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SANA(3月19日付)などシリアの各メディアは、アレッポ県ハーン・アサル村で、反体制武装集団が化学物質を充填したミサイルを使用し、25人が死亡、100人以上が重傷を負ったと報じた。
SANAによると、反体制武装集団は、この攻撃に先立って、化学物質や毒ガスでネズミを殺す、「疾風」と名付けられた実験のビデオをアップし、化学兵器による攻撃を行うと脅迫していた、という。
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シリアの外務在外居住者省は、国連安保理議長と事務総長に宛てて書簡を提出、そのなかで反体制武装集団が化学兵器を使用したことを報告した。
同書簡によると、反体制武装集団は、19日午前7時30分に、カフルダーイル村一帯から、約5キロ離れたハーン・アサル村に向かってミサイルを発射、約300人の市民が居住し、軍が駐留する地域が被弾した。
着弾・爆発したミサイルから出た煙を吸った市民・兵士は意識を失い、うち25人が死亡、110以上がアレッポ市内の病院に搬送されたという。
そのうえで外務在外居住者省は、シャームの民のヌスラ戦線に代表される反体制武装集団による化学兵器使用の危険に対して再三にわたって懸念を表面してきたとしたうえで、国際社会に対して、断固たる姿勢で対処するよう求めた。
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ウムラーン・ズウビー情報大臣は、ハーン・アサル村での反体制武装集団による化学兵器使用に関して、記者団に対して、反体制武装集団を支援するトルコの首相とカタールの主張に法的、道徳的、人道的責任があると厳しく非難した。
また、使用された化学兵器はシリア国外から持ち込まれたものだと断じ、非致死性兵器や非軍事支援を行っているだけだとの英仏、カタール、トルコの主張が「メディア向けの発言に過ぎない」と批判した。
さらに、こうしたテロに対して、シリア政府は、国際法に従って行動し、国際機関に対して異議申し立てを行う権利を有すると主張した。
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シリア人権監視団は、ハーン・アサル村の政府軍の拠点が地対地ミサイルで攻撃されたと発表したが、誰が攻撃したについては言及しなかった。
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自由シリア軍参謀委員会政治広報調整官のルワイユ・ミクダードは滞在先のイスタンブールで「我々は、軍がハーン・アサル村を長距離ミサイルで攻撃したと理解しており、我々の一時情報によると、そのミサイルには化学兵器が積まれていた」と述べた。
そのうえで「我々は長距離ミサイルも化学兵器も保有していない。持っていたとしても、革命家を標的としない」と付言した。
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自由シリア軍参謀委員会(最高軍事評議会)報道官のカースィム・サアドッディーン大佐は、反体制武装集団が、化学兵器を装備したスカッド・ミサイルを使用して、軍がハーン・アサル村を攻撃したとの報告を受けている、と述べた。
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シリア国民評議会は声明を出し、複数の医師、軍人、市民が、ハーン・アサル村内の少なくとも1カ所で、軍が市民に対して化学兵器を使用したことを確認したと発表した。
ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ヌアイマ村の第99戦車大隊本部と、対ヨルダン国境に近いタッル・シハーブ町近郊の戦車大隊拠点2カ所を、反体制武装集団が軍との交戦の末に制圧した。
一方、SANA(3月19日付)によると、アイン・アファー遺跡検問所を襲撃した反体制武装集団と軍が交戦し、複数の戦闘員が死傷した。
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ヒムス県では、SANA(3月19日付)によると、ラスタン市、タルビーサ市、ガントゥー市、バイト・ラービア市、アーミリーヤ市、東ブワイダ市、マスウーディーヤ村、ハミーディーヤ市、ジュースィーヤ村郊外、クサイル市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またレバノン領内からタッルカラフ市郊外に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退した。
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アレッポ県では、SANA(3月19日付)によると、カフルダーイル村、ワディーヒー村、カラースィー村、ハーン・アサル村、カフルハムラ村、ハーン・トゥーマーン村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、外国人戦闘員ら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市では、シャイフ・サイード地区、スッカリー地区、旧市街などで、軍が反体制武装集団と交戦し、外国人戦闘員ら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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イドリブ県では、SANA(3月19日付)によると、ワーディー・マハーミード、ワーディー・ハーッジュ・ハーリド、マアッラト・ヌウマーン市、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺、ハーミディーヤ航空基地周辺、フィールーン市、イドリブ市周辺、ブカフラー市、ズルズール市、ラーミー村、アブー・ズフール市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、SANA(3月19日付)によると、ウタイバ村、イバーダ市、ドゥーマー市、バフダリーヤ村、アドラー市郊外、ヤブルード市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またムウダミーヤト・シャーム市では、反体制武装集団が発射した迫撃砲により、女性1人が死亡、子供2人を含む3人が負傷した。
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ダマスカス県では、SANA(3月19日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またジャーヒズ公園近くのサウジアラビア大使館裏に反体制武装集団が発射した迫撃砲が着弾し、市民多数が死傷した。
シリアの外務在外居住者省は声明を出し、シリア軍戦闘機がレバノン領内(ベカーア県バアルベック郡アルサール地方)に対して空爆を行ったとの一部情報が「根拠がない偽り」だと否定した。
ミシェル・スライマーン大統領は、シリア軍によるレバノン領内への空爆に関して、「レバノンの主権を侵害する…受け入れられない」行為と厳しく非難し、シリア政府に対して文書で抗議するようアドナーン・マンスール外務大臣に指示した。
