本文へスキップ
現代東アラブ地域研究ネットワーク

レバノン

■ヒズブッラー:組織体系

末近 浩太

ヒズブッラーの組織体系について
ヒズブッラーの社会サービス
組織図
執行会議各部門所轄の下部組織・傘下団体
文献リスト

ヒズブッラーの組織体系について

 ズブッラーは、イスラエル軍に抵抗するために結成された地下組織であったことから、組織体系や意思決定過程はおろか、幹部たちの名前すら長らく公表されることはなかった。しかし、1989年10月にテヘランで開催された第1回党大会において、最高意思決定機関である諮問会議(Majlis al-Shura)の設置が決定され、組織の近代化が進められた。

ヒズブッラーの組織体系は、この諮問会議を頂点とした「ピラミッド型の階層構造」(ナイーム・カースィム[Na’im Qasim]副書記長)を特徴とする。すなわち、諮問会議の下に、政治会議(al-Majlis al-Siyasi)、議会活動会議(Majlis al-’Amal al-Niyabi)、執行会議(al-Majlis al-Tanfidhi)、司法会議(al-Majlis al-Shar’i)、ジハード会議(al-Majlis al-Jihadi)の五つの専門機関が配置され、さらにそれらが複数の下位部門を抱えることで、社会サービスから軍事にいたるまでの様々な活動を統括的に運営している。

軍事担当とされるジハード会議は他の会議とは別格とされ、1990年代末以降、その機能が諮問会議に統合された。すなわち、軍事部門「レバノン・イスラーム抵抗」(al-Muqawama al-Islamiya fi Lubnan)は、最高指導者である書記長を頂点とする諮問会議による直轄となったと見られている(したがって、ジハード会議の議長は書記長が兼任することになった)。

また、組織図には明示されてはいないが、ヒズブッラーは「ピラミッド型の階層構造」による「垂直的」な命令体系とともに、ベイルート地域、ベカーア地域、南部地域(北部)、南部地域(南部)の四つの地域区分に基づいた「水平的」な分化もなされている。

ヒズブッラーの社会サービス

ヒズブッラーの社会サービス(social service)は開発、福祉、医療、教育など多岐にわたる。これらのほとんどは執行会議(al-Majlis al-Tanfidhi)の管轄下にあるとみられている。執行会議は、(1)社会部門(2)イスラーム保健衛生協会(3)教育動員部門(4)情報部門、(5)財務部門、(6)渉外部門、(7)連絡調整部門、(8)組合部門の八つの部門から構成されるが、社会サービスを管轄するのはこのうち(1)(2)(3)(4)である。ここでは、表に示したような執行会議の各部門(1)(2)(3)(4)が管轄する団体・組織を「ヒズブッラー系列」と定義したい。

しかし、いくつかの団体・組織については、設立当初からヒズブッラーの組織体系に組み込まれていたものではないことに留意が必要である。例えば、(1)社会部門の「ジハード建設協会」(Mu’assasa Jihad al-Bina’)はイランの同名組織の事実上のレバノン支部として、また、(3)教育動員部門の「ムスタファー学院」(Madrasa al-Mustafa)は、「イスラーム宗教教育協会」(Jamm‘iya al-Ta‘lim al-Dini al-Islami、1974年設立)の学校として、元来開設されたものである。これらがやがてヒズブッラーの傘下に入ることになったが、今日でも運営の方針や資金の獲得をめぐって一定の自律性を有していると推測される。

他方、執行会議の管轄外ではあるが、ヒズブッラーの思想や活動に自発的に傾倒・参加している団体・組織も一定数存在する。これらについては、執行会議管轄のトップダウン型の「ヒズブッラー系列」に対して、ボトムアップ型の「ヒズブッラー系」と呼ぶことにする。「執行会議各部門所轄の下部組織・傘下団体」の「その他」に分類したサンライト社(Sharika SunLight)やドゥハー社(Sharika al-Duha)がこれに該当する。

