カイロで予定されていたアラブ連盟主催の反体制勢力の大会が「シリア国民評議会と民主的変革諸勢力国民調整委員会の要請により」延期を余儀なくされる(2012年5月14日)

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アラブ連盟主催の反体制勢力大会をめぐる動き

5月16、17日にカイロで開催が予定されていたアラブ連盟主催の反体制勢力の大会は、シリア国民評議会、民主的変革諸勢力国民調整委員会の参加見合わせなど足並みの乱れにより、延期を余儀なくされた。

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シリア国民評議会はローマでの会合で声明を出し、アラブ連盟主催の反体制勢力大会を「アサド政権との交渉団を結成することを目的とした」大会と非難、参加を見合わせると発表した。

シリア国民評議会執行委員会のジブル・シューフィー氏は、『ハヤート』(5月15日付)に対して、アラブ連盟主催の反体制勢力の大会への参加辞退が、「(連盟の)シリア国民評議会への招待状が正式な組織に対してではなく、個々人に対して行われていたため」と述べた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会の執行局は声明を出し、アラブ連盟主催の反体制勢力大会への参加を見合わせると発表した。

同声明によると、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長に書簡を送付し、参加見合わせの理由などを明らかにする、という。

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Kull-na Shurakā’, May 14, 2012

Kull-na Shuraka’, May 14, 2012

シリア国家建設潮流のルワイユ・フサイン代表は声明を出し、アラブ連盟主催の反体制勢力大会に参加すると発表した。

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『クッルナー・シュラカー』(5月14日付)によると、シリア・クルド国民評議会がカーミシュリー市で会合を開き、アラブ連盟主催の反体制勢力大会に、シリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長を団長とする使節団を派遣することで合意した。

また75人が参加した会合では、評議会事務局を構成する無所属代表17人、女性代表1人、青年代表2人を選出した。

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アラブ連盟は声明を出し、16日にカイロで開催を予定していた反体制勢力の大会の延期を発表した。

声明によると、延期は、シリア国民評議会と民主的変革諸勢力国民調整委員会の要請による、という。

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なお『ハヤート』(5月15日付)が入手したカイロでのアラブ連盟主催の反体制勢力大会の参加予定者のリストには68人の反体制活動家が名を連ねている。

主な招待者は、ワリード・ブンニー、ハイサム・マーリフ、ナウワーフ・バシール、ミシェル・キールー、ルワイユ・フサイン、カマール・ルブワーニー、ファーイズ・サーラ、アンマール・カルビー、イマードッディーン・ラシード、アブドゥルアズィーズ・ハイイル、アブドゥルバースィト・スィーダー、アーリフ・ダリーラ、サーディク・ジャラール・アズム、スハイル・アタースィー、ブルハーン・ガルユーン、バスマ・カドマーニー、ジョルジュ・サブラー、リヤード・トゥルク、リヤード・サイフ、サミール・ナッシャール。

国内の暴力

SANA, May 14, 2012

SANA, May 14, 2012

ヒムス県では、自由シリア軍ヒムス市・郊外報道官のサーミー・クルディー少佐によると、ラスタン市に対して、軍・治安部隊が「この2日で300発以上の迫撃砲を撃ち」、同市の奪還を試みたが、自由シリア軍の抵抗によって阻止された。

また自由シリア軍は、軍・治安部隊との交戦により、兵員輸送車3輌を破壊、乗っていた兵士23人を殺害し、数十人を負傷させた。

この戦闘で、自由シリア軍側にも9人の死者が出た。

一方、ロイター通信(5月14日付)によると、軍・治安部隊との交戦で自由シリア軍の司令官の一人アフマド・アイユーブ氏が殺害された。

さらに国連のマーティン・ニスルキー報道官は声明を発表し、ヒムス市でUNSMISの車輌が何者かの発砲を]受けたことを明らかにした。

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ダイル・ザウル県では、SANA(5月14日付)によると、ウカイダート部族の有力シャイフの一人、アブドゥルアズィーズ・ラシード・ハファル氏が載っていた車が反体制武装集団によって襲撃され、同氏と息子、そしてドライバーの3人が暗殺された。

複数の消息筋によると、ハファル氏は「ダイル・ザウルで暗殺された政府に忠実な7人目の人物」だという。

ハファル氏の家族は、政府の諜報活動に関わることを止めるよう反体制勢力から脅迫を受けていた、という。

なお先週にもウカイダート部族の有力シャイフの一人、ムハンマド・ハサン・ガンナーシュ氏がダイル・ザウル県で暗殺されていた。

一方、シリア人権監視団によると、クーリーヤ市で15歳の少年が殺害された。

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ダマスカス県では、SANA(5月14日付)によると、ジャウバル区でアフマド・サルマーン・マアッラー大佐が武装テロ集団に襲撃、暗殺された。

また『クッルナー・シュラカー』(5月14日付)によると、旧市街のサイイダ・ルカイヤ・モスク近くで、ウラマーのアッバース・ラッハーム氏が「武装した何者か」に暗殺された。

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ハマー県では、『ハヤート』(5月15日付)によると、ラターミナ町、ヒヤーリーン町などで反体制デモが発生した。

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アレッポ県では、『ハヤート』(5月15日付)によると、アレッポ市ブスターン・カスル地区などで反体制デモが発生した。

その他の国内での動き

マディーナトナー報道ネットワーク(5月14日付)は、アレッポ大学で学長、副学長、各学部長からなる会合が開催され、学生への意見聴取などを通じた事態への対処などが協議された、と報じた。

会合には、アースィフ・シャウカト副参謀長(中将)、ハサン・トゥルクマーニー副大統領補が出席した、という。

諸外国の動き

EU外相会合は、アサド政権に対する15回目となる追加制裁の発動を承認した。

追加制裁は、アサド政権を資金面で支援するとされる以下2機関と3人を対象とする。

タバコ公社
サリーム・アルトゥーン・グループ

アディーブ・マイヤーラ(シリア中央銀行総裁)
サリーム・アルトゥーン(ビジネスマン)
ユースフ・クライズリー(ビジネスマン)

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ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、記者団に対して、「我々にとって非常に明らかなのは、その事件(シリアでの自爆テロ)の背後にいるテロ集団がアル=カーイダおよびそれと行動をともにする集団だということだ」と述べた。

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イスラエル軍高官はAFP(5月14日付)に対して、アサド政権が崩壊したら、アル=カーイダがゴラン高原に達する危険があると述べたと報じた。

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ハマースのムーサー・アブー・マルズーク政治局副長はAFP(5月14日付)に対して、「シリアはハマースを支援してきた最善の国の一つだが、諸国民は自らの権利を要求し、奪われた権利のすべてを回復する権利がある」と述べ、民主主義、自由を実現するかたちでの問題解決の必要を訴えた。

AFP, May 14, 2012、Akhbar al-Sharq, May 14, 2012、Damas Post, May 14, 2012、al-Hayat, May 15, 2012、Kull-na Shuraka’, May 14, 2012, May 16, 2012、Naharnet.com,
May 14, 2012、Reuters, May 14, 2012、SANA, May 14, 2012、Shabaka Madina-na
al-Ikhbariya, May 14, 2012、al-Watan, May 14, 2012などをもとに作成。

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