シャルア暫定大統領は国連総会でシリアの国家元首として、国連がテロ組織に指定する組織の元指導者として史上初の一般討論演説を行う(2025年9月24日)


シリア大統領府によると、アフマド・シャルア暫定大統領は第80回国連総会において、シリア・アラブ共和国を代表して一般討論演説を行った。

シリアの国家元首が国連総会に出席したのは、1967年のヌールッディーン・アタースィー大統領以来、一般討論演説を行ったのは建国史上初めて。

また、国連がテロ組織に指定していた組織の元指導者が国連の場で演説を行うのは、国連発足以来初めて。

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SANAによると、円z捏の内容は以下の通り。

慈悲深く慈悲あまねきアッラーの名において
シリアの物語は感情を揺さぶり、痛みと希望が入り混じる物語である。それは善と悪との闘いであり、アッラー以外に助けを持たない弱き正義と、殺戮と破壊のすべての手段を持つ強大な不義との闘いである。我々の物語は歴史の教訓であり、人類の高貴な意味を真に体現している。
この永遠の善と悪の戦いにおいて、シリアの物語は闘争の新たな章を語る。それは光り輝き、偉大で創造的な章であり、対決、決意、忍耐、苦しみ、痛み、犠牲、殉教、高貴な価値と良き慣習の保持、真摯な準備と不断の努力、そしてアッラーへの信頼に満ちた章である。これこそが正義を不義に打ち勝たせる道具である。
私は歴史の首都であり文明の揺りかごであるダマスカスから来た。その美しい国は、世界に文明の意味、人間の価値、平和的共存を教え、世界が手本とする灯台となった。しかしシリアは60年間、不正で暴虐な体制の支配下にあり、その体制は自らが治める大地の価値を知らず、温和で平和な国民を虐げた。我々の国民は長きにわたり抑圧と剥奪に耐えてきたが、やがて自由と尊厳を叫んで蜂起し、殺戮、弾圧、焼き討ち、強姦、追放に直面した。
前体制は我が国民に対する戦争で、最も凄惨な拷問と殺戮の手段を用いた。爆弾樽、化学兵器、監獄での即時処刑、強制移住、宗派・民族間の対立の扇動、さらには麻薬を国民と世界に対する武器として使用した。国土を南北東西に引き裂き、歴史的都市を破壊し、あらゆる地域から外国軍、民兵、武装集団を呼び込んで国を人質にした。前政権はおよそ100万人を殺害し、数十万人を拷問し、約1,400万人を追放し、200万戸近い住宅を住民の頭上で破壊した。
前体制は200件を超える化学兵器攻撃を加え、子供や女性、若者たちを毒ガスに晒した。全ては正義の声を封じるためであった。この全ての犯罪行為にもかかわらず、体制は提示された政治的解決策をことごとく葬り去った。そのため、この国民に残された道はただ一つ、自らの隊列を整え、歴史的決戦に備えることだった。それは迅速な軍事行動であり、60年間続いた犯罪体制とそのすべての支援者を打倒するものであった。
今回の軍事行動は慈悲と善意に満ち、赦しと寛容を優先させたものであった。それは民間人を追放することも、殺害することもなかった軍事作戦であり、復讐も敵対も伴わない勝利であった。この勝利を通じて国民は自らの権利を取り戻し、不正に対して勝利した。そうだ、我々は虐げられた人々、苦しめられた人々、強制移住させられた人々のために勝利したのである。
我々は殉教者と行方不明者の母たちのために勝利し、そして世界の皆さん、皆さん全員のために勝利した。我々は子どもたち、そして皆さんの子どもたちの未来のために勝利し、難民の帰還の道を切り拓いた。我々はまた、前体制時代に我が国から皆さんの国々へと流出していた麻薬取引を破壊した。この勝利によりシリアは、危機を輸出する国から、シリアと地域全体に安定・平和・繁栄をもたらす歴史的機会へと変わった。