組織図


(注)
(a)諮問会議は、原則的に書記長、副書記長、執行会議議長、政治会議議長、議会活動会議議長、司法会議議長、ジハード会議議長の7名からなる。2011年1月現在、ハサン・ナスルッラー(Hasan Nasr Allah)書記長がジハード会議議長を兼任、書記長の政策補佐官(フサイン・ハリール[Husayn Khalil])が諮問会議メンバーとなっている(合計7名)。
(b)Intelligence and Terrorism Information Center [2003]は諮問会議がイラン人顧問2名を含む計9名からなると断じているが、ヒズブッラーは否定している。
(c) 中央委員会は約200人の党員から構成される。
(d)Intelligence and Terrorism Information Center [2003]はイマード・ファーイズ・ムグニーヤ(’Imad Fayiz Mughniya)がジハード会議議長を務めてきたと指摘しているが、近年彼の党内外での活動は確認されていない。ムグニーヤは2008年2月13日にダマスカス市内で暗殺された。
(e)執行会議部局所轄の下部組織・傘下団体の詳細は表1を参照。
(出所) Abisaab [2006: 231-254]、Abu al-Nasr [2003: 135-155]、al-Diyar, September 6, 2006、Hamzeh [2004: 44-79]、Intelligence and Terrorism Information Center [2003]、al-Markaz al-Thaqafi al-Lubnani [2006: Vol. 12]、NNA, December 21, 2006、Qasim [2002: 81-119]、Qassem [2004: 59-79]、Gambil [2008]、al-Safir, September 28, 2006、http://www.bintjbeil.com/articles/2004/ar/0414_qaseer.html(2006年12月アクセス)などの各種資料および聞き取り調査をもとに末近作成。

