「ロシア・リスト」に名を連ねる反体制派は民主統一党の招聘見送りに抗議しジュネーブ3会議不参加を示唆する一方、リヤド最高交渉委員会は28日に参加の是非を最終決断(2016年1月27日)

『ハヤート』(1月28日付)によると、デミストゥラ共同特別代表が民主統一党のムスリム共同党首に招聘状を送らなかったことに対し、いわゆる「モスクワ・リスト」に名を連ねる反体制派が憤慨し、ムスリム共同党首が招聘されない場合、ジュネーブ3会議への出席を見合わせるとの態度を示したという。

また彼らは、これと合わせて、バッシャール・ジャアファリー国連代表大使、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣が率いるとされているシリア政府代表団に関して、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣(兼副首相)を団長とするようスタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表に要請したという。

これに関して、ARA News(1月27日付)は、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の参加組織・支援団体から構成されるシリア民主評議会の共同代表を務めるカフム代表のハイサム・マンナーア氏が、民主統一党と西クルディスタン移行期民政局が招聘されていないとして、ジュネーブ3会議への招聘を拒否すると発表した、と伝えた。

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リヤド最高交渉委員会の委員長を務めるリヤード・ヒジャーブ元首相は、委員会が国連の潘基文事務総長に、ジュネーブ3会議への出席に同意する旨文書で直接回答したことを明らかにした。

『ハヤート』(1月28日付)によると、ヒジャーブ元首相は同時に、潘事務総長に対して、「シリア国民に対して国際社会が義務を履行」するよう求め、シリア軍、ロシア軍による住宅地への空爆・砲撃の停止や包囲解除の必要を訴えるとともに、ジュネーブ3会議の議題に関して、ジュネーブ合意(2012年6月)に従い、全権を有する移行期統治機関の樹立、領土の一体性、軍・治安機関の改編を通じた国家機関の維持、あらゆるテロの拒否、アサド大統領と政権幹部を排除したかたちでの多元的態勢の樹立をめざすよう改めて主張した。

ヒジャーブ元首相はさらに、スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表にも書簡を送り、シリア政府による都市の包囲、人道支援物資搬入などに関する国連の対応に関して説明を求め、その回答を待っていることを明らかにした。

なお複数の活動家によると、リヤド最高交渉委員会は、デミストゥラ共同特別代表からの回答を待って、28日に改めて会合を開き、ジュネーブ3会議への対応を最終決定するという。

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『ハヤート』(1月29日付)によると、ロシアのミハイル・ボグダノフ外務副大臣は、ジュネーブ3会議への民主統一党サーリフ・ムスリム共同党首の参加に関して、29日から予定されている会合(第1ラウンド)ではなく、次回ラウンドから参加するだろう、と述べた。

民主統一党がジュネーブ3会議に参加した場合、ISSG(国際シリア連絡グループ)を脱退するとしていたトルコはこれを受け、ISSGへの残留と、2月15日に予定されているISSG会合へのを決めたという。

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『ハヤート』(1月29日付)は、デミストゥラ共同特別代表が送付した招聘状の内容が、シリア政府、リヤド最高交渉委員会宛のものと、いわゆる「ロシア・リスト」宛のもので異なっていると伝えた。

同記事によると、リヤド最高交渉委員会宛のものは、組織(すなわちリヤド最高交渉委員会)に対して、15人の代表を派遣するよう要請しているのに対し、「ロシア・リスト」宛のものは、代表個々人に宛てて送られているという。

また、シリア政府への招聘状は、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣を団長とする使節団に参加が要請されている。

シリア政府側は、交渉使節団の本部をダマスカスに設置し、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣を総監督、バッシャール・ジャアファリー国連シリア代表を団長とする方針をとっていた。

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マーク・トナー米国務省報道官は、29日に開始予定のジュネーブ3会議への参加の是非を最終決断しないリヤド最高交渉委員会の姿勢に関して「前提条件を設けずに…歴史的な機会を活かしジュネーブに行くべきだ」と述べた。

AFP, January 27, 2016、AP, January 27, 2016、ARA News, January 27, 2016、Champress, January 27, 2016、al-Hayat, January 28, 2016、January 29, 2016、Iraqi News, January 27, 2016、Kull-na Shuraka’, January 27, 2016、al-Mada Press, January 27, 2016、Naharnet, January 27, 2016、NNA, January 27, 2016、Reuters, January 27, 2016、SANA, January 27, 2016、UPI, January 27, 2016などをもとに作成。

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