シリアの比類なき成果と国民の結束は、一部勢力をして宗派的対立や内部抗争を扇動し、分裂と分割の計画を推し進めようとさせた。しかしシリア国民には十分な意識があり、再び悲劇を繰り返してシリアを振り出しに戻すことを阻止した。シリア国家は事実調査委員会を設置し、国連にも調査を許可した。その結果は、これまでのシリアにはなかった透明性をもって一致した結論を導いた。私は、罪なき者の血で手を汚したすべての者を必ず裁きにかけることを約束する。
12月8日以降、我が国に対するイスラエルの脅威は止むことがなかった。イスラエルの政策は、シリアとその国民を支持する国際的立場に反しており、移行期を悪用しようとするものである。これは地域を新たな紛争の渦へと引き込み、その終わりが誰にも見えなくなる危険をはらんでいる。これに対し、シリアは対話と外交を用いてこの危機を乗り越えようとしており、1974年の停戦分離協定の順守を約束するとともに、国際社会に対し、これらの危険に立ち向かい、シリアの主権と領土の一体性を尊重するよう呼びかける。
我々は前体制崩壊の瞬間から明確な目標を持つ政策を策定した。その柱は、均衡のとれた外交、安全の安定、経済発展である。我々は権力の空白を埋め、包括的な国民対話を呼びかけ、有能な人材による政府を発表し、協働の原則を強化した。また、移行期の正義を担う国家機関や、行方不明者に関する国家機関を設立し、不正に対する公正と正義を実現した。
我々は人民議会の代表選挙に向けて進んでおり、すべての旧編成を解体して「武器は国家の手にのみ」という原則の下で民間および軍事の諸機関を再編した。精力的な外交活動を通じて、シリアは国際関係を回復し、地域的および世界的なパートナーシップを構築し、その成果として多くの制裁が段階的に解除された。我々は制裁を完全に解除するよう求める。なぜなら、それがシリア国民を再び縛り付け、その自由を奪う道具となってはならないからである。さらに、我々は投資法を改正し、大手の地域・国際企業がシリア市場に参入し、投資を通じて復興に貢献し始めている。
今日のシリアは、新しい国家の建設を通じて自らを再生している。それは、すべての人々の権利を例外なく保障する制度と法律を築くことである。シリアは歴史的な文明と文化を誇る国であり、誰もが守られる法の支配の国家にふさわしい。そこでは権利が守られ、自由が保証され、そのもとで生活が繁栄する。こうして我々は惨めな過去に終止符を打ち、シリアの栄光、誇り、尊厳を取り戻すのだ。
シリアの物語を締めくくるにあたり、私は今日、正義が不義に勝利したことを宣言する。「言え、「(今や)真理は下り、虚偽は消え去りました。本当に虚偽は常に消える定めにあります」」。いまやシリアは世界の国々の間で本来あるべき地位に戻りつつある。この宣言は、時代を超えて栄光を築き、幾度となく瓦礫の下から立ち上がり、自らの権利と自由、尊厳を取り戻してきた偉大な国民の意志の響きである。
シリア国民を代表して、我々の大義に共感し、苦難の中で助け、国を受け入れてくれたすべての人々に感謝と敬意を表する。また、シリア国民の意志の勝利を喜び、今日、平和と繁栄の歩みに共に立ってくれる世界中の国々とその人々にも感謝する。特に、トルコ、カタール、サウジアラビア、すべてのアラブ・イスラーム諸国、コメ国、そして欧州連合に心からの謝意を表する。
シリアが経験した痛みは誰にも望まない。我々は戦争と破壊の苦しみを最も深く知る民の一つである。だからこそ、我々はガザの人々、その子どもや女性、そして侵害と攻撃にさらされている他の人々を支持し、戦争の即時停止を求める。
シリアの物語はまだ終わっていない。それは平和と繁栄、そして発展を題とする新たな章を築き続けている。
あなた方に平安とアッラーの慈悲と祝福がありますように。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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