執行会議各部門所轄の下部組織・傘下団体


(1) 社会部門
(2) イスラーム保健衛生協会
(3) 教育動員部門
(4) 情報部門
その他

(1) 社会部門

種別(a) 組織・団体名 場所 設立年 概要
開発 ジハード建設協会(ジハード・ビナー協会)(Mu’assasa Jihad al-Bina’) ベイルート南部郊外 1988年 ヒズブッラー最大の開発組織。イランの同名組織のレバノン支部。レバノン政府により公式認可(内務省管轄)。活動は、@病院、学校、診療所などの建設・運営、A生活用水の供給、B戦災孤児や負傷者のための住宅開発、C農村開発・農業支援、D電力供給、E孤児や貧困層のための教育施設の建設・運営、F有事の際の避難所の提供。ベカーア地域および南部地域においては、低金利融資や独自の社会保障制度も運営。資金は、@会員会費、A政府の援助、B募金・寄付金、CNGOおよび国際機関との協力関係から調達。ベイルート南部郊外(ハーラ・フライク地区)の本部の他、ベイルート市内、バアルベックのラアス・アイン(ベカーア県西ベカーア郡)、トゥール(ナバティーヤ県ナバティーヤ郡)に支部を持つ。ベカーア県には農業支援センターや畜産専門施設を設置し、また、地場産業支援も行う。2006年夏のレバノン紛争後は、戦災復興を専門とする部門「ワアド」(Wa‘d、本部ベイルート南部郊外)を開設(2007年5月)、建築家ハサン・ジシー(Hasan Jishi)が部長に就任。2007年2月、米国国務省より「国際テロ組織」に指定。
福祉 イスラーム福祉支援協会(イムダード協会)(Jam‘iya al-Imdad al-Khayriya al-Islamiya) ベイルート南部郊外 1987年 ヒズブッラー最大の福祉組織。イランの「イマーム・ホメイニー支援委員会」(Lajna Imdad al-Imam al-Khumayni、1978年設立)のレバノン支部。1994年の大統領令5829号により、正式認可。活動は、@経済援助、A寄付、B保険衛生管理、C教育とレクリエーション(中学校4校、総合学院1校、職業専門学校1校、キャンプ施設1カ所)、D社会保証、E孤児の支援、F安全保障・危機管理、G収入増進プログラム(マイクロクレジット、自立支援プログラム)、H寄付金集めの九つの領域にわたる。レバノン国内に支部を9カ所、学校を5カ所、障がい児支援施設2カ所を持つ。出版部「イムダード書店」(Dar al-Imdad)を有し、主に子供向けの出版事業を行っている。資金は、サダカ(専用箱をレバノン全土に設置)、里親制度、寄付から調達。
殉教者協会(al-Mu‘assasa al-Shahid) ベイルート南部郊外 1982年 1982年のレバノン戦争の際、ホメイニーの意向により設立。イランの同名組織のレバノン支部。1989年2月にレバノン政府により正式認可(内務省管轄)。目的は、@殉教についての正しいイスラーム理解の浸透、A殉教者の遺族に対する総合的なケア、B社会的相互扶助の精神の拡大。活動は、社会・衛生的ケアと文化・教育的ケアの2部門から構成される。1998年より「殉教者学院」(Madrasa al-Shahid、小学校)をレバノン各地で開校しているほか、次の四つの病院を運営する。
@「偉大なる預言者病院」(Mustashfa al-Rasul al-A‘zum、ベイルート南部郊外)」
1988年、イランの同名団体の出資により開院。主に殉教者の遺族や負傷者を対象としてきたが、「抵抗および被抑圧者たちの社会」に広く開かれる。レバノン保健省の五つ星機関に認定。
A「偉大なる預言者専門病院」(Mustashfa al-Rasul al-A‘zum al-Takhassi、ベイルート南部郊外)
2009年8月、開院。医療看護技術専門学校「偉大なる預言者学院」(Ma‘had al-Rasul al-A‘zum、1989年開校)を併設。偉大なる預言者モスクとの複合施設を形成する。
B「ダール・ヒクマ病院」(Mustashfa Dar al-Hikma、バアルベック)
1986年開院の「イマーム・ホメイニー病院」(Mustashfa al-Imam al-Khumayni)から改称。
C「殉教者シャイフ・ラーギブ・ハルブ病院」(Mustashfa al-Shahid al-Shaykh Raghib Harb、トゥール[ナバティーヤ県])
2003年に開院。
負傷者協会(Mua’ssasa al-Jarha) ベイルート南部郊外 1989年 1992年の大統領令2900号により、正式認可。内戦およびイスラエルとの戦闘により負傷した抵抗の兵士および一般人のリハビリテーションや社会復帰、経済援助を行う。活動は、@レバノン内外の負傷者の治療・看護、A後遺障害者へのケア、Bリハビリテーション支援、C社会復帰支援。リハビリテーション、娯楽、訓練指導を目的とした総合施設として、ナバティーヤ(南部県)に「ファルドゥース複合施設」(Mujamma‘ al-Fardus)、シヤーハ(南部県)に「ジュワイヤー・ケアセンター」(Markaz Juwaiya al-Ri‘a’i)を設置。その他、リハビリテーションセンターとして、「負傷者たちの家学院」(Ma‘had Bayt al-Jarih)をベイルート南部郊外、バアルベック、南部地域の3カ所に、診療所をベイルート南部郊外に2カ所設置。
 経済支援・基金 無利子無期限融資協会(Jam‘iya al-Qard al-Hasan) ベイルート南部郊外 1982年 1982年のレバノン戦争の際、ホメイニーの意向により設立。1987年にレバノン政府より正式認可(内務省管轄)。イスラーム的「相互扶助」(takaful)の理念に基づき、被抑圧者のための無利子無期限融資(マイクロクレジット)、物資の援助、相互扶助の精神の拡大を目的とする。融資件数は、年間約60,000件(2008年)。融資の種類は、@一般個人向け(1組15名以上)、A村落向け(同村出身の1組15名以上、上限1500ドル)、B社会的相互扶助(家族、隣人、共同経営者などによるグループ、上限1500ドル)。資金は、フムス(シーア派の「五分の一税」)および個人および企業等からの献金から調達。事務所は、ベイルート南部郊外に8カ所、ベカーア県に3カ所、南部県に6カ所に開設されている。
(注)(a)「種別」は筆者による分類に基づく。
(出所)Abisaab [2006: 231-254]、Abu al-Nasr [2003: 135-155]、Avon and Khatchadourian [2010: 87]、Deeb [2006]、Fawaz [2005: 234-252]、Flanigan and Abdel-Samad [2009]、Hamzeh [2004: 49-66]、Harb and Fawz [2010]、Harik [1994] [2004: 81-94]、Jawad [2009]、 Khashan [2007: 13-14]、al-Markaz al-Thaqafi al-Lubnani [2006: Vol. 12]、Mervin [2008]、Qasim [2008: 123-121]、Qassem [2005: 79-86]、Rosiny [2000]、Shaey-Eisenlohr [2008: 60-76]など各種資料、The Daily Star, al-Intiqad, al-Mustaqbal, al-Nahar, al-Safirなど各種報道資料、各種広報資料・ウェブページ、および複数回の聞き取り調査(1999年7月〜2011年2月)をもとに末近作成。

