国連安保理:「移行期の初期的成果は多くの女性たちの期待に十分応えるものではなかった」(2025年10月22日)


国連SANAによると、安保理はシリア情勢への対応を協議するための会合(第10021回会合)を開催した。

ナジャート・ロシュディ事務総長副特使は会合で、国際社会による継続的な関与と迅速な制裁解除が、シリアの政治移行を支援し、女性や少数派の実質的な包摂を確保し、同国の主権と領土保全を守るために不可欠であると訴えた。

ロシュディ事務総長副特使は以下の通り述べた。

2024年12月、シリアの女性たちは新しい時代の到来を祝う中で、苦難からの解放、法の支配、真の平等へと至る持続的な歩みを期待した。アフマド・シャルア暫定大統領もその願いへの支持を表明しました。しかし、その後の数ヵ月で、移行期の初期的成果は多くの女性たちの期待に十分応えるものではなかった。
シリアの女性たちは、今後の選挙過程が彼女たちの正当な参加権を保護し、代表の機会を最大化するよう設計されることを期待し、かつ要求している。

ロシュディ事務総長副特使は、10月5日に実施された人民議会の間接選挙が概ね平穏に行われたことを歓迎しつつも、これまでに選出された議員119人の内訳は、キリスト教徒1名、イスマーイール派3名、アラウィー派3名、クルド人4名、そしてドゥルーズ派の議員はゼロであるとし、代表性のさらなる改善が必要であると訴えた。

一方、シリア民主軍とシャルア移行期政権による3月10日の合意についても言及、これを平和的に進展させるべきだと述べるとともに、イスラエルによる領土侵犯を終わらせるよう求め、「シリアへの外部干渉が続いていることは受け入れがたい」と付言した。

人道問題調整事務所(OCHA)のラメシュ・ラジャシンガム人道部門局長も報告を行い、シリアの人道状況を「世界最大級の人道危機の一つ」と形容し、人口の70%以上に影響が及んでいると述べた。

ラジャシンガム人道部門局長は、アレッポ県での新たな戦闘により民間人の犠牲と避難が発生しているほか、スワイダー県では治安不安から燃料やパンが不足し、各県での山火事が家族の避難と公共サービスの中断を招いていると警告した。

理事会で発言した各国代表のうち、韓国、ギリシャ、デンマーク、スロベニア、英国(ジェームズ・カリオキ)は、シリアで最近達成された成果を評価しつつも、女性および周縁化されたマイノリティ・コミュニティの代表性拡大を求める声が相次いだ。

米国のマイク・ウォルツ大使は、人民議会選挙を「歴史的な機会」と評し、ドナルド・トランプ大統領による制裁解除決定が開いた新しい経済的未来をシリアが積極的に受け入れるよう求めるとともに、安保理各国にも同様の措置を検討し、国連安保理決議第1267号の制裁対象だったシリア指導者らへの制裁解除を促した。

パナマ、パキスタン、フランス(ジェローム・ボナヴォ)の各代表も経済制限の解除の必要性を強調した。

10月の安保理議長国であるロシアのワシーリー・ネヴェンジャ大使は、「一方的な制裁が人道的必要を悪化させ、復興を妨げ、シリア国民の発展権を制限している」と述べ、国際的な投資と支援を呼びかけた。

中国の傅聰大使は、アサド政権崩壊後の混乱を外国人テロ戦闘員が利用しており、これらの集団を「完全に根絶しなければならない」と強調、制裁解除にあたっては、シリアの対テロ・治安状況およびそれがもたらす複雑な影響を十分考慮すべきだと述べた。

トルコは、「バランスの取れたアプローチ」を求め、宗派主義的な勢力の要求に屈することが国民統合を損なう恐れがあると警告、とりわけシリア民主軍の強圧的行為が、地元のキリスト教との緊張を悪化させていると指摘した。

アフリカ諸国を代表して発言したアルジェリアのアンマール・ベン・ジャーミア大使は、国際社会に対して建設的で支援的な役割を果たすべきであると述べた。

パキスタンと、アラブ諸国を代表して発言したオマーンのハーリド・ビン・サーリフ・ルブヒー大使は、米国が仲介するイスラエル・ダマスカス間対話の進展を歓迎しつつ、イスラエルの最近の軍事行動によるシリア主権の侵害およびゴラン高原の継続的占領を強く非難した。

シリアの国連常駐代表であるイブラーヒーム・アラビー大使は、自国の現状に関して多くの発言があったことに応じ、「現在の状況は前例のない成果である」と述べ、「数十年ぶりにシリア国民が選挙に参加できたことは、新しい自由の時代の幕開けである」とし、テロ組織との戦いにおける国際・地域協力の継続を誓い、「私たちは今、自らの手で歴史を書いている」と締めくくった。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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