アサド大統領がイエメン使節団との会談のなかで米英仏による直接攻撃の脅迫が「シリアの確固たる立場と独立した決意を強める」と述べる、英政府はアサド政権による化学兵器使用を断定するも同国下院では武力行使を求める動議案が否決(2013年8月29日)

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反体制勢力の動き

シリア革命青年勢力国民連立を名のる組織がカイロで声明を出し、米仏が準備しているとされるシリアへの軍事攻撃に関して、自由シリア軍との調整のもとに行うよう求めた。

シリア政府の動き

アサド大統領は、ダマスカスを訪問中のイエメン議会・政党代表からなる使節団と会談し、シリア情勢などについて意見を交わした。

SANA, August 29, 2013

SANA(8月29日付)によると、アサド大統領は会談で、シリアへの直接攻撃を行うとの脅迫が、国民の意思から発するシリアの確固たる立場と独立した決意をさらに強めることになるだろう、と述べた。

またアサド大統領は、シリアが国民と軍とともにテロ根絶をめざしていると付言、イスラエルや西側諸国が、地域を分割し、諸国民を従属させることで国益を追求するために、テロを支援していると非難したという。

そのうえで、アラブ世界において国民の意識を高めることが、地域を狙った計略に対抗する基礎をなすと述べ、国民こそが国家関係を真に作り出し、そうした国民のありようこそが、シリアでの勝利を保障するものだと力説したという。

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『アフバール』(8月29日付)は、米英仏がシリアへの軍事攻撃の準備を本格化させたとの報道を受け、アサド大統領がある会合の出席者に「我々の真の敵が頭角を現して介入してくることを当初からあなたたちは分かっていた。私は、あなたたちの精神が高揚し、準備が整い、あなたたちが敵を殲滅し祖国を防衛することを知っている」と述べたと報じた。

同報道によると、アサド大統領はまた「この精神を…シリア国民にも与えよう。なぜならこれは、我々が勝利するであろう歴史的な対決だからだ…。シリアはこの対決が三つの要素からなっていると見ている。第1に攻撃の封じ込め、第2に急所への報復、そして第3に、米国とNATOは地上軍を入れることはないとの判断」と述べたという。

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ワーイル・ハルキー首相は緊急閣議を開催し、米英仏が準備しているとされている軍事攻撃への対応などを協議した。

SANA(8月29日付)によると、閣議では、関係各省に対して、救急消防機関、保安機関、医療機関などとの連携、電力、通信、燃料網の維持確保、軍への兵站支援の拡充などを徹底することが確認された。

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ムハンマド・ジハード・ラッハーム人民議会議長は、英国議会下院議長宛に書簡を送り、化学兵器使用に関する国連調査団による調査を検証するため、議員と専門家からなる使節団をダマスカスに派遣するよう求めた。

SANA(8月29日付)によると、書簡のなかで、ラッハーム議長は、シャームの民のヌスラ戦線が、シリア軍や民間人に対して化学兵器を使用したことを示す確固たる証拠を国連調査団が得たと主張する一方、シリアに対する敵対行為が違法で、安保理が軍事攻撃を承認していないと強調した。

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区で、軍と反体制武装集団が激しく交戦し、双方に人的被害が出た。

一方、SANA(8月29日付)によると、カーブーン区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ナブク市の軍検問所で、爆弾が仕掛けられた車が爆発した。

この爆発に先だって、同市周辺では軍と反体制武装集団が交戦していたという。

またアドラー市周辺、バイト・サフム市などでも、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(8月29日付)によると、バハーリーヤ市郊外、ドゥーマー市郊外、ヤブルード市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団、フダー青年大隊、イラク・シャーム・イスラーム国の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市、インヒル市、タイバ町、タファス市などを軍が空爆した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アリーハー市を軍が空爆し、子供2人を含む市民10人が死亡した。

またアルバイーン山、シュグール市、カフル・ウワイド市、マウザラ村、カンスフラ村、サルミーン市、サラーキブ市、マアッラトミスリーン市が軍の砲撃・空爆を受けたほか、イドリブ市内のハールーン・ラシード学校周辺で軍と反体制武装集団が交戦、軍砲撃を加えたという。

一方、SANA(8月29日付)によると、タッル・ワースィト村、タッル・サラムー村、ウンム・ジャリーン村、シュワイハ村、マジャース村、シャンナーン村、アイン・シーブ村、マガーラ村、ナフラ村、タッル・ズィーバーン町、ブザイト村、カフルルーマー村、タッフ村、ヒーシュ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ市の総合情報部施設前など2カ所で爆弾が仕掛けられた車が爆発し、女性と子供を含む市民6人が死亡した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、カフターニーヤ市郊外のマズルーマ村、ターヤー村、スーフィヤー村で、民主統一党人民防衛隊がイラク・シャーム・イスラーム国と交戦した。