(2) イスラーム保健衛生協会

種別(a) 組織・団体名 場所 設立年 概要
イスラーム保健衛生協会(Hay’a al-Sihhiya al-Islamiya) ベイルート南部郊外 1984年 レバノン戦争中に生まれた草の根の救急医療活動を母体に、様々なグループの「アンブレラ組織」として結成。レバノン政府により正式認可。目的は、@健康・医療サービスの提供、A環境や健康に関わる問題への取り組み、B健康増進プログラムの推進、C環境と健康に関わる啓蒙、Dイスラームの信仰に従った医療・健康体制の構築。活動は、@学校児童の健康管理、A予防接種、B健康教育、C講義・講演、D健康に関わるキャンペーンと研究・調査など。ベイルート南部郊外、ナバティーヤ(南部県)、バアルベック(ベカーア県)に事務所を持つ。
病院 殉教者サラーフ・ガンドゥール病院(Mustashfa al-Shahid Salah Ghandur) ビント・ジュバイル(南部県ビント・ジュバイル郡) 総合病院。2000年の「南部解放」後にイスラエルおよび「南レバノン軍」から接収。2001年末までにイラン政府とレバノン保健省の支援によって設備や人員等の医療体制が整備された。1日の患者数250人程度(2009年)。
バトゥール病院(Mustashfa al-Batul) ヘルメル(ベカーア県ヘルメル郡) 総合病院。月間患者数1150人(2009年)。
診療所 ―― 南部県、ベカーア県、北部県、レバノン山地県 1983年〜 「イマーム・サーディク診療所」(Mustausaf al-Imam al-Sadiq、ザフレ[ベカーア県])、「イマーム・ホメイニー診療所」(Mustausaf al-Imam al-Khumayni、スール[南部県])など、南部県に6 カ所、ベカーア県に6カ所、北部県1カ所、レバノン山地県に2カ所の合計14カ所。
移動診療所 ―― 南部県、ベカーア県 1986年〜 2000年の「南部解放」後に9カ所に拡充。南部県の59の街と村を巡回。救急対応および慢性的疾病患者の診察・治療を行う。他の医療施設の拡充にともない、現在は2カ所に縮減。
医療センター ―― ベイルート南部郊外、南部県、ベカーア県 1987年〜 「ダール・ハウラー」(Dar al-Hawra、ベイルート南部郊外、1987年開院、婦人科・小児科)、「南部医療センター」(Markaz al-Janubi al-Tibbi、ナバティーヤ[南部県])など、ベイルート南部郊外に4カ所、南部県に5カ所、ベカーア県に4カ所の合計13カ所。
歯科医院 ―― ベイルート南部郊外、南部県、ベカーア県 1987年〜 「グバイリー(al-Ghubayri)医院」(ベイルート南部郊外、1987年開院)、「ハーラ・フライク(Hala al-Hurayk)医院」(ベイルート南部郊外、1987年開院)など、ベイルート県に6カ所、南部県に9カ所、ベカーア県に6カ所の合計21カ所。
市民防衛センター(自警団) ―― ベイルート市内、ベイルート南部郊外、南部県、ベカーア県 1984年〜 1982年のレバノン戦争の際、自発的に活動開始。イスラエルとの戦闘による負傷者の救護・運搬や救急医療を行う。1984年4月にベイルート南部郊外に本部が開設。活動は、@医療(救急医療、負傷者の運搬、遺体の運搬、災害時の救援、輸血、火災への対応)、A環境(害虫駆除、予防接種、健康増進教育の推進、エルサレムの日などの行事の準備・運営、ボーイスカウトなどのための行事の準備・運営、援助機関との関係調整)、B啓発活動(地雷に関する知識の普及)。また、これらの活動のための指導者と専門家の育成も行う。ベイルート市内に1カ所、ベイルート南部郊外1カ所、南部県に7カ所、ベカーア県に3カ所の合計12カ所。
(注)(a)「種別」は筆者による分類に基づく。
(出所)Abisaab [2006: 231-254]、Abu al-Nasr [2003: 135-155]、Avon and Khatchadourian [2010: 87]、Deeb [2006]、Fawaz [2005: 234-252]、Flanigan and Abdel-Samad [2009]、Hamzeh [2004: 49-66]、Harb and Fawz [2010]、Harik [1994] [2004: 81-94]、Jawad [2009]、 Khashan [2007: 13-14]、al-Markaz al-Thaqafi al-Lubnani [2006: Vol. 12]、Mervin [2008]、Qasim [2008: 123-121]、Qassem [2005: 79-86]、Rosiny [2000]、Shaey-Eisenlohr [2008: 60-76]など各種資料、The Daily Star, al-Intiqad, al-Mustaqbal, al-Nahar, al-Safirなど各種報道資料、各種広報資料・ウェブページ、および複数回の聞き取り調査(1999年7月〜2011年2月)をもとに末近作成。