シリア革命反体制勢力国民連立は、イスタンブールでの18日からの大会で、ガッサーン・ヒートゥーを暫定政府首班に選出した。
ガッサーン・ヒートゥーは、1963年、ダマスカス生まれのクルド系。
米国籍を持ち、インディアナ大学大学院で修士号取得(1994年)後、四半世紀にわたり米国で通信テクノロジー関連の企業に務め、政治活動の経験はない。
2011年に米国で「自由シリアのための同盟」、「シャーム救済委員会」を設立、2012年にシリア革命反体制勢力国民連立の人道救済支援調整ユニットで活動してきた。
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『ハヤート』(3月21日付)によると、ヒートゥーは、投票総数49票中35票を獲得して、暫定政府首班に選出された。
ヒートゥーに投票したのは、シリア国民評議会と各県の地元評議会のシリア・ムスリム同胞団員、ムスタファー・サッバーグ連立事務局長。
また当初有力だとされていたシリア公務員国民自由連合副代表のアスアド・ムスタファー元農業大臣(元ハマー県知事)は、1980年代のハマー暴動への関与が指摘され、ムスリム同胞団からの支持をとりつけることができなかったという。
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シリア革命反体制勢力国民連立暫定政府首班に選出されたヒートゥーは、記者会見で、「政府は解放区での活動を始め、シリア革命反体制勢力国民連立の保護のもと、体制打倒後に開催されるであろう国民総会を国民のために準備し、シリア国民の意思を表現するかたちで自由かつ透明な選挙をめざす」と述べた。
ヒートゥーは、暫定政府の最優先事項が「アサド政権を何よりもまず完全に打倒するため…自由シリア軍、参謀委員会、革命家たちへの軍事援助、財政支援を確保する」ことにあると強調した。
そのうえで、カタール、トルコ、サウジアラビア、フランス、英国、イタリア、米国の「政治的、財政的支援」への謝意を示した。
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民主的変革諸勢力国民調整委員会のハイサム・マンナーア在外局長は、『ハヤート』(3月19日付)に対して、シリア革命反体制勢力国民連立によるガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班選出を「彼が誰かも知らない」としたうえで、「発足以来最大の過ち」と評し、「シリア北部にソマリランド」のような状態を作り出すと非難した。
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民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首は、シリア革命反体制勢力国民連立によるガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班選出に関して、「暫定政府首班の出自はクルドだが、ヒートゥーはクルド人のことを知らないし、クルド語すら話せない」と非難した。
また「ガッサーンはクルド人の間では無名で、クルド問題に関して何らの見解も持っていない」と付言した。
フラート通信(3月19日付)が伝えた。
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在外シリア革命支援人民委員会は声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立の暫定政府首班の選出に関して、「国外ではなく、シリア領内で占拠が実施されること」、「閣僚の80%を国内の活動家が占めること」を求めてきたと主張、首班選出が「疎外と対立を助長する原因にならないことを望む」と警鐘を鳴らした。
ロシア外務省は声明を出し、「我々がダマスカスから得た情報によると、シリアの反体制勢力はアレッポ県で3月19日の早朝、化学兵器を使用した」としたうえで、ハーン・アサル村での反体制武装集団による化学兵器使用を「シリア危機の文脈においてきわめて深刻な展開」、「大量破壊兵器が武装集団の手に渡っていることは、事態のさらなる混乱が原因であり、同国の対立を新たなレベルへと至らしめている」との「深刻な懸念」を表明した。
また、すべての紛争当事者に対して、暴力の停止と、ジュネーブ合意に基づいた紛争の政治解決を呼びかけた。
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ロシア外務省のアレクサンドル・ルカシェヴィッチ報道官は、シリア革命反体制勢力国民連立による暫定政府首班選出に関して、RT(3月19日付)に対して、「さらなる不安定をもたらす。シリア危機の平和的解決に資さず、ジュネーブ合意の文言と精神に反するこのステップを遺憾に思う」と述べた。
また「この決定は、合法的なシリア現政府の支持者ではなく、(シリア革命反体制勢力国民)連立に参加していない反体制勢力において、国家分裂の危機を増大させる」と付言した。
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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、ハーン・アサル村での反体制武装集団による化学兵器使用に関して、「シリアの反体制勢力が化学兵器を使用したとの非難を裏付ける証拠を我々は持っていない」と発表した。
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フランス外務省報道官は、シリア革命反体制勢力国民連立による暫定政府首班選出に関して、「反体制勢力の統合に資する」と支持を表明した。
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フランスのフランソワ・フィヨン前首相(国民運動連合)は、シリアの反体制武装勢力に対する武器供与(武器禁輸措置解除)に関して、「洗練された武器の供与することで…際限のない内戦になる…。危険だと思う」と述べた。
その理由としてフィヨン前首相は「問題は誰に武器が供与され、彼らが明日どうなるかだ」としたうえで、「アサド政権の戦闘機の空爆を阻止したいのなら、リビアでやったこと、すなわち飛行禁止空域を設定し、戦闘機を撃墜しなければならない」と主張した。
そのうえで「アサド政権を支援しないようロシア人に説得する試みはまだ終わっていない」と述べ、ロシアを説得し、飛行禁止空域設定のための国連安保理決議の採択をめざすべきだとの見解を示した。
AFP, March 19, 2013、Akhbar al-Sharq, March 19, 2013、al-Hayat, March 19, 2013, March 20, 2013, March 21, 2013、Kull-na Shuraka’, March
19, 2013、al-Kurdiya News, March 19, 2013、Naharnet, March 19, 2013、Reuters,
March 19, 2013、SANA, March 19, 2013などをもとに作成。
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