またイラク・シャーム・イスラーム国の戦闘員と思われる男性が、ヒッティーン村の民主統一党人民防衛隊の検問所で自動車爆弾を用いて自爆攻撃を行った。

一方、シャームプレス(8月29日付)によると、ジュワーディーヤ市郊外のサファー村で、民主統一党の人民防衛隊がシャームの民のヌスラ戦線と交戦し、ヤアルビーヤ町一帯のヌスラ戦線を指揮するイブラーヒーム・ハンザル(通称アブー・イスマーイール)司令官を殺害した。

またハサカ市内で反体制武装集団が仕掛けた爆弾が爆発し、市民4人が負傷した。

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ヒムス県では、SANA(8月29日付)によると、軍がタドムル市南部農場一帯での反体制武装集団の掃討を完了、同地を制圧した。

またヒムス市ハミーディーヤ地区、ワルシャ地区、カラービース地区、タルビーサ市、アイン・フサイン市、ダール・カビーラ村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点を破壊、装備・爆薬を破壊・押収した。

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ダルアー県では、SANA(8月29日付)によると、ダルアー市、ナワー市、サフム・ジャウラーン村、タファス市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、サウジアラビア人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(8月29日付)によると、アブー・ハジャル村、ブライカ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(8月29日付)によると、バヤーヌーン町、アルビード村、クワイリス村、ナスルッラー村、バーブ・アレッポ街道、ラッカ・アレッポ街道、マーイル町、クファイン村、フライターン市、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院、マンスーラ村、アウラム・クブラー町、サフィール村、ハーン・アサル村で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市では、ブスターン・カスル地区、スライマーン・ハラビー地区、ジュダイダ地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(8月29日付)によると、サルバー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

化学兵器使用に関する国連調査団は28日に引き続き、東グータ地域に立ち入り調査を継続した。

Kull-na Shuraka’, August 29, 2013

シリア革命総合委員会によると、化学兵器使用に関する国連調査団は、28日と同様、ムライハ市方面から東グータ地域に入り、2日間でザマルカー町、アイン・タルマー村で調査を行った。

クッルナー・シュラカー(8月29日付)によると、東グータ地域での立ち入り調査を行った国連調査団には、ムハンマド・アブー・ナスルが率いるバッラー旅団、アブー・スブヒー・ターハーが率いるドゥーマー殉教者旅団が随行した。

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国連の潘基文事務総長は、訪問先のウィーンで、化学兵器使用に関する国連調査団が30日に2週間の予定だった調査を終え、31日午前にシリアから出国すると発表した。

調査団は出国次第、事務総長に調査報告を行うという。

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英国国防省は、最新鋭戦闘機ユーロファイター6機をキプロスにある英空軍基地に配備したと発表した。

同省によると、この配備は「英軍基地などを保護する予防的な措置」だという。

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『ル・ポワン』(8月29日付)は、フランス政府がトゥーロン軍港に停泊する防空フリゲート艦のシリア沖への派遣を決定したと報じた。

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英国首相府は、シリアへの武力行使について、議会下院の同意を求める政府の動議案を提示した。

同案は、シリアでの化学兵器使用に対する「強力な措置」の必要について議会の同意を得るだけのもので、実際の武力行使については、国連調査団の報告などを待って、改めて議会での採決を求める方針を明記している。

これを受け、下院はこの動議案を審議、「(化学兵器使用の)確固たる証拠があった場合に限り、軍事行動を支持する」との労働党からの修正動議案を提出した。

最終的に英国下院は、シリアへの軍事攻撃を求める政府の動議案を285対272で否決した。

否決後、デヴィッド・キャメロン首相は「議会は英国の軍事介入を望んでいない。私はそのことを認知した。政府はこれに従って振る舞うだろう…。下院の意思を尊重する」と述べた。

なお英国政府は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとする報告書(合同情報委員会書簡)を公開した。

「Syria: Reported Chemical Weapons Use」と題された報告書(https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/235094/Jp_115_JD_PM_Syria_Reported_Chemical_Weapon_Use_with_annex.pdf)の骨子は以下の通り。