(3) 教育動員部門

種別(a) 組織・団体名 場所 設立年 概要
教育基金 イスラーム養成教育協会(Mu’assasa al-Islamiya li-l-Tarbiya wa al-Ta‘lim) ベイルート南部郊外 1991年 各学校およびハウザの設置・運営のための資金調達。目的は、@イスラーム教育と専門教育の橋渡しの推進、A信仰と市民意識の両者を備えた人間の育成、B学校・教育機関の設置・運営。総生徒数5,340名(1998年)。
小・中等学校 イマーム・マフディー・イスラーム学院連合(Jamm‘iya Madrasa al-Imam al-Mahdi li-l-‘Ulum al-Islamiya) ベイルート南部郊外、南部県、ベカーア県 1993年〜 イスラーム養成教育協会が運営する学校。1993年にベイルート南部郊外に本校が開校。ベイルート南部郊外に2カ所、南部県に7カ所、ベカーア県に4カ所の合計12校。イスラーム学を中心に諸学問を教える。1日3時間、週4日もしくは5日制もしくは1日2時間、週2日制。イランのコムに支部を有する(1993年開校)。ボーイスカウト(Jamm‘iya Kashshafat al-Imam al-Mahdi)の組織も持つ。2004年に「啓示教育アカデミー」(Majma‘ Shahid al-Tarbawi)が統合され、殉教者の孤児を中心に約1,850名の男女が学ぶ。ベイルート南部郊外に高等学校を建設中。
ムスタファー学院(Madrasa al-Mustafa) ベイルート南部郊外、南部県、ベカーア県 1984年〜 1974年に設立された「イスラーム宗教教育協会」(Jamm‘iya al-Ta‘limal-Dini al-Islami)の学校。同協会の目的は、レバノンにおけるシーア派宗教教育の推進であり、ナイーム・カースィム(Nai’m Qasim)現副書記長が設立者の1人。イラン政府からの資金援助を受ける。イランへの留学の斡旋、ボーイスカウト組織も有する。高めに学費設定によりエリートの育成に力を入れる。1995年より機関紙『預言者の諸世代』(Ajyal al-Mustafa)を発行。ベイルート南部郊外の本校など、合計6校。総生徒数8,091人(2002年)。
関連教育機関 イマーム・アッバース・ムーサウィー学院(Madrasa al-Imam Abbas al-Musawi) バアルベック[ベカーア県バアルベック郡] 不明 中学校。
殉教者シャイフ・ラーギブ・ハルブ学院(Ma‘had al-Shahid al-Shaykh Raghib Harb ) 不明 不明 不明。
ハウザ 至高なる預言者高等学院(Ma‘had al-Rasul al-Akram al- ‘Ali) ベイルート南部郊外 1984年 シーア派イスラーム法学の専門学院。16歳〜35歳までの60名以上の生徒・学生が在籍。カリキュラムは4レベルから構成、@初級T(al-muqaddimat al-ula)、A初級U(al-muqaddimat al-thaniya)、B上級(sutuh、4年間)、C応用研究(al-bahth al-khariji、10〜15年間)。Aにおいてマルジャアを選択。Cに進学するにはイランのコムやイラクのナジャフなどへの留学が事実上必要。学費は原則自己負担だが、イスラーム養成教育協会の各奨学金やムハンマド・フサイン・ファドルッラー(Muhammad Husayn Fadl Allah)の諸機関(マバッラート福祉協会[Jam‘iya al-Mabbarat al-Khayriya])からの援助も有り。運営は6〜7名の高位の法学者が行うが、イランのアリー・フサイニー・ハーメネイー(‘Ali Husaini Khamenei)の代理人(ワキール[代理人]=ヒズブッラー書記長)の指導も入る。
サイイダ・ザハラー・シャリーア・イスラーム研究高等学院(Ma‘had al-Sayyida al-Zahara’ al-‘Ali li-l-Shari‘a wa al-Dirasat al-Islamiya) ベイルート南部郊外 1985年 至高なる預言者学院の女子部。男子部の隣に設置。目的は、@イスラーム的知の習得を通したムスリマの自立支援、A女性の知識層に対するイランの革命的イスラームの浸透。既婚女性のための夜間授業を実施、また、約20名の学生につき3名の託児担当者を配置。
