サファル内閣が先週施行された輸入規制の廃止を決定する一方、露外相は西側諸国が作成した対シリア安保理決議を支持しない意向を改めて表明(2011年10月4日)

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ザイナブ・フスニーさんをめぐる情報戦

ヒムス市で誘拐・殺害されたのち、首と四肢を切断され家族に引き渡されたとされていたザイナブ・ヒムスィーさんがシリア・アラブ・テレビに出演し、反体制勢力の主張や海外メディアなどの報道がねつ造であると暴露した。

SANA, October 4, 2011

SANA, October 4, 2011

SANA, October 4, 2011

SANA, October 4, 2011

SANA, October 4, 2011

SANA, October 4, 2011

ヒムスィーさんによると、実家の家族は自身の生存をいまだ知らないという。

また自身が殺されたとの報道を知った際、警察に事情を話そうとしたが、周囲の人たちから「治安当局に拷問を受ける」と言われ、止められていたことを明かした。

しかし10月4日に警察に出頭し、真実を話すことを決意したという。

また、自身が当局に逮捕されたことがなく、また自宅が実家のような襲撃を受けたことがないと述べた。

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フェイスブックの「ザイナブ・フスニー」ページ(http://www.facebook.com/Zeinab.AlHosni?ref=ts)のウォールに掲載された写真。

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アサド政権の動き

SANA(10月6日付)は、アーディル・サファル内閣が先週決定された輸入規制に関して、「内閣は昨日(5日)の閣議で、5%以上の関税率が設定された輸入品に関する決定の廃止を決めた」と報じた。

この決定に関してムハンマド・ニダール・シャッアール経済通商大臣は、「輸入品(規制)に関する決定は、市場に悪影響を与え、物価上昇をもたらした…。予想以上にマイナスに作用すると判断するに至り、国民の正当な要求に応えるかたちで同措置を廃止した」と述べた。

SANA, October 4, 2011

SANA, October 4, 2011

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バッシャール・アサド大統領は、ダマスカスを訪問したレバノンのアラブ社会主義連合のアブドゥッラフーム・ムラード書記長、ベイルート・海岸大会フォローアップ委員会のカマール・シャーティーラー総合調整役、ムラービトゥーンのムスタファー・ハムダーン指導委員会書記長と会見し、中東情勢について意見交換を行った。

『サフィール』(10月5日付)は、アサド大統領がこの会談で、今週中に憲法改正委員会が発足し、すべての政党が平等に処遇される人民議会選挙が実施され、与党となった勢力が自由に憲法改正を行い、そのうえで彼らが望む候補者を選出するための大統領選挙が実施されるだろう、と述べたと報じた。

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在ヨルダン・シリア大使館は声明を出し、バフジャト・スライマーン大使が9月30日にヨルダンを砲撃すると脅迫したとの一部報道を否定。

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ダマスカス第二刑事裁判所は、2009年3月に汚職の罪で逮捕・拘留されていたビジネスマンのフィラース・バックール氏の保釈要求を認めた。保釈金は4,000,000シリア・ポンド。

バックール氏はインターネット・通信関連会社のイナーナー通商グループの元会長で、通信機構インターネット局元局長のサーミル・ナーシト局長、通信省通信調整局元局長のサーリフ・サーリム氏とともに身柄拘束されていた。

反体制勢力の動き

アナトリア通信(10月4日付)は、自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐が「シリアの反体制勢力は、体制打倒に向けて対立を統一せねばならない」とアサド政権に対する反体制勢力の抵抗闘争の統一を呼びかけた、と報じた。

同通信によると、この呼びかけはトルコの首都アンカラから行われ、このことは9月以来、一般民衆によるデモに代わってシリア国内での反体制運動の中心を占めるようになった軍離反者の武装闘争さえも在外(亡命)活動家によって指導されていることを示唆するものである。

Akhbar al-Sharq, October 4, 2011

Akhbar al-Sharq, October 4, 2011

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『シャルク・アウサト』(10月4日付)は、カイロ滞在中の反体制活動家のムハンマド・マアムーン・ヒムスィー元人民議会議員が、「イラン政府、ヒズブッラーなど、シリア国民に対して殺人罪を犯したいかなる当事者とも協力・対話することを拒否する」と述べたと報じた。

またトルコで発足宣言がなされたシリア国民評議会に関して、ヒムスィー氏は在エジプトの反体制勢力を代表するかたちで、シリア・ムスリム同胞団が大きな役割を果たしているとしたうえで、「(同胞団と)トルコとの関係によって、シリア国民の利益やシリアの国益を犠牲となってはならない」と警鐘を鳴らしたという。