1. 外交資料や公開されている資料」から、2012年以降にシリア政府が14回にわたって化学兵器を使用したことを確認した。
2. またこの14件以外にも、化学兵器による攻撃がなされていると考えている。
3. 8月21日の化学兵器による攻撃に関して、「公開資料」からそれが発生したことにはほとんど議論の余地がない。
4. シリアの反体制武装勢力によるねつ造だとのシリア政府などの主張に関して、「広範な諜報や公開資料」を用いて検証、「英国政府内外の専門家」の意見を聴取、その結果、反体制勢力が化学兵器を保有し、攻撃を行ったことを実証する信頼になる情報や証拠はなかった。
5. シリア政府に21日の攻撃の責任があるとの判断を支える多数の諜報を持っている。
6. 結論として、合同情報委員会は、21日の化学兵器による攻撃の責任がシリア政府にあるだろう(highly likely)との結論に達した。

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フランスのフランソワ・オランド大統領は、パリの大統領でシリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長と会談し、シリア情勢について協議した。

ジャルバー議長が軍事介入を求めたのに対し、オランド大統領は「政治的解決に向けて全力を尽くさねばならない」と慎重な姿勢を示した。

一方、ジャン・イヴ・ル・ドリアン国防大臣は記者団に対し、「大統領が決定したら、軍は応じる用意がある」と述べた。

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ロシアのヴラジミール・プーチン大統領はドイツのアンゲラ・メルケル首相と電話会談し、シリア情勢について協議した。

『ハヤート』(8月30日付)によると、この会談で、両首脳は国連調査団の報告を検討する必要を確認した。

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中国の王毅外交部長は、シリア情勢に関して「軍事行動は無益だ」としたうえで、「政治的解決こそがシリアの問題を解決するための唯一の道だ」と強調、「国連の専門家がこの点に関する調査結果を出す前に急ぐべきでない」と米英仏の姿勢を批判、「すべての当時者に自制を求める」と述べた。

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イタリアのエンリコ・レッタ首相は、米英仏が準備しているとされるシリアへの軍事攻撃に関して「国連が支持しなければ、イタリアは参加しない」と述べた。

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キューバの外務省は声明を出し、米英仏が準備しているとされるシリアへの軍事攻撃に関して「国連憲章と国際法への明らかな違反」と非難し、「国際社会の平和と安定を危険にさらす」と警鐘を鳴らした。

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エクアドルのラファエル・コレア大統領は、米英仏が準備しているとされるシリアへの軍事攻撃に関して、シリアへの軍事介入を拒否すると述べた。

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ボリビアのエボ・モラレス大統領は、米英仏が準備しているとされるシリアへの軍事攻撃に関して、「シリアへの外国のあらゆる軍事介入を拒否し非難する」と述べた。

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ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、米英仏が準備しているとされるシリアへの軍事攻撃に関して、政府と国民を代表して、帝国主義勢力によるシリア領への軍事的介入を拒否、非難すると述べた。

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南アフリカ共和国のデズモンド・ムピロ・ツツ元大主教は、米英仏が準備しているとされるシリアへの軍事攻撃とエジプト状勢に関して、「我々は殺し合いではあく、流血回避のために言葉を発する必要がある…。我々は人道的加入を求めるのであって、軍事介入を求めていない」と述べた。

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ヴァチカンのローマ教皇庁は、ローマ法王フランシスコがヨルダンのアブドゥッラー2世と会談し、シリア情勢などについて意見を交換、両者が、「シリアの紛争当事者が国際社会の支援のもとに会話と対話を行う方法こそが、紛争停止の唯一の選択肢」という点で一致したと発表した。

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『ハヤート』(8月30日付)によると、ヨルダン政府は、シリアへの内政干渉の姿勢を再確認するとともに「ヨルダンはシリアに対するあらゆる軍事的行動の拠点とはならない」と発表した。

しかし、同紙はヨルダンの複数の軍・治安当局高官の話として、対シリア国境地帯では、ヨルダン軍および米軍、西側諸国の車輌が増援されている、と付言した。

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国連安保理常任理事国5カ国は28日に引き続き、シリア情勢への対応に関する非公式協議を行った。

協議はロシア側の要請によって行われたが、外交筋によると、米英仏とロシア・中国が歩み寄ることはなかった。

ゲンナージー・ガティロフ外務次官はこれに関して「武力行使を可能とするようないかなる国連安保理決議にも反対する」との立場を改めて示した。

AFP, August 29, 2013、al-Akhbar, August 29, 2013、Champress, August 29, 2013、al-Hayat, August 30, 2013、Kull-na Shuraka’, August 29, 2013, August 30, 2013、Kurdonline,
August 29, 2013、Naharnet, August 29, 2013、Reuters, August 29, 2013、SANA,
August 29, 2013、UPI, August 29, 2013などをもとに作成。

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