イマーム・マフディー・ムンタザル学院(Ma‘had al-Imam al-Mahdi al-Muntazar) バアルベック(ベカーア県バアルベック郡) 1979年 アッバース・ムーサウィー(’Abbas Musawi、第2代書記長)により開校。
サイイダ・ザハラー・シャリーア・イスラーム研究高等学院(Ma‘had al-Sayyida al-Zahara’ al-‘Ali li-l-Shari‘a wa al-Dirasat al-Islamiya) バアルベック(ベカーア県バアルベック郡) 不明 イマーム・マフディー・ムンタザル学院の女子部。
ハウザ(名称不明) アイン・カーナー(ナバティーヤ県ナバティーヤ郡)? 不明 男子部。
ハウザ(名称不明) アイン・カーナー[ナバティーヤ県ナバティーヤ郡]? 不明 女子部。
研究機関 研究資料相談センター(al-Markaz al-Istishari li-l-Dirasat wa al-Tawthiq) ベイルート南部郊外 1988年 @思想・政治研究(al-Dirasat al-Fikriya wa al-Siyasiya)部門、A開発研究(al-Dirasat al-Inma’iya)部門、B資料(al-Tawthiq)部門、C総合関係広報(al-‘Alaqat al-‘Ammawa al-I‘lam)部門、D行政財政問題(al-Shu’un al-Idariyawa al-Maliya)部門からなる。50,000件以上の論文のデータベース、300種以上の報告書を所蔵。社会、経済、開発などに関する有識者会議を組織・運営。出版局を有しており、広報資料や年鑑(al-Kitab al-Sanawi)などの公式刊行物を発行。ただし、年鑑は1995年度版からは中央広報部門(al-Wahda al-I‘lamiya al-Markaziya)が発行。
PR機関 レバノン芸術協会(al-Jam‘iya al-Lubaniya li-l-Funun) ベイルート南部郊外 2004年 ウェブサイトや横断幕、看板、ポスターなどの制作。
関連団体 イマーム・ホメイニー文化センター(Markaz al-Imam al-Khumayni al-Thaqafi) ベイルート南部郊外他 1991年 本部はベイルート南部郊外(2002年開設)。レバノン国内の各地に支部を展開。@イスラーム的知と知識の浸透、Aホメイニー師の思想・行動的遺産の実現のための教育、Bイスラーム的遺産の再評価、C様々な文化団体・協会の連携強化、D抵抗の支援、抵抗文化の浸透を目的とする。@図書資料部門、A出版翻訳部門、B広報部門、C情報・アーカイブ部門、D展示部門、E文化活動部門からなる。
(注)(a)「種別」は筆者による分類に基づく。
(出所)Abisaab [2006: 231-254]、Abu al-Nasr [2003: 135-155]、Avon and Khatchadourian [2010: 87]、Deeb [2006]、Fawaz [2005: 234-252]、Flanigan and Abdel-Samad [2009]、Hamzeh [2004: 49-66]、Harb and Fawz [2010]、Harik [1994] [2004: 81-94]、Jawad [2009]、 Khashan [2007: 13-14]、al-Markaz al-Thaqafi al-Lubnani [2006: Vol. 12]、Mervin [2008]、Qasim [2008: 123-121]、Qassem [2005: 79-86]、Rosiny [2000]、Shaey-Eisenlohr [2008: 60-76]など各種資料、The Daily Star, al-Intiqad, al-Mustaqbal, al-Nahar, al-Safirなど各種報道資料、各種広報資料・ウェブページ、および複数回の聞き取り調査(1999年7月〜2011年2月)をもとに末近作成。

