軍と国防隊がイドリブ県アリーハー市内のシャーム自由人大隊とシャームの民のヌスラ戦線を掃討するなか、国連事務総長は紛争の政治的解決に向けたジュネーブ2会議を早急に開催するよう呼びかけ(2013年9月3日)

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反体制勢力の動き

反体制サイトのクッルナー・シュラカー(9月3日付)は、米国が準備しているとされるシリアへの軍事攻撃の是非をめぐって、ダマスカス県およびダマスカス郊外県住民や活動家の意見が分かれていると報じた。

同報道によると、シリア民主フォーラムや民主的変革調整国民委員会のメンバーであるバドル・マンスール氏は、米国の軍攻撃が、現在の紛争を宗派・民族紛争に変化させると警鐘を鳴らすとともに、「これが米国がめざしていること」と批判した。

またアフマドを名のるダマスカスの住民は、米軍の軍事攻撃が民間人の被害を免れないと不安を露わにした。

さらにドゥーマー市の大モスクのイマーム、アブー・ジャウド・バドリー師は、米軍の軍事攻撃がアサド政権だけでなく、反体制サラフィー主義集団をも標的とするべきだと主張したという。

一方、ラブナーを名のるハラスター市の女性活動家は、米国の軍事攻撃を支持し、「体制の背骨を折る」との見方を示したという。

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自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長は、Elaph(9月3日付)にジョン・ケリー米国務長官と2日に電話会談を行ったことを明らかにした。

イドリース参謀長によると、電話会談で、米国のシリアへの軍事行動に関する両者の見解の一致を確認したという。

またイドリース参謀長は、反体制勢力がアサド政権打倒をめざすため、バラク・オバマ米大統領の決定を支持しなければならないと強調したことを明らかにした。

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『ハヤート』(9月4日付)は、複数の反体制筋の話として、シリア革命反体制勢力国民連立のメンバーらが軍の士官・兵士に離反を唱導と「暫定軍事評議会」の結成を唱導し、アサド大統領の退陣と、移行期政府樹立をめざしていると報じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立の前議長で連立を脱会したアフマド・ムアーッズ・ハティーブ氏は訪問先のブリュッセルでシリア情勢に関して「いかなる軍事攻撃が行われようと政治的イニシアチブがなければならない…。政権が(軍事攻撃への対応に)初めて追われるなかでこそ、政治的解決は可能だ」と述べた。

AFP(9月3日付)が伝えた。

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シリア・クルド人ビジネスマン執行委員会を名のる団体が声明を出し、8月29日から31日のカイロでの集中協議を経て、クルド人地域に2億米ドルを援助することを決定したと発表、またアサド政権打倒のための革命を支持するとの意思を示した。

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シリア革命反体制勢力国民連立のハーリド・サーリフ報道官はイスタンブールで記者会見を開き、化学兵器を搭載したシリア軍の車輌3台がダルアー県、ダマスカス郊外県ドゥマイル航空基地に移動・配備されたとの情報を得たと主張した。

シリア政府の動き

ジハード・ラッハーム人民議会議長は、フランスの上下両院に対して書簡を送り、「シリアに対する無謀な犯罪行為」を拒否し、化学兵器疑惑を根拠とするシリアへの軍事攻撃を承認しないよう呼びかけた。

SANA(9月3日付)が報じた。

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SANA(9月3日付)によると、クナイトラ県ゴラン高原のマジュダル・シャムス村内のイスラエル占領地にあるスルターン・アトラシュ広場で、住民がデモを行い、米国が準備する軍事攻撃に反対の意思を示した。

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍と国防隊がアリーハー市および同市周辺に対する10日にわたる砲撃の末、シャーム自由人大隊とシャームの民のヌスラ戦線を掃討し、同市を制圧した。

またアリーハー市制圧を受け、軍はアリーハー市に近いアルバイーン山への攻撃を激化させるとともに、サルジャ村、マンタフ市、カフルラータ市、バザブール市などを空爆・砲撃した。

これに関して、クッルナー・シュラカー(9月3日付)も、アリーハー市およびその周辺一帯をほぼ制圧した軍が、アルバイーン山奪還をめざしていると報じた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ジャラーブルス市で、イラク・シャーム・イスラーム集団が、離反士官のユースフ・ジャーディル大佐(アブー・フラート)の一族からなる民兵と激しく交戦し、同民兵を放逐した。

