軍・治安部隊がヒムス市などで「もっとも激しい」砲撃を行うなか、シリア当局が24日に開催予定の「シリアの友連絡グループ」会合に参加しない意思を表明(2012年2月21日)

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国内の暴力・反体制運動

反体制勢力(シリア人権監視団やシリア革命総合委員会)によると、ヒムス市などで軍・治安部隊が、これまでで「もっとも激しい」砲撃を行った。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区、ハーリディーヤ地区、カラム・ザイトゥーン地区に対する軍・治安部隊の砲撃が早朝から行われた。

シリア人権監視団によると、市内地での戦闘で16人が死亡し、空軍の航空機が上空で偵察活動を行っており、ロンドンを拠点とするシリア人権ネットワークによると、早朝から迫撃砲が少なくとも250発着弾したというが、真偽は定かでない。

また同監視団によると、ダマスカス・ヒムス街道(カーラ市)付近で、ヒムス市方面に向かう軍・治安部隊の戦車、兵員輸送車56輌が目撃された。

シリア革命総合委員会(ハーディー・アブドゥッラーをなのる活動家)が、軍に依然としてとどまっている信頼できる士官らからの情報として伝えたところによると、この増援部隊は、ヒムス市突入か同市各地域への砲撃を任務としている、という。

ナーディル・フサイニーを名のる活動家の一人がロイター通信(2月21日付)に対して明らかにしたところによると、「自由シリア軍は、政府軍がバーブ・アムル地区に進入するのを阻止」し続けており、軍・治安部隊は離反兵の力を削ぐため砲撃を激化している、という。

『ハヤート』(2月22日付)によると、バーブ・アムル地区の住民(約10万人)の約60%はすでに避難している。

シリア人権監視団によると、クサイル市では民間人5人が治安部隊に撃たれて死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がアブディーター村、イブリーン村、バルシューン村に進入した。

またタルナバ村で軍・治安部隊がマイクロバスに発砲し、運転手を殺害した。

さらに対トルコ国境のカフルタハーリーム町では離反兵が軍の兵士5人を殺害、2人を捕捉した、という。

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アレッポ県では、反体制活動家などによると、アレッポ大学理学部の学生約2,500人が反体制デモを行ったが、軍・治安部隊が強制排除した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(2月21日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊が武装テロ集団メンバー4人を殺害した。

アサド政権の動き

Kull-na Shuraka’, February 21, 2012

Kull-na Shuraka’, February 21, 2012

Kull-na Shuraka’, February 21, 2012

Kull-na Shuraka’, February 21, 2012

『ワタン』(2月21日付)は、2月26日に国民投票が予定されている憲法草案に関して、シリア民族社会党ハイダル派が、「大統領の宗教はイスラームである」とした文言に異議を唱え、「新憲法は世俗的市民国家の二大原則である、市民の平等と三権分立への打撃だ」と批判した。

シリア民族社会党ハイダル派は解放変革人民戦線を主導する体制外の親体制組織で、同戦線のカドリー・ジャミール氏がシリア・アラブ共和国憲法草案準備委員会メンバーを務めた。

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『クッルナー・シュラカー』(2月21日付)は、体制外の親体制組織の変革解放人民戦線の支持者約300人が人民議会議事堂前で、「大統領の宗教はイスラームである」と規定した憲法第3条への反対を訴えるデモを行った。

なお同規定は現行憲法、憲法改正案のいずれにも盛り込まれている。

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『クッルナー・シュラカー』(2月21日付)は、進歩国民戦線加盟政党のシリア共産党ファイサル派が、2012年初めに反体制抗議運動への反対の姿勢を決定したことで、各地の各委員会が機能不全に陥っていると報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会広報局長のアフマド・ラマダーン氏は、自身の兄弟でアレッポ市在住のマフムード・アブドゥルカーディル・ラマダーン氏が20日に「シリア政府によって暗殺された」ことを明らかにした。

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自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐は国際赤十字委員会による人道物資搬入や負傷者搬送のための一時休戦の提案を歓迎した。

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シリア国民評議会はヒムス市包囲解除と人道物資の援助・搬入のため、国際社会に緊急の行動を呼びかけ、国際赤十字委員会による人道物資搬入や負傷者搬送のための一時休戦の提案への支持を表明した。

レバノンの動き

アドナーン・マンスール外務大臣は、OTV(2月21日付)に対して、シリアの友連絡グループ会合に関して、「シリアの現状に関与しないという決定に従い、我々はチュニジアの会議には参加しないだろう」と述べた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、24日に開催予定のシリアの友連絡グループ会合に関して、「アサド政権がさらに孤立するかたちで立ち現れる。勇敢なシリア国民は、我々の支援、我々との連帯を必要としている」と述べた。

ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官は、「シリアにおいて軍事的性格を強めることに寄与することが今のところ論理的だと思っていない。我々が望んでいないのは、暴力のエスカレートだ。しかしもし現下の圧力にアサドを応じさせることができなければ、追加措置を検討しなければならない」と述べた。

ジェームズ・クラパー米国家情報長官は米上院国防委員会で、イラクのアル=カーイダがシリア国内での最近のテロ(ダマスカス、アレッポでの自爆テロ)に関与している可能性が高いと証言し、「不快感を喚起する現象として、我々は過激分子が反体制諸組織に浸透しているのを目の当たりにしている…。多くの場合反体制勢力は、彼らの存在に気づいていない」と述べた。

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ロシア外務省報道官は、シリアの友連絡グループ会合に関して、真の目的が明確でない、と述べ、ロシアが参加しないことを明らかにした。

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中国外交部報道官は、シリアの危機を平和的に解決するすべての努力を歓迎するとしつつ、シリアの友連絡グループ会合に関して、参加を「依然として検討している」と述べた。

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イラン外務省報道官は、定例記者会見で、シリア情勢に関して、「シリアの安定化への道のりは、国民と政府の対話の基礎を構築することにある」と述べた。

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国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、シリアのすべての当事者(アサド政権と反体制武装集団)に対して、「暴力行使に抵抗し、民間人保護の重要性を認め、人道機関が支援を必要とする人のもとに障害なく到達できるようにする」よう呼びかけた。

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国際赤十字委員会のヤコブ・ケレンベルガー総裁は改めて声明を出し、シリア政府と反体制勢力の双方と接触し、人道目的での一時停戦の実施を呼びかけていることを明らかにした。

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ガザ地区ガザ市でパレスチナ人数百人(シリア革命救済パレスチナ連合)がシリアでの反体制デモとの連帯を訴えるデモを行い、アサド政権の打倒を呼びかけた。

AFP, February 21, 2012、Akhbar al-Sharq, February 21, 2012、al-Hayat, February 22, 2012、Kull-na Shuraka’, February 21, 2012、Naharnet.com, February
21, 2012、Reuter February 21, 2012、SANA, February 21, 2012、al-Watan, February 21, 2012などをもとに作成。

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