2014年4月30日のシリア情勢:反体制勢力の動き

シリア南部で武装活動を行っているという「穏健」(非ジハード主義)な武装集団「南部戦線」報道官を名乗るイブラーヒーム・ジャッバーウィー准将は、ヨルダンの首都アンマンでAFP(4月30日付)の取材に応じた。

ジャッバーウィー准将は、ヒムス警察の元警部補で、シリア・メディア委員会代表も務めるという。

ジャッバーウィー准将は、「南部戦線」に関して、「約2ヶ月前に55以上の革命武装集団によって結成され、その兵力は3万人」だという。

主な参加組織は、ヤルムーク旅団、ハウラーン殉教者旅団などで、クナイトラ県、ダルアー県などで「多数の特殊作戦」を行い、第61旅団の陣地などで「軍事的勝利」を収めているという。

ジャッバーウィー准将はまた、「南部戦線」にはアル=カーイダとつながりがあるシャームの民のヌスラ戦線やイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)は参加していない、と述べるとともに、「ダルアー県では、他の県と同様にヌスラ戦線の役割は限定的だ」と主張した。

クナイトラ県、ダルアー県での戦闘は、自由シリア軍参謀委員会が24日に開始を宣言した「耐え忍ぶ者たちに吉報をもたらせ」作戦を意味するものと思われる。

だが、ラタキア県カサブ町一帯での戦闘と同様、両県での攻勢を主導しているのはヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団であり、「穏健」な武装集団ではない。

ジャッバーウィー准将によると、「南部戦線」は、アサド政権打倒と多元的民主的文民国家樹立を目的としており、そのために「シリアの友(欧米諸国、トルコ、湾岸アラブ諸国)の支援を期待しており、対空兵器など高度な兵器が供与されることを望んでいる」と述べた。

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シャームの民のヌスラ戦線は声明を出し、29日のヒムス市ザフラー地区で発生した自動車2台による爆弾テロ(http://syriaarabspring.info/wp/?p=7742)に関して、「ヌサイリー派(アラウィー派)のアッバースィーヤ地区入り口に至る主要道路で爆弾を仕掛けた2台の車」を爆破させ、「最初の爆発で、多数のシャッビーハを殺害し…、2回目の爆発で最初の爆発を逃れた者を致命的打撃」を与えたと発表し、犯行を認めた。

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ARA News(4月30日付)は、ハサカ県マルカダ町で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、商店再開、シャームの民のヌスラ戦線との戦闘で被害者への補償など「改革」措置を講じる一方、ヒジャーブを着用しない女性の外出禁止、バス乗車禁止、喫煙禁止などを決定したと報じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長は『シャルク・アウサト』(4月30日付)に対し、「政治的解決と危機終結の唯一の糸口は…、シリア大統領であるバッシャール・アサドの体制を軍事的且つ早急に打倒することだ」と述べた。

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ムジャーヒディーン軍司令官のムハンマド・アブドゥルカーディル中佐がクッルナー・シュラカー(4月30日付)の取材に応じ、シャームの民の合同作戦司令室の戦況について語った。

アブドゥルカーディル中佐によると、ムジャーヒディーン軍が指導するアレッポ市ラームーサ地区での戦いで、反体制勢力は同地区の50%、軍市場、ライラムーン地区各所、シュワイフナ山などを制圧したという。

AFP, April 30, 2014、AP, April 30, 2014、ARA News, April 30, 2014、Champress, April 30, 2014、al-Hayat, May 1, 2014、Iraqinews.com, April 30, 2014、Kull-na Shuraka’, April 30, 2014、Naharnet, April 30, 2014、NNA, April 30, 2014、Reuters, April 30, 2014、SANA, April 30, 2014、al-Sharq al-Awsat, April 30, 2014、UPI, April 30, 2014などをもとに作成。

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