また軍はアレッポ市カーディー・アスカル地区を砲撃・空爆、これに対して反体制武装集団は空軍情報部施設を手製の迫撃砲で攻撃した。

一方、SANA(9月3日付)によると、マーイル町、マンスーラ村、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院周辺、ズィルバ村、クワイリス村、ナイラブ村、ナッカーリーン・バーブ街道、ダイル・ハーフィル市、ナスルッラー村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市マイダーン地区、ブスターン・バーシャー地区、シャイフ・マクスード地区、ジュダイダ地区などに潜入を試みた反体制武装集団を軍が撃退した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ラアス・アイン市とタッル・ハルフ村を結ぶ街道で、民主統一党人民防衛隊が、イラク・シャーム・イスラーム国、シャームの民のヌスラ戦線と交戦した。

また民主統一党人民防衛隊は、カシュトゥー村および同村周辺にあるイラク・シャーム・イスラーム国の拠点を制圧した。

一方、クッルナー・シュラカー(9月4日付)は、複数の活動家の話として、軍が対イラク国境のヤアルビーヤ町を激しく砲撃を行い、イラク領内のラビーア町にも迫撃砲弾が着弾したと報じた。

しかし別の活動家によると、砲撃は民主統一党人民防衛隊によるもので、これにより子供2人を含む3人が死亡したという。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、サフィール市のジャブサ・ガス・パイプラインで火災が発生した。

一方、SANA(9月3日付)によると、サフィーラ地方のガス・パイプラインを反体制武装集団が破壊し、ガスの輸送が一時中断された。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ヤルムーク区、バルザ区で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(9月3日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハーマ町一帯、クドスィーヤー市郊外、ルハイバ市を軍が砲撃する一方、ハラスター市、ムウダミーヤト・シャーム市で軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(9月3日付)によると、ザマルカー町、ハルマラ市、ハラスター市、ドゥーマー市郊外、フサイニーヤ町、ズィヤービーヤ町、フジャイラ村、ルハイバ市、ザバダーニー市郊外、ヤブルード市郊外、ダイル・アティーヤ市郊外、ランクース市周辺で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(9月3日付)によると、ドゥッラ村、ラビーア町、バイト・アーラブ村、カンダースィーヤ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、サウジ人、インドネシア人、ソマリア人ら外国人戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(9月3日付)によると、タドムル市南部の農場を軍が制圧した。

またスフナ市でトルコからの穀物を密輸していた貨物車を取り押さえ、運転手を逮捕、積荷を押収した。

このほかアーミリーヤ市、ラスタン市、ダール・カビーラ村、ザーラ村、ガントゥー市、ヒムス市バーブ・フード地区、ワルシャ地区、クスール地区、カラービース地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(9月3日付)によると、ダルアー市各所、ヌアイマ村、ナワー市、インヒル市で、軍が反体制武装集団と交戦し、ヨルダン人、サウジアラビア人ら外国人戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ギリシャ・カトリック教会アンチオキア(アンタキア)総大司教のグレゴリウス3世ラッハームは、2011年3月以降、シリアの紛争を逃れるため約450万人のキリスト教徒が家を離れ、国内外で避難生活を送っていると発表した。

AFP(9月3日付)が報じた。

レバノンの動き

イランのアラーッディーン・ボルージェルディー国会外交安全保障委員会委員長を団長とするイランの使節団がシリアに次いでレバノンを訪問し、ナビーフ・ビッリー国民議会議長、タマーム・サラーム首相、ミシェル・スライマーン大統領、ナジーブ・ミーカーティー暫定首相、アドナーン・マンスール暫定外務大臣、そしてヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長と会談し、シリア情勢などについて協議した。

NNA(9月3日付)によると、これら首脳らとの会談で、ボルージェルディー委員長は、米国が準備しているシリアへの軍事攻撃が「地域の安定と安全を脅かす」とみなし、「バラク・オバマ米大統領に賢く振る舞い、軍事行動に突き進むべきでない…。米議会が自制を働かせ、地位の安定を脅かそうとする行為を抑止すべきだ」と述べたという。

諸外国の動き

国連の潘基文事務総長は記者会見で、「武力行使は国連憲章第51条に基づく自衛権の行使か、安保理が認めた場合にのみ合法だ」、「いかなる懲罰的な措置も、流血拡大の阻止と紛争の政治的解決を目指す努力への影響を考慮しなければならない」と訴え、紛争の政治的解決に向けたジュネーブ2会議を早急に開催するよう呼びかけた。

一方、化学兵器使用に関する国連調査団の活動に関して、調査によって化学兵器の使用が確認された場合、「重大な国際法違反で、非道な戦争犯罪となる」と述べ、安保理が一致して適切な措置を講じるべきだと主張した。

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『シュピーゲル』(9月3日付)は、ドイツ連邦情報局(BND)がヒズブッラー幹部とベイルートのイラン大使館外交官の電話を盗聴し、ヒズブッラー幹部がアサド政権による化学兵器攻撃を認めるかような発言を傍受したと報じた。

