ヌスラ戦線は米軍が教練した「穏健な反体制派」の第30師団がアレッポ県北部の「安全保障地帯」の反体制武装集団の拠点都市マーリア市に入ることを拒否(2015年8月30日)

ARA News(8月30日付)は、米軍の教練を受けシリアに潜入している第30(歩兵)師団の戦闘員の一人、アフマド・アブドゥッラー氏の話として、シャームの民のヌスラ戦線が、ダーイシュ(イスラーム国)が攻勢を強めているマーリア市に第30師団が援軍として派遣されることを拒否した、と報じた。

アブドゥッラー氏によると、ヌスラ戦線と自由シリア軍の戦闘員はこれまで数回にわたり、マーリア市防衛を話し合うための会合を開いてきたが、ヌスラ戦線は、第30師団のマーリア市への派遣を拒否した。

その一方、会合において、ヌスラ戦線は自らの支配地域において第30師団を攻撃しないことも確約したという。

マーリア市は、米トルコ両政府が設置合意したとされる「安全地帯」における反体制武装集団の拠点都市で、同市一帯では、攻勢を強めるダーイシュに対して、シャーム自由人イスラーム運動、シャーム戦線などからなる反体制武装集団が防戦を強いられている。

一方、シリア人権監視団によると、米トルコ両政府が設置合意したとされる「安全地帯」に位置する反体制武装集団の拠点都市マーリア市に対して、ダーイシュ(イスラーム国)が砲撃を加え、ハルジャラ村、ハワール・キリス村一帯で反体制武装集団と交戦した。

また、ARA News(8月30日付)によると、アレッポ市の反体制武装集団支配地域やアアザーズ市で、ダーイシュ(イスラーム国)の攻勢に対抗するため、自由シリア軍の統合と統一作戦司令室の設置を求めるデモが発生した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、有志連合がラッカ市の競技場一帯などを空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)のメンバー少なくとも8人を殺害した。

殺害されたメンバーのなかには外国人の司令官も含まれているという。

またダーイシュは競技場の一部をシャリーア法廷として使用するなど拠点を置いており、この空爆ではダーイシュが拘束している拘置者多数が負傷したとの情報もある。

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スワイダー県では、SANA(8月30日付)によると、ブサイナ丘、ハルフーシュ農場に侵入しようとしたダーイシュ(イスラーム国)を撃退するとともに、サーキヤ村に対して特殊作戦を行い、ダーイシュ戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(8月30日付)によると、タドムル市、柑橘農園、ジャズル・ガス採掘所一帯、カルヤタイン市、採石場一帯、ワーディー・ザカーラをシリア軍が空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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米中央軍(CENTCOM)は、8月30日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して12回の空爆を行ったと発表した。

このうちシリア領内での空爆は1回で、フール町(ハサカ県)近郊のダーイシュに対して攻撃が行われたという。

AFP, August 30, 2015、AP, August 30, 2015、ARA News, August 30, 2015、August 31, 2015、Champress, August 30, 2015、al-Hayat, August 31, 2015、Iraqi News, August 30, 2015、Kull-na Shuraka’, August 30, 2015、al-Mada Press, August 30, 2015、Naharnet, August 30, 2015、NNA, August 30, 2015、Reuters, August 30, 2015、SANA, August 30, 2015、UPI, August 30, 2015などをもとに作成。

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