トルコを拠点とするシリア・テレビなどによると、2025年4月27日にヒムス県ヒムス市にある教員養成学院に登校した後、行方が分からなくなっていたタルカラフ市近郊のマフタビーヤ村出身のアラウィー派女性ミーラー・ジャラール・サーバートさん(20歳)が、青いニカーブを纏い、メディアの前に姿を表した。
治安機関の制服を着た男性らに伴われて両親が住む実家に戻ったサーバートさんには、国営放送のイフバーリーヤ・チャンネルのアーミル・アブドゥルバーキー記者も同行し、同チャンネルは彼女がアフマドという男性と自由意志でイドリブ県に逃げたと語るインタビューを放映した。
だが、視聴者らは、インタビューのなかでのサーバートさんの発言を強要されたものと受け止め、多くの活動家や市民は、彼女が誘拐され、イドリブ県に連れ去られ、強制的にアフマドという男性と「結婚」させられたとの見方を示している。
アフマドを名乗る男性は、過去のビデオでヒムス県ヒムス市での「勝利集会」に参加していた姿が確認されており、一部では治安機関の庇護を受けているのではとの疑念が広がっている。
SNS上では、アフマドなる男性が、サーバートさんの同級生であるという説のほか、花売りで、観光・ホテル学の専門学校に通っていたという別の証言も出ている。
なお、サーバートさんは、ウマル・イドリビーを名乗る活動家がフェイスブックで公開した別のインタビュー映像でも、自らの意思でイドリブ県に駆け落ちしたと証言しているが、これについてもSNS上では強要されたものだとの意見が相次いでいる。
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シリア人権監視団によると、事件の詳細な経緯は以下の通り。
事件当日の4月27日、サーバートさんの母親は、彼女が通っている専門学院(教員養成学院)の学生課の女性責任者から電話を受けた。
内容は、「サーバートさんが口頭および筆記の補習試験を受ける必要があり、自分がそのための便宜を図る」というものだった。
父親がサーバートさんを学院まで送ったが、娘は建物内に入ったまま数時間出てこず、行方不明となった。
父親が学院側に事情を尋ねたところ、女性課長は「試験は予定されていない」、「電話もしていない」と否定したが、電話の発信者は、サーバートさんの成績や出席状況などの詳細な個人情報を把握していたことから、内部関与(共犯)の疑いが強まった。
また、サーバートさんの父親も、5月7日に治安部隊によって一時拘束された。
最終的に、サーバートさんは5月8日、青いニカーブを纏い、治安機関の職員に伴われて姿を現した。
メディアなどでは「自発的にイドリブ県へ逃げた「愛ある妻」」などと紹介されたが、住民や活動家からは怒りと不信の声が上がった。
地元住民や活動家は、サーバートさんが武装組織関係者と強制的に「結婚」させられた可能性があり、また専門学院の女性課長を含む関係者と武装組織の連携による「組織的な拉致・性的隷属」の疑いがあると見ている。
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シリア・クルド国民評議会のムハ…