DWは、ダーイシュ(イスラーム国)がドナルド・トランプ米大統領によるシリアへの制裁解除宣言と、アフマド・シャルア暫定大統領との会談を受けて、外国人戦闘員に決起を呼びかけたことを受けて、シャルア移行期政権内の外国人戦闘員の現況についてレポート記事を掲載した。
それによると、シャルア移行期政権の中核をなすシャーム解放機構(1月に解体)とともに戦った外国人戦闘員の正確な人数を把握するのは困難だが、推計では1,500人から6,000人の間とされており、多くの専門家は中間の3,000~4,000人程度が妥当と見ている。
最大勢力は、中国新疆ウイグル自治区、中央アジア、東アジア出身のウイグル人(出身者など)であり、彼らの多くはトルキスタン・イスラーム党に所属している。。
そのほかにも、ロシアおよび旧ソ連構成国、バルカン諸国、フランス、イギリス、トルコ、アラブ諸国の出身者がいる。
2024年12月のシャーム解放機構主導のアサド政権打倒作戦において、ウイグル人やチェチェン人を含む複数の外国人戦闘員グループは作戦成功の鍵を握っていたとされ、その論功行賞として、複数の外国人戦闘員が幹部士官に任命されるなどしていた。
シャーム解放機構について詳しいワシントン研究所のアーロン・ゼリン上級研究員は、DWに対し、「外国人戦闘員が現在のシリア治安部隊にとってどれほど重要かを判断するのは難しい…。なぜなら、明らかにシリア人の方が圧倒的に多いからだ」と述べた。
だが、ゼリン上級研究員によると、外国人全員が等しく扱われているわけではなく、たとえば、ウイグル人戦闘員は、現在ではシャルア暫定大統領の「親衛隊」的役割を果たしているという。
ゼリン上級研究員は「彼ら(ウイグル人)は事実上、シャルア暫定大統領を守っている存在だ。彼は彼らを信頼しており、アサド政権との戦いをともにした「戦友と見なしている」と述べた。
一方、現在ドイツに住むシリア難民で元戦闘員の匿名男性は、DWに対して次のように語った。
アレッポでアサド体制軍と戦っていたとき、何人もの外国人戦闘員に出会った。
良い者もいれば、そうでない者もいた。彼らは戦うことに非常に集中しており、多くはサラフィー的な思想を持っていた。
彼らは戦いのある場所を求めて移動していた。
しかし、彼は次のようにも付け加えた。
今、残っている彼らの多くはすでにシリアで家庭を築いている。だから、個人的には彼らにチャンスを与えるべきだと思う。
追放すれば、女性や子どもまで一緒に追い出すことになるからだ。
それに、忘れてはならないのは、シリア人のなかにも、彼らの宗教的思想をある程度共有している人は多いということだ。
一方、米フィラデルフィアを拠点とするシンクタンクの外交政策研究所(FPRI)のムハンマド・サーレフ上級研究員氏は、2025年1月に次のように警告していた。
シャーム解放機構が、女性にヒジャーブを着用しないことを容認したり、アルコール販売を黙認したり、西洋型の政治プロセスへの参加を受け入れたりするなど、これまで通りの「穏健化路線」を継続するなら、組織内過激派、特に外国人ジハーディストたちは、ダーイシュ(イスラーム国)やアルカーイダへ離反、合流、協力する可能性がある。
シャーム解放機構が「過激派として不十分」と感じた者の多くは、すでに離脱している可能性が高い。
残っている外国人戦闘員の多くは、むしろ比較的穏健で、規律ある者たちである。
個々の外国人戦闘員が事件を起こす可能性は残る。
シャルア移行期政権の複数の関係者は、外国人戦闘員が他国にとって脅威ではなく、その規模は新生シリア軍全体に大きな影響を及ぼすほど多くはなく、しかも、彼らは移行期政権に忠誠を誓っていると指摘している。
それゆえ、彼らを新しい治安部隊に統合することこそ、最も現実的な対処策だとする専門家の見解も出ている。
ワシントン研究所のゼリン上席研究員は以下の通り述べている。
米国から出された要求のなかでも、外国人戦闘員の追放は、シリアにとってもっとも困難なものの一つだと思う。
彼ら(移行期政権)は、おそらく外国人戦闘員を手放したくはない。
ただし、彼らが法に反するような行動を取るならば、話は別だろう。
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シリア・クルド国民評議会のムハ…