イラクのムハンマド・シヤーウ・スーダーニー首相がシリアを公式訪問した。
イラクの首相がシリアを訪れるのは、2011年にシリアに「アラブの春」が波及して以降初めて。
ダマスカス国際空港に専用機で降り立ったスーダーニー首相は、首都ダマスカスの人民宮殿でアサド大統領らの出迎えを受けた。
首相には、フハード・フサイン副首相兼外務大臣、アスィール・サルマーン通商大臣、カイス・ラヒーマ合同作戦司令部副司令官(大将)が同行した。
アサド大統領はスーダーニー首相らと会談し、貿易、運輸、工業といった分野での二国間関係や連携の強化、「テロとの戦い」に向けた共同の取り組みなどについて意見を交わした。
会談で、アサド大統領は、イラクとシリアがさまざまな状況下で互いに示してきた姿勢は両国を結び付ける歴史的な姉妹関係を真に現してきたとしたうえで、この関係を国家、国民の両レベルで発展させ続けたいと述べた。
また、スーダーニー首相らの今回の訪問が、制度重視の関係構築や両国協力関係飛躍の好機だとの味方を示した。
会談には、シリア側からはフサイン・アルヌース首相、ファイサル・ミクダード外務在外居住者大臣、ムハンマド・サーミル・ハリール経済対外貿易大臣、ブサイナ・シャアバーン大統領府特別顧問、アブドゥルカリーム・イブラーヒーム参謀総長、アイマン・スーサーン外務在外居住者省次官、ルーナー・シブル大統領府特別顧問(政治報道局長)、サッターム・ダンダフ在イラク・シリア大使が同席した。
会談後、アサド大統領とスーダーニー首相は共同記者会見を開いた。
アサド大統領は会見で以下の通り述べた。
スーダーニー首相と公式使節団、メディア使節団を歓迎する…。今回の重要な訪問は、両国民の深い関係のありよう、世界史において最古の、そしてもっとも深い歴史を有する両国の歴史の深さゆえに重要なのだ。
この地域…シャームのくにぐにと二大河のくにぐには古代史、そして現代史における偉業を作り出してきたもっとも重要な場だった。両国共通の歴史がシリア、イラク両国の国民に多くの共通性を与え、それは共通の主義主張、関心、情熱に反映されてきた。我々はこれらをさまざまな段階において確かに感じ取り、シリア国民が20年前に戦争に苛まれたイラク国民に寄り添った時に感じ取り、イラク国民が15年余り前にシリアへの攻撃が始まった当初からシリア国民に寄り添った時に感じ取った。この戦争において、イラクは、政府と国民共に、バーチャルではなく、真にシリアの声となっていた。アラブ世界、中東地域、国際社会といったさまざまな場でシリアの声となり、シリアに対して行われるあらゆる攻撃、そしてそれを正当化するすべての口実を拒否してくれた。イラク国民は数ヵ月前に発生した(トルコ・シリア)大地震に際して、真のきょうだいとして、組織、個人の双方が被災したシリアのきょうだいを組織的、かつ自発的に救援してくれた。
この戦争において、イラクは人が捧げることができるもっとも高価なもの、血を捧げてくれた。この血はシリアとイラクの共通の血であり、イラクの西を、シリアの東を守ってくれた。両アラブ国民、軍を守ってくれた。二つの国は一つに団結し、血は団結し、我々にとって共通の未来が一つになった。この場を借りて、シリア・アラブ軍およびシリアの予備部隊のきょうだいと協力して勝利を収めたイラク・アラブ軍、人民動員隊に敬意を表したい。
これらすべてゆえに、今回の訪問は意義深く、ここに、一連の目標、すなわち二国間関係の強化に至る実質的なステップをとることへの両国首脳としての我々の責任がある。とくに、我々は今日、世界レベルでの大きな課題を前に会談した。第1に、世界船体が、安全保障面、政治面、そしてもちろん経済面で苦難に直面し、それが我々の国にも影響を及ぼしている。とりわけ、我々はテロという課題、そして「テロとの戦い」における協力という課題に直面している。我々が依然として活発に生きながらえていると見ているこのテロは、世界、とりわけ西側からの支援ゆえに死に絶えていない。ここでいう「西側」と意味を我々はみな承知している。なぜなら、テロは、独立、自決、国益を追求する国々に打撃を与えるための西側のツールだからだ。さらに、一部近隣諸国が、拡張主義的理由であれ、イデオロギー的理由であれ、このテロへの支援に直接関与していることも我々は承知している。こうした大いなる課題に加えて、シリアとイラクに割り当てられているユーフラテス川の水の略奪も行われており、それは、深刻な不作、疫病や伝染病の蔓延ゆえに渇きと飢えをもたらしている。こうした課題のほかにも、アラブ人に対する侵略、パレスチナ、エルサレム、そして聖地への侵略、そのほか我々がアラブ諸国として直面している課題がある。また、麻薬の問題もあり、それは今日、各国が直面するもっとも危険な「害虫」であり、テロと何ら変わらない。それは、テロとまったく同じ方法で社会を破壊し得る。
私と(スーダーニー)首相は多くの問題を議論した。もちろん、最近のアラブ情勢についても話し合った。我々は、それを完全とは言えないまでも、相対的に前向きなものと評価することができる。この状況が拡大協議の中心をなし、これをどう利するについて重点的に議論を行った。悪化する国際情勢へのアラブ諸国への悪影響を抑えるために好転する新たな状況をどのように利用し、アラブ諸国の協力をどう強化するかだ。
我々はみな、最近の事態の好転が国際社会を混乱に陥れている者たちを満足させていないことを承知している。彼らは歴史の歯車を元に戻そうと早速動き出した。それゆえに、我々の国は二国間、多国間、さらにはアラブ連盟を通じて協力を増進させ、すでに実現した成果を維持し、今後発展させていくことを求められている。我々はもちろん幾つもの論点を議論したが、議論はまだ終わっておらず、記者会見の後も議論を継続する。だが、我々は記者会見の予定を遅らせたくなった。二国間の経済関係も、会見後、継続する議論の軸をなしている。両国の利益を反映し、シリアに対する不当な包囲の悪影響を軽減しつつ、両国関係強化を実現するための実質的な措置についての議論だ。議論された論点、提起されたアイデアは、両国の関係機関がフォローアップし、実効可能な措置へと熟成、発展、変容することになる。多くの論点、提案、アイデアがある。それらは有望だと考えることができる。だが、今日はその詳細を議論することはなく、実施の準備ができるまで待たねばならない。
改めて首相に熱烈な歓迎の意を表したい。今回の訪問が質的飛躍だけにとどまらず、両国の友愛関係において、現実的、実効的、現実的なものと確信している。独立後何十年にもわたって、両国では許されなかった、あるいは状況が許さなかった関係が軌道に乗り始めた。我々がこの世界で目の当たりにしている暗い状況のなかで、両国関係を真剣かつ効果的に構築する好機だ…。シリアの我々にとって、イラクのアイデンティティは正真正銘のアラブのアイデンティティだ。
SANA(7月16日付)が伝えた。
AFP, July 16, 2023、ANHA, July 16, 2023、al-Durar al-Shamiya, July 16, 2023、‘Inab Baladi, July 16, 2023、Reuters, July 16, 2023、SANA, July 16, 2023、SOHR, July 16, 2023などをもとに作成。
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