(4) 情報部門

種別(a) 組織・団体名 場所 設立年 概要
テレビ局 マナール・チャンネル(Qanat al-Manar) ベイルート南部郊外 1991年 ヒズブッラーの主軸となる広報機関。近年では重要な声明等は同局から発表される。1996年7月に正式認可。2000年6月からは24時間の衛星放送を開始、中東全域および南・東南アジアでも視聴可能。2004年よりアメリカ、フランス、スペイン各国にて放送禁止。英語番組、ヘブライ語番組もあり。「抵抗の放送局」、「アラブ人とムスリムの放送局」という自己規定。インターネットのストリーミング放送も有り。出版局「ダール・マナール」(Dar al-Manar、ベイルート南部郊外)を持ち、書籍の他に番組のDVDやCDの製作・販売も行う。
ラジオ局 ヌール放送(Idha‘a al-Nur) ベイルート南部郊外 1988年 1999年9月に正式認可。目的は、宗教倫理と道徳に普及、レバノン人アイデンティティの強化、レバノンの多宗派共存と主権の強化、エンタテイメントによる生活の充実化、社会問題に対する警鐘など。1999年からインターネットのストリーミング放送も有り。
イーマーン放送(Idha‘a al-Iman) ベイルート南部郊外 1987年 1992年に放送休止?。
イスラーム(の声)放送(Idha‘a [Sawt] al-Islam) 南部県 不明 不明。
被抑圧者の声(Sawt al-Mustad‘afin) ベカーア県 1986年 未認可。バアルベック。
新聞・雑誌 『アフド』(al-‘Ahd) ベイルート南部郊外 1984年 ヒズブッラーが直接出版していた週刊の機関誌。「レバノンにおけるイスラーム革命の声」がスローガン。1992年に『インティカード』(al-Intiqad)に統合。
『インティカード/アフド』(al-Intiqad al-‘Ahd) ベイルート南部郊外 1992年 週間の新聞。1984年出版開始の『インティカード』(al-Intiqad)を1992年にリニューアル、『アフド』(al-‘Ahd)と統合、同紙を綴じ込みで刊行。出版社は「ドゥハー社」(Sharika al-Duha)。2009年からは電子化され、インターネット上のオンライン公開のみ。
関連出版物 『ビラード』(al-Bilad) ベイルート市内 1990年 週刊誌。出版は「イスラーム統一出版社」(Dar al-Wahda al-Islamiya)。レバノン・ムスリム・ウラマー連合系。
『ムンタラク』(al-Muntalaq) ベイルート市内 不明 隔月刊。出版は「ムスリム学生のためのレバノン統一」(al-Ittihad al-Lubnani li-l-Talaba al-Muslimin)。ムハンマド・フサイン・ファドルッラーおよびイスラーム・ダアワ党系。現在は廃刊?
『バキーヤトゥッラー』(Baqiya Allah) ベイルート南部郊外 1998年 アラビア語と英語による週刊誌。イラン文化センター発行。イラン政府系。
『サビール』(al-Sabil) ベイルート市内 不明 未認可?。
(注)(a)「種別」は筆者による分類に基づく。
(出所)Abisaab [2006: 231-254]、Abu al-Nasr [2003: 135-155]、Avon and Khatchadourian [2010: 87]、Deeb [2006]、Fawaz [2005: 234-252]、Flanigan and Abdel-Samad [2009]、Hamzeh [2004: 49-66]、Harb and Fawz [2010]、Harik [1994] [2004: 81-94]、Jawad [2009]、 Khashan [2007: 13-14]、al-Markaz al-Thaqafi al-Lubnani [2006: Vol. 12]、Mervin [2008]、Qasim [2008: 123-121]、Qassem [2005: 79-86]、Rosiny [2000]、Shaey-Eisenlohr [2008: 60-76]など各種資料、The Daily Star, al-Intiqad, al-Mustaqbal, al-Nahar, al-Safirなど各種報道資料、各種広報資料・ウェブページ、および複数回の聞き取り調査(1999年7月〜2011年2月)をもとに末近作成。

その他(a)

種別(b) 組織・団体名 場所 設立年 概要
イスラーム抵抗支援協会(Hay’a Da‘m al-Muqawama al-Islamiya) ベイルート南部郊外 1990年 イスラーム抵抗およびヒズブッラー自体の運営資金の確保を目的とし、三つの委員会から構成される。@総合対外関係委員会(Lajna al-‘Alaqat al-‘Amma)、A情報委員会(Lajna al-I‘lamiya)、B経済委員会(Lajna al-Iqtisadiya)。寄付者は下記の使途を選択できる。@月決めの寄付金の徴収、A自宅や子供のための募金箱の配布、B店頭や企業での岩のドームのレプリカ(募金箱)の設置、Cムジャーヒディーン・プロジェクトの支援、Dムジャーヒディーン・プロジェクトの装備費用、Eロケット兵器の購入費用、F弾薬の購入費用、Gその他の付帯費用など。ベイルート、南部地域、ベカーア地域、北部地域に事務所。ダマスカス郊外のサイイダ・ザイナブなど国外にも事務所有り。米国務省により2006年8月に「国際テロ組織」に指定。
レバノン・コミュニケーション・グループ(Majmu‘a al-Lubaniya li-l-I‘lami) ベイルート南部郊外 1997年 1997年にヒズブッラーが55%の資本を掌握。マナール・チャンネルとヌール放送を運営。本部。社長はマナールの局長が兼任。
サンライト社(Sharika SunLight) ベイルート南部郊外 不明 「特殊部隊」(al-Quwwa al-Khassa)などのPCソフトの制作。
ドゥハー社(Sharika al-Duha) ベイルート南部郊外 不明 『インティカード』などの出版。
その他、各種企業 ―― ―― IT会社、出版社など
(注)(a)「その他」は所轄が不明な組織・団体。
(b)「種別」は筆者による分類に基づく。
(出所)Abisaab [2006: 231-254]、Abu al-Nasr [2003: 135-155]、Avon and Khatchadourian [2010: 87]、Deeb [2006]、Fawaz [2005: 234-252]、Flanigan and Abdel-Samad [2009]、Hamzeh [2004: 49-66]、Harb and Fawz [2010]、Harik [1994] [2004: 81-94]、Jawad [2009]、 Khashan [2007: 13-14]、al-Markaz al-Thaqafi al-Lubnani [2006: Vol. 12]、Mervin [2008]、Qasim [2008: 123-121]、Qassem [2005: 79-86]、Rosiny [2000]、Shaey-Eisenlohr [2008: 60-76]など各種資料、The Daily Star, al-Intiqad, al-Mustaqbal, al-Nahar, al-Safirなど各種報道資料、各種広報資料・ウェブページ、および複数回の聞き取り調査(1999年7月〜2011年2月)をもとに末近作成。

