アサド大統領がロシアの外交関係委員会委員長と会談するなか、シリア革命最高軍事評議会のシャイフ准将がシリア・ムスリム同胞団が指導するシリア国民評議会の重要性を否定(2012年2月20日)

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反体制勢力の動き

シリア革命最高軍事評議会のムスタファー・シャイフ准将は『ハヤート』(2月21日付)に対して、シリア・ムスリム同胞団には「一部で言われているのとは異なり、シリア国内に蓄えがなく、国内の反体制運動において重要な役割を果たしていない」と述べ、同胞団が指導するシリア国民評議会の重要性を否定した。

シャイフ准将はまた、「シリア国民評議会は国内の運動と協調することはできない。なぜならほとんどの指導者は長年にわたって在外生活を送り、現地で暮らす人々と真に連絡を取り合っていないからだ」と批判した。

シャイフ准将によると、国内で反体制運動を行っている活動家のほとんどは政治組織に参加していない無所属の活動家だという。

一方、自由シリア軍との関係に関して、意見の相違が「単に視点にかかわるもので、目的は一つ、すなわち祖国の安寧、統制のとれた軍指導部の結成である」と述べた。

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反体制ジャーナリストが、シリア・ジャーナリスト連盟の発足を宣言した。

発足声明によると、同連盟には約100人のジャーナリストが参加している。

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シリア法律研究調査センターのアンワル・ブンニー所長は、ダマスカス県で2月16日に逮捕された活動家の一人マーズィン・ダルウィーシュ氏が釈放されたと発表した。

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『アクス・サイル』(2月21日付)によると、国内で反体制活動を行う民主的変革諸勢力国民調整委員会は声明を出し、外国の軍事介入は「レッドライン」と述べ、拒否する姿勢を改めて示した。

同声明によると、この姿勢は、1月24日のカイロでの同委員会使節団とアラブ連盟ナビール・アラビー事務総長との会談で示された、という。

アサド政権の動き

SANA, February 20, 2012

SANA, February 20, 2012

SANA(2月20日付)によると、アサド大統領はシリアを訪問中のロシア議会下院のアレクセイ・プシュコブ外交関係委員会委員長と会談した。

会談でアサド大統領は、「武装テロ集団」が外国勢力からの資金・武器援助のもとにシリア国家・社会を標的としており、「シリアの安定を揺るがし、問題解決への努力を頓挫させようとしている」と述べたという。

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SANA(2月20日付)は、シリアとイランが自由貿易合意実施プログラムに署名したと報じた。

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SANAは2月20日付で憲法草案の英語訳をウェブ上に公開した。http://www.sana.sy/eng/337/2012/02/20/401178.htm

国内の暴力・反体制デモ

シリア人権監視団によると、ダマスカス県( マッザ区など)、ダマスカス郊外県(ザバダーニー市など)では治安部隊による厳戒態勢が強化された。

シリア人権監視団によると、ハジャル・アスワド市では少なくとも4人が殺害された。

ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整委員会報道官を名のるムハンマド・シャーミー氏によると、タフリール広場の空軍情報部南部区指導部前で夜間、反体制デモが発生した。

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シリア人権監視団によると、ヒムス県ヒムス市各地では、掃討作戦を続ける軍・治安部隊がさらに増強され、同市の完全制圧の準備が進められた。

複数の活動家によると、弾圧により少なくとも20人がヒムス市などで殺害されたという。

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ハマー県では、SANA(2月20日付)によると、サラミーヤ地方で武装テロ集団が国境警備隊を襲撃し、大佐、大尉が殺害された。

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アレッポ県では、SANA(2月20日付)によると、アレッポ市でビジネスマンのマフムード・ラマダーン氏が武装テロ集団によって暗殺された。

レバノンの動き

ヒズブッラーのナウワーフ・ムーサウィー議員(抵抗への忠誠ブロック)は、西側諸国が設置を目指しているとされる「人道回廊」に関して、「イスラエルの包囲で苦しむガザのパレスチナ人を支援するための人道回廊はどこにあるのか?」と述べ、西側諸国のダブルスタンダードを非難した。

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進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首は党機関誌『アンバー』(2月20日付)のなかで、シリアとレバノンのドゥルーズ派を分断しようとする試みに抵抗するよう呼びかけた。

ジュンブラート党首は「シリアのドゥルーズは占領者に抵抗する長い歴史を持っており、抑圧から国を解放するため、今日も同じように抵抗するだろう…。彼らはレバノン山地やシリア政府の凶悪犯たちが彼らを罠にかけることを許さないだろう…。彼らはあなたがたをイスラエルの国境警備に向けたいと考えている。我々の歴史は周辺アラブ・イスラーム諸国との共存によって特徴づけられており、未来はシリアで自由を求める人々のものである…。あなたがたは彼らに属している」と述べ、アサド政権を支援するレバノン国内の勢力とアサド政権を暗に批判した。

諸外国の動き

マーチン・デンプシー米陸軍参謀長は、CNN(2月20日付)に対して、シリアへの軍事的介入が「きわめて困難」だと述べるとともに、反体制勢力の武装に関して「時期尚早」と述べた。

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チュニジアのラフィーク・アブドゥッサラーム外務大臣は、シリア情勢に関して、「我々はイラク・シナリオがシリアに生じることを望んでいない…。我々はシリアの領土の統一性を維持しなければならない」と述べた。

またシリアの友連絡グループの会合に関して、シリア国民評議会をはじめとする反体制勢力が代表として出席すると述べた。

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シリア海軍の「教練」のためイランが派遣した海軍艦艇2隻がスエズ運河を通過し、タルトゥース港に寄港した。

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国際赤十字委員会は、軍・治安部隊と離反兵との戦闘がもっとも激しい地域への人道支援を行うため、2時間の停戦を行うよう、アサド政権と反体制武装集団と交渉を行おうとしていることを明らかにした。

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国連総会のナースィル・アブドゥルアズィーズ議長は、カイロでアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長と会談した。

会談後の共同記者会見で、アブドゥルアズィーズ議長は安保理に問題があるため、国際社会がシリア情勢をめぐって無力だと述べ、安保理に必要な措置を講じるよう求めた。

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中国の『人民日報』(2月20日付)は、西側諸国によるシリアの反体制勢力支援に関して「内戦」を喚起する動きと非難した。

AFP, February 20, 2012、Akhbar al-Sharq, February 20, 2012、‘Aks al-Sayr, February 21, 2012、CNN, February 20, 2012、al-Hayat, February 21, 2012, February 22, 2012、Kull-na Shuraka’, February 21, 2012、Naharnet.com, February 20, 2012、Reuters, February 20, 2012、SANA, February 20, 2012などをもとに作成。

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