デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表がジュネーブで紛争当事者との個別協議を開始(2015年5月5日)

スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表はスイスのジュネーブで、シリア政府と反体制派の和平交渉(「ジュネーブ3」)再開に向け、シリア政府、反体制派などのすべての紛争当事者との個別協議を開始し、初日にあたる5日にはシリア政府の代表と会談した。

デミストゥラ代表は記者会見で、「2012年のジュネーブ合意に基づき…協議の段階を交渉に転換するための用意をする」ことが個別協議の目的だとしたうえで、「6月末に、我々は現状評価を行い、次の段階に関して決定を下すことになる」と述べ、協議が約2ヶ月にわたって行われることを明らかにした。

ARA News, May 5, 2015

ARA News, May 5, 2015

『ハヤート』(5月6日付)によると、デミストゥラ代表は、シリア政府、40以上の反体制派、イラン、サウジアラビア、トルコ、カタール、国連常任理事国など20カ国の代表らとの個別協議を予定している。

反体制派のなかでは、国内で活動する民主的変革諸勢力国民調整委員会のほか、欧米諸国が「シリア国民の唯一の正統な代表」として承認し、アル=カーイダ系組織(シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動)の勢力拡大を「革命家の勝利」などと支持しているシリア革命反体制勢力国民連立が、協議への参加を表明している。

デミストゥラ代表はまた、国連がテロ組織と認定しているシャームの民のヌスラ戦線、ダーイシュ(イスラーム国)といった組織との協議は行われないと明言した。

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クッルナー・シュラカー(5月5日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立が、ジュネーブでのデミストゥラ代表との個別協議への対応に関して、民主的変革諸勢力国民調整委員会、「武装集団」(具体的な組織名は不明)それぞれと合意を交わしたと伝えた。

シリア革命反体制勢力国民連立と民主的変革諸勢力国民調整委員会の合意は、①「ジュネ-ブ2」終了時点からの和平交渉(「ジュネーブ3」)の再開、②和平交渉の基本目的をジュネーブ合意の実施とする、③体制転換をめざす、④戦闘停止の実現、⑤暫定憲法の発表を通じた政治的正常化の実現、⑥紛争の恒久的解決のための国民合意大会の開催などを骨子とする。

一方、シリア革命反体制勢力国民連立と武装集団の合意は、①体制打倒以外に解決策はない、②移行期において体制の指導者、象徴的幹部が担う役割はない、③政治・軍事勢力間の合意と調整の実現、などを骨子とする。 

AFP, May 5, 2015、AP, May 5, 2015、ARA News, May 5, 2015、Champress, May 5, 2015、al-Hayat, May 6, 2015、Iraqi News, May 5, 2015、Kull-na Shuraka’, May 5, 2015、al-Mada Press, May 5, 2015、Naharnet, May 5, 2015、NNA, May 5, 2015、Reuters, May 5, 2015、SANA, May 5, 2015、UPI, May 5, 2015などをもとに作成。

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