文献リスト

Abisaab, Rula Jurdi [2006] “The Cleric as Organic Intellectual: Revolutionary Shi‘ism in the Lebanese Hawzas,” H.E. Chehabi ed., Distant Relations: Iran and Lebanon in the Last 500 Years. London: Centre for Lebanese Studies and I. B. Tauris, pp. 231-258.
Abu al-Nasr, Fadil [2003] Hizb Allah: Haqaiq wa Ab‘ad. Beirut: al-Sharika al-A‘lamiya li-l-Kitab.
Avon, Dominique and Anais-Trissa Khatchadourian [2010] Le Hezbollah: De la doctrine e l’action: une histoire du <<parit de Dieu>>. Paris: Edition du Seuil.
Deeb, Lara [2006] An Enchanted Modern: Gender and Public Piety in Shi‘i Lebanon. Princeton and Oxford: Princeton University Press.
Fawaz, Mona [2005] “Agency and Ideology in Community Services: Islamic NGOs in a Southern Suburb of Beirut,” Nefissa, Sarah Ben and Nabil Abd al-Fattah, Sari Hanafi, and Carlos Milani eds., NGOs and Governance in the Arab World. Cairo and New York: The American University of Cairo Press, pp. 229-255.
Flanigan, Shawn Teresa and Mounah Abdel-Samad [2009] “Hezbollah’s Social Jihad: Nonprofit as Resistance Organizaions,” Middle East Policy, Vol. 16, No. 2 (Summer), pp. 122-137.
Gambill, Gary C. [2008] “Hezbollah: Lebanon’s Powerbroker,” The Journal of International Security Affairs, No. 15 (Fall) (http://www.securityaffairs.org/issues/2008/15/rabil.php, 2009年4月30日閲覧).
Hamzeh, A. Nizar [2004] In the Path of Hizbullah. New York: Syracuse University Press.
Harik, Judith Palmer [1994] “The Public and Social Services of the Lebanese Militias,” Papers on Lebanon 14. Oxford: Centre for Lebanese Studies (September).
Intelligence and Terrorism Information Center, Center for Special Studies (CSS) (http://www.intelligence.org.il/) [2003] Hezbollah: Profile of the Lebanese Shiite Terrorist Organization of Global Reach Sponsored by Iran and Supported by Syria (Special Information Paper), June.
Jawad, Rana [2009] Social Welfare and Religion in the Middle East: A Lebanese Perspective. Bristol: The Policy Press.
Khashan, Hilal [2007] “Hizbullah’s Jihad Concept,” Journal of Religion and Society, Vol. 9 (http://moses.creighton.edu/JRS/pdf/2007-19.pdf, 2007年4月15日閲覧).
al-Markaz al-Thaqafi al-Lubnani [2006] Mawsu‘a al-Muqawama al-Lubnaniya: Hizb Allah bi-Qiyada Samaha al-Sayyid Hasan Nasr Allah, Vol. 12, al-Mu’assasat. Beirut: al-Markaz al-Thaqafi al-Lubnani.
Mervin, Sabrina ed. [2008] Le Hezbollah. Etats des lieux. Paris: Actes Sud.
Qasim, Nai’m [2008] Hizb Allah: al-Minhaj, al-Tajriba, al-Mustaqbal. 4th edition. Beirut: Dar al-Hadi.
Qassem, Naim [2005] Hizbullah: Tha Story from Within. London: Saqi.
Rosiny, Stephan [2000] Shi‘a Publishing in Lebanon: With Special Reference to Islamic and Islamist Publications. Berlin: Verl. Das Arab. Buch.
Shaey-Eisenlohr, Roschanack [2008] Shi‘ites Lebanon: Transnational Religion and the Making of National Identities. New York: Columbia University Press.

2011年3月8日にhttp://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/lebanon/hizbullah_tanzim.htm、
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/lebanon/hizbullah_tanzim/1.htm、
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/lebanon/hizbullah_tanzim/2.htm、
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/lebanon/hizbullah_tanzim/3.htm、
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/lebanon/hizbullah_tanzim/4.htm、
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/lebanon/hizbullah_tanzim/5.htmにて公開。