同報道によると、この幹部は「アサド大統領が正気を失い、化学兵器攻撃を命じるという大きな間違いを犯した」と話したという。

この情報は、2日のゲルハルド・シンドラーBND局長がドイツ議会の議員への非公式のブリーフィングで明らかにしたものだという。

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『ハヤート』(9月4日付)は、ヨルダン内務省が、シリアからの避難民に関する報告書を入手したと報じた。

同報告書によると、これまでにヨルダンに入国したシリア人避難民の数は54万6,000人に達し、うち87,000人が自発的にシリアに帰国する一方、紛争勃発以前に比べて在ヨルダン・シリア人の数は29万6,000人増加したという。

また避難民のうち12万2,000人がザアタリー避難民キャンプに収容されている一方、54,000人が同キャンプから逃走したという。

さらにシリア軍を離反した兵士3,742人が当局の目を逃れてヨルダン国内に潜伏しているという。

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米国のジョン・ケリー国務長官とチャック・ヘーゲル国防長官は、シリアへの軍事攻撃に関する上院外交委員会の公聴会に証人として出席し、バラク・オバマ大統領が準備する攻撃を承認するよう求めた。

ヘーゲル国防長官は、軍事攻撃が「シリア軍の化学兵器攻撃能力を低下させること」を目的とした限定的な攻撃だと指摘した。

また北朝鮮が大量の化学兵器を保有しているとしたうえで、「(大量破壊兵器使用・拡散禁止の)規範が緩めば、他の政権(イラン、北朝鮮など)に化学兵器使用を促すことになりかねない」と述べた。

さらに「我々が行動を拒否すれば、我々が提供する安全保障への信頼が揺らぐ」と強調した。

ケリー国務長官は、化学兵器の使用を容認するかどうかは「世界のレッド・ライン、人間のレッド・ラインの問題だ」と主張。さらにイランや北朝鮮を名指しし、議会が軍事攻撃を支持しなければ「独裁者が核兵器を含む大量破壊兵器を追求する機会を生み出すことになる」と明言した。

また「(軍事攻撃は)単なる(アサド政権への警告の)メッセージではなく、打撃と効果を伴うものだ」と述べ、

限定的な軍事攻撃によって結果的にシリア軍が弱体化する事態も想定され、シリアの紛争におけるパワー・バランスを変え得るとの認識を示した。

公聴会にはマーティン・デンプシー米陸軍参謀長も出席し、「任務は化学兵器関連の活動と、その運搬手段の双方の能力を低下させることにより、アサド政権の化学兵器使用を考えさせないようにすること」と述べた。

こうした証言に対して、マルオ・ルビオ議員(共和党)は「限定的な攻撃で化学兵器攻撃能力を抹殺できるのか」と質問した。

またランド・ポール議員(共和党)も「介入によって中東地域が安定するとどうして言えるのか」と、攻撃の成果へに疑義を呈した。

さらにトム・ウダル議員(民主党)は、反体制勢力と直接・間接的に連携する「アル=カーイダを勢いづける結果にならないか」と発言、エドワード・マーキー議員(民主党)も「米国民は再び他国の内戦に引きずり込まれる事態を望んでいない」と反対の意思を示した。

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米上院外交委員会のロバート・メネンデス委員長(民主党)とロバート・コーカー筆頭理事(共和党)は、バラク・オバマ大統領が求めるシリアへの軍事攻撃を「軍事攻撃の期間を60日とし、1度だけ30日延長できる」に制限し、「戦闘目的での地上部隊派遣を禁止」するとした独自の決議案を共同で作成し、4日に同決議案を審議すると発表した。

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フランスのフランソワ・オランド大統領はドイツのヨアヒム・ガウク大統領との会談後の共同記者会見で、『ル・フィガロ』(9月2日付)のアサド大統領のインタビューに関して「独裁者は…プロパガンダを通じて化学兵器を保有していないと嘘をつき、フランス国民を脅迫できる…。こうした脅迫は彼の体制が続く限りはなくならないだろう」と批判、アサド政権への懲罰が必要だとの意志が高まったと述べた。

しかし、フランスによる単独での軍事行動については否定した。

AFP, September 3, 2013、Elaph, September 3, 2013、al-Hayat, September 4, 2013、Kull-na Shuraka’, September 3, 2013, September 4, 2013、Kurdonline,
September 3, 2013、Naharnet, September 3, 2013、NNA, September 3, 2013、Reuters,
September 3, 2013、SANA, September 3, 2013、Der Spiegel, September 3, 2013、UPI, September 3, 2013などをもとに作成。

写真はChampress, September 4, 2013。

 

(C)青山弘之 All rights reserved.

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