アラウィー派が多く暮らすハマー県西部で少女が政敵暴行を受けたことへの報復として武装グループがシリア軍兵士を拉致、シャルア移行期政権の軍・治安部隊が同地に大規模展開(2025年9月24日)

ハマー県では、シリア人権監視団によると、治安部隊がアラウィー派が多く暮らす県西部農村地帯(ハウラート・アンムーリーン村、ナフル・バーリド、アイン・ワルド村、ルマイラ村、アイン・クルーム村、サーキヤト・ナジュム村、アイン・ワリーダ村)に大規模に展開、軍用車輛を配置する一方、臨時検問所を設置し、住民の逮捕・検問を行った。

地元消息筋によれば、約100台の四輪駆動車からなる国防省所属の部隊の車列がアイン・ワルド村とルマイラ村に進入し、住民に対して無差別発砲、罵倒、暴行、逮捕などを行った。

また、数日前に若い女性(ラワーン・アスアドさん)が性的暴行を受ける事件が発生していたハウラート・アンムーリーン村では、近隣の村出身の武装グループによる商店の放火や略奪も発生した。

背景には、前日にサルハブ郡で拉致された第74師団所属の兵士が、「クマイト・カースィム連隊」を名乗る武装グループによって拉致され、拷問を受ける様子がSNSを通じて公開されたことを受けたもの。

映像では、ラワーン・アスアドさんに対する性的暴行への報復だとして、イドリブ県ザーウィヤ山地方の出身の被害者は殴打や電気ショックを受けていた。

一方、ナフル・バーリド村の住民・有力者は声明を発表し、拉致・拷問を非難するとともに、関与を否定、民間人や治安要員を狙ういかなる法外な行動も拒絶する姿勢を示した。

**

シリア人権監視団によると、クマイト・カースィム連隊によって拉致されたのは、第74師団に所属するフサイン・アフマド・カドハヌーン氏。

これに対して、ザーウィヤ山地方とジューズィフ村の住民は、ナフル・バーリド村あるいは周辺の村の住民が拉致に関与していたことを示唆し、これを非難した。

一方、25台のオートバイに乗った覆面姿の武装勢力がハウラート・アンムーリーン村を襲撃し、無差別発砲を行い、住民1人を殺害、他数人を負傷させ、住宅などに放火した。

また、周辺の村々でも武装勢力による巡回や家宅捜索が行われた。

これらは、ナフル・バーリド村の検問所で「アブー・フムザ」と呼ばれる人物が拉致された事件への報復とみられる。

**

この事態に対して、内務省(フェイスブック)によると、ハマー県内部治安部隊のムルハム・シャントゥート司令官(准将)は次のように声明を発表した。

市民の安全と村や町の治安維持に対する我々の責務に基づき、旧体制残党に属するテロ組織がシリア軍兵士を拉致し、その拷問映像を公開した後、拉致兵士の親族による武装攻撃が発生し、町に治安上の緊張が生じた。
これを受け、ハマー県の内部治安部隊は直ちに行動を起こし、国防省部隊と連携して大規模な増援を現地に派遣、町の周辺に展開して治安を確保し、市民の安全を守った。その結果、治安を完全に回復し、攻撃に関与した者の追跡を開始した。
治安部隊は、市民の生命を脅かす行為や社会の安寧を損なう行為を決して容認せず、自制と全面的な協力を求める。内部治安部隊の指導部は、拉致や攻撃に関わった全ての者を法の下で裁くため、必要な捜査を継続している。

(C)青山弘之 All rights reserved.

SyriaArabSpring

Recent Posts