スワイダー高等法務委員会は「スワイダー県危機解決とシリア南部安定化の行程表」を拒否:スワイダー県でシャルア移行期政権の部隊が停戦違反(2025年9月17日)

トーマス・バッラク在トルコ米大使兼務シリア担当特使は、Xで、「スワイダー県危機解決とシリア南部安定化の行程表」について、以下の通り綴った。

和解は一歩から始まる。スワイダーでは、この地図は癒やしの過程だけでなく、将来のシリアの世代が歩むことのできる道を描いている。それは、すべての人々に平等な権利と共有された義務に基づく国家を築くための道である。

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スワイダー県のドゥルーズ派の自治を担う高等法務委員会の広報局は、フェイスブックを通じて、アスアド・ハサン・シャイバーニー外務在外居住者大臣が16日に、米国とヨルダンの協力を得て発表した「スワイダー県危機解決とシリア南部安定化の行程表」を拒否すると表明した。

声明の内容は以下の通り。

いわゆる「スワイダー危機解決のロードマップ」に関するシリア外務(在外居住者)省の声明への対応として、スワイダー高等法務委員会は、シリア外務省の声明の内容を慎重に検討したうえで、以下の点を確認する。

#第1:声明内容における明白な矛盾
声明は、シリアのための国際独立調査委員会の招致を言及しながら、最終的にはシリア法に基づき処罰が行われると強調している。この矛盾は、国際調査の意義を空虚なものにする。なぜなら、被告が裁判官を兼ねることはあり得ないからである。グローバル正義は独立性と中立性の原則に基づいており、長い間正統性や信頼を失った国内機関に矮小化されることは容認できない。

#第2:責任逃れ
声明は、シリア政府を「和解を目指す中立的な当事者」と描こうとした。しかし政府とその治安・軍事機関は、数千人におよぶ民間人の虐殺と人権侵害に直接関与してきた当事者である。責任を否定することは和解への道を開くのではなく、むしろ不処罰の政策を固定化するものである。

#第3:国内司法への不信
これまでの経験は、シリアの司法機関が政治化され、行政府に従属し、公正な裁判の保証を提供できないことを証明している。したがって、シリアの法による処罰を語ることは、犯罪を糊塗するための見せかけに過ぎない。

#第4:内部分裂を狙う試み
声明にある地方評議会や合同警察部隊の話は、スワイダーに新たな支配を押し付け、正統性を失った人物や民意を裏切った者を前面に出して、住民間に不和を蒔こうとする試みにほかならない。我々は、この露骨な方策は内部の分裂をさらに深めるだけだと強調する。

#第5:自決権
スワイダーで犯された犯罪、そしてそれ以前から続いてきた数十年に及ぶ疎外・剥奪・排除の歴史は、自決権を求める正当な理由となる。したがって、スワイダーの住民は、自らの運命を自由と独立性えをもって決定する法的・倫理的権利を有しており、それは自治によっても、あるいは最後の選択肢として分離独立によっても実現され得る。これこそが、彼らの安全・尊厳・存在を守るために残された唯一の道である。

#第6:国際社会への呼びかけ
スワイダーの未来を決めるのは、その住民のみであり、ダマスカスで作られた声明や外部での合意によるものではない。我々はここから、国連、安保理、そしてすべての国際的当事者に次のことを呼びかける:

1. スワイダー住民に強制的に押し付けられるいかなる取り決めも承認しないこと。
2. シリア政府のヘゲモニーとは無縁の独立調査と国際的な責任追及の仕組みを保証すること。
3. 国際規約と不処罰禁止の原則に基づき、スワイダー住民の自決権を支持すること。

結論として、スワイダー高等法務委員会は、シリア外務省の声明を断固として拒否する。2025年7月に起きたことは声明にあるような不幸な事件ではなく、あらゆる意味において人道に対する罪である。これらの犯罪に立ち向かう手段は、国内での茶番劇的な裁判ではなく、加害者を裁き、スワイダーの人々の自由と自己決定権を保証する透明な国際的プロセスである。

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スワイダー県では、シリア人権監視団によると、16日深夜から17日未明にかけて停戦合意が再び破られ、アフマド・シャルア移行期政権の部隊が駐留するフルバト・サマル村からイラー村に向けて23ミリ重機関銃による激しい射撃が行われた。

また、シリア人権監視団によると、首都ダマスカスとスワイダー県を結ぶ幹線道路上に設置された検問所(アーディリーヤ検問所)の要員が、村から追放されたベドウィン系住民の避難民たちが首都ダマスカスへ向かうのを阻止した。

これに対し、ベドウィン系住民は街道を封鎖し、道路の安全確保と強制的に追放された自分たちを故郷に戻すよう要求した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、当局がアーディリーヤ村の避難所に身を寄せていたスワイダー県のベドウィン系住民の避難民数十世帯が追放した。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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