スワイダー県では、首都ダマスカスとスワイダー市を結ぶ街道で13日に発生した強盗事件に端を発するドゥルーズ派住民とアフマド・シャルア移行期政権に近い部族の衝突は15日も続いた。
シリア人権監視団によると、戦闘は、カナーキル村、サーラ村、マズラア町一帯で激しく行われ、ドゥルーズ派の民兵が、部族および国防省・内務省の混成部隊による攻撃に対して激しく抵抗した。
部族武装グループおよび国防省の部隊が駐留するダルアー県の東ムライハ村からスワイダー市に向けて砲撃が行われた。
14日に始まった一連の戦闘で、死者は、子ども2人と女性2人を含む99人に達した。
内訳は以下の通り:
●住民:60人(子ども2人、女性2人を含む)
●部族:18人
●国防省の兵士:14人
●軍服を着た身元不明者:7人
このほか、200人近い負傷者がスワイダー国立病院に搬送されており、医療物資の深刻な不足のなか、医療スタッフが総力を挙げて対応にあたっている。
SANAによると、事態を受けて、シャルア移行期政権の国防省の部隊および内務省の治安部隊が、衝突の鎮静化と住民の保護を目的として、ダウル村に展開した。
また、SANAによると、県内農村地帯のそれ以外の村々にも、両省の部隊が展開した。
一方、シリア人権監視団によると、国防省の部隊がスワイダー市中心部から3キロの地点に位置するワルガー村に集結、同市への侵攻の構えを見せた。
これに対して、ドゥルーズ派民兵は、「シャーヒーン」の名で知られる無人航空機(偵察機)を撃墜する一方、市内の有力者らや住民は、スワイダー市の開城に断固反対の姿勢を見せた。
また、スワイダー24によると、スルターン・アトラシュの孫のアミール・アブー・ヤフヤー・ハサン・アトラシュ氏がイラー村で声明を出し、総動員を呼びかけるなど、抵抗の構えを示している。
なお、イナブ・バラディーによると、国防省部隊はマズラア町、サーラ村、タッル・ハディード村一帯を制圧した。
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ANHAは、ドゥルーズ派の最高宗教指導者のヒクマト・ヒジュリー師が暗殺未遂に遭遇したが、一命を取り留めたことが本日明らかとなったと伝えた。
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Suwayda 24によると、マクワス村に拘束されていた誘拐被害者たちが解放され、ドゥルーズ派の宗教指導者の1人であるユースフ・ジャルブーウ師の邸宅に到着した。
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外務在外居住者省は、フェイスブックなどを通じて声明を出し、深刻な緊張の激化に深い遺憾の意を表明し、すべての地域勢力に対して即時に暴力行為を停止し、違法な武器を引き渡し、内乱をあおる勢力の企図を挫くようを呼びかけた。
また、すべての国や国際機関に対して、シリアの主権を尊重し、いかなる分離主義的勢力に対しても支援も行わないよう改めて要請した。
そのうえで、ドゥルーズ派の権利尊重と保護、治安と安定の回復、国家機関の活性化、すべての国民の保護を、国家主権と法治の枠組みの中で進めていくと改めて強調した。
国防省は、フェイスブックなどを通じて声明を出し、2日間の戦闘で、30人以上が死亡、100人余りが負傷、複数の地区や町に被害が及んでいるとしたうえで、この衝突に伴う制度的空白が無秩序状況を悪化させ、事態の鎮静化や自制の努力を阻害したと現状を評価、国防省と内務省が部隊を展開させ、市民の安全を確保するとともに、迅速かつ断固としたかたちで衝突を終結させるために行動を開始したと発表した。
国防省はまた、フェイスブックなどを通じて、ハサン・アブドゥルガニー報道官(大佐)のビデオ声明を配信した。
声明のなかでアブドゥルガニー報道官は、武力衝突について「過去数ヵ月にわたってスワイダー県で続いてきた制度的・行政的な空白状態がもたらした直接的な結果であり、それが無秩序と治安崩壊への道を開いた」と説明した。
アブドゥルガニー報道官はまた、国防省と内務省が、地元有力者と連絡・調整して、衝突の鎮静化と治安の掌握のための緊急措置を講じ、同県へ軍および治安部隊の増派を行ったことを明らかにするとともに、違法な武装グループの攻撃で兵士18人が死亡、複数人が負傷したことを認めた。
