証拠に関して)「こうしたものは証拠ではない…。あなたが言及している写真とは何ですか? 我々の軍において、そのようなものは見たことがない…。(写真は)検証されなければならない。しかし我々の軍が使用しているのは通常兵器だけだ…。無差別に投下されるような武器は持っていない。それだけだ…。シリア軍ヘリコプターは…テロリストを標的としている…。シリアでの戦争は人々の心を獲得しようとするもので、人々を殺すものではない。人々を殺せば、政府、大統領としての地位を保つことなどできない」。

(化学兵器使用疑惑に関して)「欧米諸国政府の作り話だ…。シリアには二つの塩素工場がある。一つは数年前に閉鎖され、操業していない。もう一つはシリア北部…、トルコ国境にあり、2年前にテロリストによって制圧された…。つまりシリアの塩素は反乱分子が掌握している…。また塩素は大量破壊兵器ではない…。我々が使用している通常兵器は塩素よりも効果的だ。我々はそのようなものを使用する必要がない」。

「我々の兵士は2年前にサリン・ガスの攻撃に曝され、我々は国連の調査を招き入れた。我々がこうした兵器を使用していて、なぜ彼らを招き入れるというのか?」

(有志連合の空爆に関して)「真摯なものでなければ、我々の助けにはならない…。60カ国からなる有志連合と…小国(シリア)の空爆回数を比較すると、我々は10倍の空爆を行っている…。しかもISISはシリア、イラク、リビア、そして地域全体に拡散している。どうして空爆の効果が上がっているなどと言えるのか?」

「テロに対する有志連合が、テロリストを同時に支援する国によって構成されることなどあり得ない…。彼らがテロリストを支援する限り、彼らがシリア、イラクを…攻撃するかどうかは問題ではない。彼らは、テロリストが穏健な反体制派だと言って武器を供与している…。これは矛盾している。うまく行くわけがない」。

(フランスとの関係について)「接触はあるが、協力は行われていない…。我々はあなたの国の治安当局高官の何人かと会ったが、協力は行われていない…。情報交換もない…。フランス側から接触を求めてきた」。

(シリアを訪問したフランス人議員らに関して)「彼らは私に、自分たちがテロリストを支援しておらず、シリアでの流血に与していないことを明確に述べねばならない。彼らはシリアをめぐって間違いを犯した」。

「我々は常に対話に関心を払ってきた…。しかし我々の国でテロリストを支援している政権と対話できるだろうか…? 彼ら(欧米諸国)が政策を変更すれば、我々は対話を行う用意がある」。

(イランやヒズブッラーに関して)「介入と招待の間には大きな違いがある…。世界のすべての政府が、外国、あるいは外国の組織を招いて、何らかの領域において助けを求める権利がある。しかし招待なしに介入する権利を持つ国などない。我々はヒズブッラーを招いている。しかしイラン人を招いてはいない。彼らはここにはいない。彼らは軍隊を派遣していない…。イランとは過去30年以降にわたり通常の関係があるだけだ。両国の合意に基づき…(イランの)士官、司令官が駐在しているだけだ」。

「フランスは米国の中東政策の衛星国家のようなものだ。独立していない。重要性もない。信頼もない」。

(自身の進退に関して)「気にしていない。私はシリア国民が欲するものを気にしている。彼らがバッシャール・アサドを欲すれば、彼はとどまるだろう。彼らが望まなければ、すぐにでも彼は去らねばならない」。

「我々は民主主義の途上にある。これはプロセスであり、長い道のりだ…。西欧、フランスと私を比較すると…、あなたがたは我々よりもずっと前を進んでいる…。あなた方がもっとも親密にしている友好国であるサウジアラビアと私を比べると、もちろん我々は民主的だ」。

AFP, April 20, 2015、AP, April 20, 2015、ARA News, April 20, 2015、Champress, April 20, 2015、al-Hayat, April 21, 2015、Iraqi News, April 20, 2015、Kull-na Shuraka’, April 20, 2015、al-Mada Press, April 20, 2015、Naharnet, April 20, 2015、NNA, April 20, 2015、Reuters, April 20, 2015、SANA, April 20, 2015、UPI, April 20, 2015などをもとに作成。

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