ロイター通信は、十数名の関係者の証言をもとに、アサド前政権が2024年12月8日の崩壊直前に、現金や貴重品、自身の富を支える企業ネットワークの機密文書を密かに国外へ持ち出すため、プライベートジェットを使っていた、と伝えた。
この作戦を主導したのは、アサド前大統領の経済顧問だったヤサル・イブラーヒーム氏で、大統領の親族や側近、大統領官邸のスタッフを含め、アサド前政権の貴重な資産をUAEに輸送するために4回のフライトを手配した。
イブラーヒームは氏、大統領府の経済・財務部門を統括し、アサド前政権がシリア経済の広範囲を掌握するために構築した通信、銀行、不動産、エネルギー部門などの企業群を管理していたとされる。
フライト追跡記録によると、ガンビアに登録されたエンブラエル・レガシー600型ジェット機(機体番号:C5-SKY)は、政権崩壊前の48時間に4回の往復便を実施、最後のフライトは2024年12月8日、シリア駐留ロシア軍の司令部が設置されているフマイミーム航空基地を離陸、この日、アサド前大統領本人も、同基地からロシアへ逃亡したとされる。
機体には現金入りの黒い袋(少なくとも50万ドル)、ノートパソコン、ハードディスクなどが積まれ、これには「The Group」と呼ばれるアサド前大統領とイブラーヒームが構築した企業ネットワークの詳細情報財務記録、会社の所有関係、資金移動、海外口座の情報など)が納められていた。
12月6日、13席のプライベートジェットがダマスカス国際空港に接近、シリア空軍情報部の制服を着た十数名が、空港の貴賓室とその周辺道路を厳重に警備するなか、共和国防衛隊の黒塗りの車輌が到着、 空港保安部長で大統領官邸に直結する指揮系統に属し、機密作戦の遂行にあたっていたとされるガディール・アリー准将は、空港職員に「この機体は空軍情報部が処理する。お前たちはこの飛行機を見なかったことにしろ」と命じたという。
このプライベートジェットは、UAEの首都アブダビにあるバティーン空港に4回飛行、ダマスカス国際空港に到着するたびに車輌が滑走路へ急行し、すぐに退去する様子が目撃された。
最初の2便(12月6日発)は現金、大統領親族(未成年含む)や美術品、小型彫刻が積まれていた。
12月7日、機体は再びダマスカス国際空港に到着し、再度UAEに向けて出発、その際、現金の他に、ハードディスクや電子機器を輸送した。この際、UAE大使館の車輌が空港VIP区画に接近していたことから、UAEがこの作戦を把握していた可能性が指摘できる。
アサド大統領がフマイミーム航空基地に脱出したとされる12月8日、レバノンの実業家のムハンマド・ワフバ氏らが所有するプライベートジェットが再びアブダビを離陸し、飛行中に一時追跡不能、この間、フマイミーム航空基地に着陸したとされる。 そして、イブラーヒーム氏のビジネス・ネットワークの中核人物の1人であるアフマド・ハリール・ハリール氏がシリア国際イスラミック銀行の口座から引き出された50万ドルの現金を持って搭乗した。
(C)青山弘之 All rights reserved.
シリア・クルド国民評議会のムハ…