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米国家情報長官室(ODNI)は2025年版『脅威評価報告書』で、アサド政権の崩壊によってシリアでは長期的な不安定状況が生まれ、シャルア暫定政権による統治はきわめて困難と指摘(2025年3月27日)

米国家情報長官室(ODNI)は2025年版『脅威評価報告書』において、シリア沿岸部でのアラウィー派などの住民に対する虐殺について、アフマド・シャルア暫定政権の国防省部隊(新シリア軍)に責任があるとしたうえで、暫定政権が少数派コミュニティに重大な人権侵害を行っていると指摘した。

報告書は、シリア情勢について以下の通り要約している。

アサド政権が、かつてアル=カーイダとつながりがあったシャーム解放機構率いる反体制派の手によって崩壊したことで、シリアでは長期的な不安定状況が生まれ、ダーイシュ(イスラーム国)や他のイスラーム過激派組織の再興を促す可能性がある。たとえシャーム解放機構主導の暫定政権が、異なる目的をもった勢力間の橋渡しに成功したとしても、シリアの経済問題、国内避難民数百万人の人道的危機、治安悪化、さらには民族・宗派・宗教的な分断のなかで、統治を行うことはきわめて困難である。

  • シャーム解放機構が主導する軍は、フッラース・ディーン機構や他のジハード主義勢力とともに、2025年3月初旬、シリア北西部で宗派マイノリティを標的とした暴力および法を逸脱した殺害を行い、アラウィー派やキリスト教徒の民間人を含む1,000人以上が死亡した。
  • シャーム解放機構の指導者は、シリアの多様な民族・宗派勢力と協力し、包括的な統治モデルを構築する意志があると主張している。しかし、多くの勢力は、指導者のアル=カーイダとの過去の関係により、シャーム解放機構の真意に疑念を抱いており、交渉が長引くなかで暴力へと発展する懸念もある。イスラエル政府関係者はシャーム解放機構の主張や意図に懐疑的であり、シャーム解放機構がイスラエルに敵対しようとする歴史的な目的を今なお保持していることに懸念を示している。
  • 一部の残存ジハード主義勢力はシャーム解放機構の国防省への統合を拒んでおり、ダーイシュはすでにシャーム解放機構の民主主義志向に反発し、政権を揺るがす攻撃計画を進めている。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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