欧州連合(EU)の外務理事会会合がベルギーのブリュッセルで開かれ、イスラエル・レバノン情勢、イスラエルによる国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)活動禁止措置、ガザ地区情勢、パレスチナ・イスラエル情勢、シリア情勢への対応について議論した。
シリア情勢については、会合後に発表された声明のなかで、アサド政権崩壊を、国連安保理決議第2254号に沿ったシリア人主導による国家再建を進めるための歴史的機会と位置づけ、シリアの独立、主権、領土の一体性が尊重されるべきと表明した。
また、女性の権利を含む人権の尊重、非宗派的なガバナンス、宗派・エスニック・マイノリティーの保護、文化遺産の保護などを保障する必要があると強調した。
そのうえで、すべての当事者に対して、国民統合の維持、すべての市民の保護、包括的で平和的な政治移行の条件の創出、難民の安全且つ自発的な尊厳のある帰還を確保するよう呼びかけるとともに、「テロとの戦い」の重要性を改めて強調した。
EEASによると、会合後の記者会見で、カヤ・カッラス外交安全保障上級代表は、シリアに対する制裁について以下の通り述べた。
本日、シリアに対する制裁緩和を開始するための政治合意に達した。これにより、シリア経済の回復が促進され、同国が再建へと向かう可能性がある。我々は迅速に行動することを目指しているが、状況が悪化した場合には、方針を撤回する用意もある。これと並行して、人道支援および復興努力を拡大していく。
また、銀行、資源、運輸といった分野に対する制裁の解除・緩和は行われるかとの記者からの質問には次の通り答えた。
もちろん、我々は、シリアに対して多くの制裁を課している。だから、これらの制裁を分類し、このロードマップを策定した。これは段階的なアプローチであり、まずは同国の初期的な再建をもっとも妨げている制裁から緩和を開始し、そこから進めていく方針である。ただし、武器や武器取引に関連する制裁は緩和しない。我々は依然として過激化の懸念を抱えており、その影響を注視している。
我々は現在、政治的決定を下し、ロードマップを策定した。そして、段階的なアプローチを進めている。つまり、適切な方向への進展が見られれば、次の制裁緩和にも応じる考えである。とはいえ、これはあくまで政治的合意であり、技術的な課題も残されている。しかし、政治的意思がある以上、これらの課題も数週間以内に解決されることを期待している。シリアについてだが、先ほど述べたように、我々は多くの制裁を課しており、それにはさまざまなレベルがある。ヨーロッパではすべてが公開されるため、このロードマップの各段階についても公表されることになると思う。関連する資料をすべて持参したのだが、まさにこの文書だけは持ってきていない。また、すべてを詳しく説明する時間はないだろう。
つまり、我々はシリアの再建を妨げている制裁から順に緩和を開始するということだ。エネルギー分野も他の分野も含まれているが、これは段階的なアプローチである。我々としては、事態が正しい方向へ進んでいることを確認しながら進めていく必要がある。
カッラス外交安全保障上級代表はまた、会合後にXで以下の通り発表した。
EUの外務大臣らは、シリアに対するEUの制裁を軽減するためのロードマップに合意した。
迅速に行動することを目指しているが、誤った対応が取られれば制裁解除は撤回される可能性がある
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RNDによると、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外務大臣は、シリアへの制裁解除にかかる決定について、復興と治安回復が求められるなかでシリア国民にとっても欧州諸国民にとっても良いニュースだとしつつ、それが「白紙小切手ではない」と付言、「EUは、過激派やテロ組織、あるいは新たなイスラーム主義勢力の資金提供者とはならない。アサド政権崩壊から50日が経過した今も、シリアの未来は依然として不透明である」と述べた。
リージョナル・ホイテによると、ベアボック外務大臣はまた、シリアでの国連難民高等弁務官事務所の活動を支援するため300万ユーロを供与すると発表した。
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シリア・クルド国民評議会のムハ…