内務省は、フェイスブックなどを通じて声明を出し、内務省と国防省の部隊の展開について、流血を止め、治安を確保し、安定を取り戻すという国家的任務の一環であると説明、その目的が治安の維持と民間人の保護に限定されており、いかなる勢力にも肩入れするものではないと強調した。
SANAによると、内務省のヌールッディーン・バーバー報道官は、武力衝突に遺憾の意を示したうえで、「国家が公式な機関を通じてスワイダー県に介入し、治安を回復することは避けられない決断である」と述べ、内務省と国防省の部隊が14日早朝にスワイダー県に入ったことを明らかにした。
SANAによると、ハムザ・ムスタファー情報大臣は、国防省と内務省部隊の介入について、「無秩序な武器の横行や無法集団の問題に対し、国家が考え得るすべての政治的・柔軟な解決策を試みた末の決断であった」と説明した。
SANAによると、地中海連合会合に出席するためにベルギーのブリュッセルを訪問中のアスアド・ハサン・シャイバーニー外務在外居住者大臣は、「我々は、アサド体制から引き継いだ混乱という負の遺産に今なお苦しんでいる」としたうえで、「シリア全土において無秩序な武器を制御し、治安と安定を回復し、すべての国民を保護するための取り組みを続けている」と説明した。
また、「尊敬すべきドゥルーズ派の市民たちは、新政府にとって責任をもって守るべき存在であり、その保護は国家の義務である。いかなる勢力もシリアの内政に干渉すべきではなく、シリアの主権を尊重しなければならない」と強調した。
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ムワッヒド・ドゥルーズ・ムスリム精神指導部は、フェイスブックを通じて声明を出し、(内務省)総合治安機関、(シャーム解放)機構の侵攻と攻撃を非難、これらの組織を含むいかなる国内勢力の介入も拒否すると表明、即時かつ迅速な国際的保護を改めて要請した。
ムワッヒド・ドゥルーズ・ムスリム精神指導部はまた、別の声明において、アフマド・シャルア移行期政権に対して即時停戦と尊厳ある解決を呼びかけるとともに、過激派、無秩序な勢力、または法律を逸脱する武装集団を受け入れないと改めて表明した。
一方、スワイダー24によると、尊厳の男たち運動が声明を出し、シャルア移行期政権のがダマスカス・スワイダー街道の治安維持を怠り、マスミヤ町の検問所一帯で繰り返されてきた民間人への犯罪行為を黙認してきたことが、衝突の原因だと非難、自衛を放棄できない原則、合法的かつ正当な権利だとしたうえで、土地と名誉を守るための総動員令を発出し、戦闘員を最前線に配置したと発表、平和的解決の追求は、弱さではなく強さの表れであるとしたうえで、即時戦闘停止を呼びかけた。
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SANAによると、レバノンの進歩社会主義党は、即時の沈静化を呼びかけるとともに、当事者が国際的な保護要請を行うことを拒否、安全と保護の責任は、唯一かつ排他的にシリア国家にあると強調した。
ワリード・ジュンブラート前党首もメディアに対して、政治的解決とシリア政府の主導によって、スワイダー県に再び安全と和解がもたらされることを望むと述べ、国際社会やイスラエルへの介入要請を拒否する姿勢を強調した。
SANAによると、トルコ外務省のオンジュ・クチャル報道官は、「シリアの主権と領土の一体性が優先されるべきである」としたうえで、国際社会の責任ある関係者と連携しつつ、シリアでの安定促進と合意形成に向けた努力を継続していく意向を表明した。
SANAによると、アナ・スノー英シリア担当特使は、Xを通じて事態への懸念を表明した。
SANAによると、イエメン外務省は、シリア政府による治安と安定の確保、武器の国家管理、そして国内各地における社会的平和の保護に向けた努力を全面的に支持すると表明した。
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シリア・クルド国民評議会のムハ…