レバノンのマヤーディーン・チャンネル:イスラエル占領下のゴラン高原マジュダル・シャムス村に着弾したのは、ヒズブッラーのロケット弾ではなく、イスラエルのアイアン・ドーム防空システムのミサイルである可能性が高い(2024年7月28日)

レバノンのマヤーディーン・チャンネル(7月28日付)は、27日にイスラエル占領下のシリア領ゴラン高原のマジュダル・シャムス村のサッカー場にヒズブッラーが発射したロケット弾が着弾し、12人が死亡したとイスラエル側が主張している事件について、イスラエルのアイアン・ドーム防空システムのミサイルが誤作動、ないしは迎撃失敗に失敗して着弾した可能性が高いと伝えた。

イスラエル軍は、サッカー場に着弾したのが、イラン製のファラク1ロケット弾だと主張しているが、その真偽を判断する前に、以下の点を明らかにする必要があるとしている。

1. 着弾したとされるファラク1ロケットは、口径240mm、全長1320mm、推定射程10km、最大飛行高度3.5km、50kgの高性能爆薬弾頭装備、個体燃料ロケットによる推進であること。
2. 高性能爆発弾頭が地表に衝突した瞬間にクレーターが形成されるはずであること。
3. ファラク1ロケットは発射後2秒で個体燃料を使い果たすこと。
4. アイアン・ドーム防空システムは2024年7月25日にヒズブッラーの無人航空機の迎撃に失敗し、ガリラヤ地方で火災を発生させており、同様の事案はこれまでにも多数発生していること。
5. マジュダル・シャムス村の住民の大多数は、1967年の占領時に同地に留まったドゥルーズ派のシリア人で、ヒズブッラーが指導するレバノン・イスラーム抵抗は同地を攻撃したことがないこと。
6. アラブ・アル・アラムシェ村などへの攻撃において、レバノン・イスラーム抵抗は誘導式のミサイルしか使用していないこと。
7. レバノン・イスラーム抵抗は2006年のイスラエルとの交戦時などにおいて、誤射については真摯にその非を認め、謝罪していること。

以上を踏まえたうえで、被害現場の状況を検証すると、発生したクレーターは2メートルほどで、これは10kg程度の爆発物によるものと推定される。

 

これは、キリヤット・シュモナ入植地に着弾したファラク1ロケットによって生じたクレーターと比べても小さく、浅い。

ヒズブッラーがファラク1ロケット弾よりも小型のロケット弾を使用した可能性は否定できないが、ファラク1ロケット弾が使用されたとしているのはイスラエル側であるため、この可能性については排除し得る。

また、サッカー場で発生した爆発について、高性能爆薬弾頭は、映像に残されているような大きな火の玉を生み出すことなく、代わりに、強力な爆風と激しい破片を発生させる。

アイアン・ドーム防空システムのミサイルの飛行距離は約70kmであり、マジュダル・シャムス村近くから発射されていたのであれば、その燃料が爆発し、大きな火の玉を生み出した可能性が考えられる。

AFP, July 28, 2024、ANHA, July 28, 2024、‘Inab Baladi, July 28, 2024、Reuters, July 28, 2024、SANA, July 28, 2024、SOHR, July 28, 2024などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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