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シリア共産主義者統一国民委員会のカドリー・ジャミール代表は、ロシアのRIAノーヴォスチ通信の取材に対して、「街頭でのデモを通じて体制を転覆させようとする試みは失敗した。反体制勢力は体制と同様、息詰まっている」と述べた。

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「アレッポ国民結束宣言」を名乗る組織が声明を出し、アサド政権が進める国民対話への支持を表明し、反体制勢力への参加を呼びかけるとともに、外国の干渉拒否、米大使の追放を主唱した。

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シリア人権監視団は、8月にダマスカスで逮捕された活動家6人が、国家に対する暴動の扇動、宗派主義的亀裂の助長、「ダマスカス再生諸委員会」と称する非合法組織の結成、インターネットを通じた偽情報の発信など容疑でダマスカスの民事裁判所に起訴されたと発表した。

起訴されたのは、アースィム・ハムシュー、ルーディー・ウスマーン、ヒンナーディー・ザフルート、ウマル・アフマド、シャーディー・アブー・ファフル、ガッファール・サイード。

主な武力衝突

イドリブ県では、シリア人権監視団など複数の活動家によると、ザーウィヤ山一帯のカフルハーヤー、シャンナーン、サルジャに囲まれた地域で軍と離反兵が衝突、兵士3人と民間人1人の合わせて4人が死亡した。殺害された兵士のうち、1人は同地域の基地に駐留する兵士で、2人は離反兵と見られる。

SANA(10月5日付)は、イドリブ県シャラフ村で武装テロ集団が治安維持部隊を攻撃し、治安維持部隊の軍曹1人が死亡したと報じた。

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ダルアー県では、調整諸委員会によると、ダーイルで治安部隊と離反兵が衝突した。

同組織によると、離反兵はダーイルの検問所を襲撃し、士官1人を負傷させた。

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ヒムス県では、タルビーサでも軍と離反兵の衝突が続いた。

またシリア人権監視団によると、タルビーサ市近郊のダール・カビーラ村の検問所で民間人3人が殺害された。

シリア人権監視団によると、ヒムス市のカラービース地区で身元不明の市民2人の遺体が発見された。

シリア人権監視団によると、共産主義活動家のムスタファー・アリー氏(52歳)が、ヒムス市ジュッブ・ジャンダリー地区で何者かに撃たれ暗殺された。また同地区では、何者かが車に発砲し、乗っていた子供1人が死亡、父親が負傷した。

シリア人権監視団によると、クサイル市では、市民2人が殺害され、2人が負傷した。

SANA(10月5日付)は、ヒムス県ヒムス市のサラーフッディーン通りに武装集団が設置した爆弾が爆発したと報じた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、西側諸国が作成した対シリア安保理決議に関して、「このような文言を支持することはできない…。シリアに対する制裁の余地を残しているがゆえに、受け入れられない」と述べた。

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SANA(10月6日付)は、イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領が、テヘランでマフムード・アブラシュ人民議会議長と会見し、「いかなる外国の干渉もシリア国民の利益、そして中東地域のどの国民の利益にもならない」と述べたと報じた。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は訪問先の南アフリカの首都プレトリアでプレスリリースを出し、国連安保理での対シリア決議の採択およびアサド政権への制裁を支持するとの立場を改めて示した。

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米上院は圧倒的多数の支持によりロバート・フォード在シリア米大使の留任を可決した。

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フランス外務省のベルナール・ヴァレロ報道官は、ラミヤー・シャックール在仏シリア大使に対して、「フランス外務省に数度にわたって呼び出し…、我が国の領内で暴力や脅迫行為を外国が行い、またシリア国内で我が国民に対して同様の行為を行うことを受け入れないだろう」と述べた。

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スウェーデン外務省は、「外交官としてふさわしくない振る舞いを外交官が行うのであれば、彼らはスウェーデンにおいて歓迎されないだろう」と発表し、スウェーデン在住の反体制シリア人への脅迫を行っているとされるシリア大使館職員を追放したことを明らかにした。

外務省はまたこうした行為が続けば、さらなる追放措置を行うと付言した。

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アムネスティ・インターナショナルは在外シリア大使館高官が「組織的」に在外反体制勢力活動家への嫌がらせを行い、反体制的な言動を抑えようとしていると非難した。

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カナダ外務大臣はカナダの企業によるシリア産石油輸入、石油および石油製品の運搬を禁止する措置を講じると発表した。

AFP, October 4, 2011、Akhbar al-Sharq, October 4, 2011, October 5, 2011、al-Hayat, October 5, 2011、Kull-na Shuraka’, October 4, 2011、Reuters, October 4, 2011、al-Safir, October 5, 2011、SANA, October 5, 2011、al-Sharq al-Awsat, October 4, 2011、UPI, October 4, 2011などをもとに作成。

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