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ワーイル・ハルキー首相は、アサド大統領の演説で示された危機解決に向けたプログラムに必要な仕組みを構築するための特別会合の開催を内閣閣僚に呼びかけた。SANA(1月7日付)が報じた。
国内最大の非武装反体制政治連合である民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表はダマスカス県で記者会見を開き、アサド大統領の演説に示された紛争解決案を拒否すると発表した。
アブドゥルアズィーム代表は、「我々は、まず暴力が停止し、そのうえで政治犯が釈放され、被災地の救済が補償され、失踪者の行方が明らかにならないうちは、国民対話大会には参加しない」と述べた。
また「いかなる交渉も…国連・アラブ連盟共同特別代表(アフダル・ブラーヒーミー)の監督のもとでなされねばならない…。我々と政権の直接対話・交渉はない」と述べた。
さらに「政治対話や政治的解決の段階は遅きに失する…。アサド大統領のイニシアチブは2011年4月、ないしは3月という事件発生当初になされるべきだった。しかしイニシアチブは提示されず、軍事的解決が継続されたことで対話をめぐる問題は消し去られてしまった」と付言した。
アブドゥルアズィーム代表とともに記者会見に同席したラジャー・ナースィル書記長は「委員会は政治的解決をこれまでも、そしてこれからも支持する。我々は政治的解決以外にシリアに出口はないと考えている」と述べた。
そのうえで委員会の声明を読み上げ、そのなかでアサド大統領の演説を「ブラーヒーミー共同特別代表による平和的解決へのイニシアチブへの道を閉ざすもので…、非現実的、非実質的だ。なぜなら、自ら(アサド大統領)の敵に武装放棄を求め、勝者として対処しようとしているからだ。しかし現地では事態はこれとは異なっている」と批判した。
また、アサド大統領のイニシアチブが「現体制による国家指導への固執を前提としており、その意思のみに基づいて今後のプロセスの行程を描こうとしている」と付言した。
さらに現下の危機を外国および外国人テロリストとの戦争状態と認識するアサド大統領の見方については「外国陰謀論を唯一の基準としている」「不正確」と非難、「シリアの民衆革命は体制の40年間の振る舞いから生じた当然の帰結であり、専制や腐敗と対決するアラブの春の革命の一環をなしている」と主張した。
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アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表のシリア訪問時に提示した政治的解決に関する委員会ヴィジョンが、民主的変革諸勢力国民調整委員会のムンズィル・ハッダーム広報局長によってフェイスブック上に公開された。
同ヴィジョンの骨子は以下の通り:
1. すべての紛争当事者による暴力の停止。
2. シリア革命に関わるすべての逮捕者の釈放。
3. 避難民の帰国の保証。
4. すべてのシリア人への人道支援の保証。
5. 多元的民主制に向けた政治的解決のための交渉。
6. ジュネーブ合意の曖昧な文言の解釈をめぐる国際社会のコンセンサスの実現。
7. 国連安保理決議による暴力停止および監視に関する決議の採択。
8. 反体制勢力の活動家を長とする移行期政府の発足。
9. 民主的変革諸勢力国民調整委員会、シリア国民救済大会、シリア革命反体制勢力国民連立、シリア国民民主同盟、クルド最高委員会、そしてシリア人殺戮に関与してない政権および反体制勢力の代表の移行期政府への参加。
10. 軍および自由シリア軍から構成される暫定軍事評議会の設置。
11. 移行期政府による現行憲法、大統領権限の停止。
12. 復興のための国際基金の設立と、移行期政府による復興プロセスの始動。
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国内で非武装の反体制活動を続けるシリア国家建設潮流は、「アサド大統領が示した政治的解決のための諸プロセスは、圧政と危機的状況下にある国を安定と民主的国家へと移行させるにふさわしい政治的解決としては不十分である」と非難、「それは、政権の監督下に置かれなければ…解決に向けた一般的基礎になり得る」との立場を示した。
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国民青年公正成長党(野党)のバルウィーン・イブラーヒーム書記長は、アサド大統領の演説に関して、危機解決に向けた大統領のビジョンと愛国的な野党の方針を合致させる必要があると述べ、大統領が提案した包括的国民対話プロセスに参加する意思を示した。SANA(1月7日付)が報じた。
在外の反体制活動家によって構成されるシリア革命反体制勢力国民連合の広報局は、アサド大統領の演説を受けるかたちで声明(6日付)を発表し、そのなかで大統領を「国家元首の地位に就く資格を欠き…政治的解決をもたらすことができない…。なぜなら保身しか考えていないからだ」と批判した。
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シリア国民変革潮流(アンマール・カルビー書記長)は6日付で声明を出し、「自らが殺している国民の名のもとに演説した」と非難した。
またシリア国民変革潮流は別の声明で、組織改編を行ったと発表した。
同声明によると、この組織改編により、執行部(カルビー書記長ほか6人)、事務局(9人)、各委員会(法務顧問、広報顧問、人権顧問、文書委員会、医療救援委員会、情報委員会、調査研究計画委員会、市民社会組織担当官、対自由シリア軍連絡担当官、対文民行政評議会連絡担当官)、各国事務所(エジプト、ドイツ、英国、ロシアなど)、国内事務所(ダマスカス、アレッポ、ジャズィーラ地方、イドリブ、ヒムス)などが整備された、という。
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シリア人権監視団は声明を出し、ユーチューブにアップした映像を削除されたことへの異議を表明した。
同監視団がアップした映像が削除されたのはこの2ヶ月で2度目。
シリア・クルド民主党(アル・パールティ)のアブドゥルハキーム・バッシャール書記長は、「シリアのクルド人の運動には二つの路線がある。一つは革命と体制打倒を支持する路線、もう一つは人民防衛隊(YPG)として知られている一派で独裁体制維持を支持している」と述べ、民主統一党とアサド政権の協力関係を断絶するために活動するとの意思を示した。
アナトリア通信(1月7日付)が報じた。
ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市、ダーライヤー市、カフルバトナー町、バイト・サフム市、アックラバー市が砲撃を受け、カフルバトナー町では一家4人を含む5人が死亡した。
一方、SANA(1月7日付)によると、ドゥーマー市、ダーライヤー市などで軍が反体制武装勢力の追撃を続け、グータ殉教者大隊メンバーを含む多数の戦闘員を殺傷、装備・拠点を破壊した。
また、ハジャル・アスワド市で軍が反体制武装勢力の追撃を続け、ビータール大隊メンバーを含む多数の戦闘員を殺傷、装備・拠点を破壊した。
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アレッポ県では、『ハヤート』(1月8日付)によると、アレッポ市サラーフッディーン地区のザイバル・モスク周辺、ライラムーン地区で軍と反体制武装勢力が交戦した。
またマンナグ空軍飛行場周辺で軍と反体制武装勢力の交戦が続いたという。
一方、SANA(1月7日付)によると、ハーン・アサル村、ウワイジャ地区、アズィーザ村、ハーン・トゥーマーン村、アレッポ市マサーキン・ハナーヌー地区、アンサーリー地区などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、拠点・アジトを破壊した。
またSANA(1月7日付)は、アレッポ県での破壊活動に関与したもの殺人を犯さなかった逮捕者83人が釈放さえた、と報じた。
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ダルアー県では、『ハヤート』(1月8日付)によると、ブスル・ハリール市、ダーイル町で軍と反体制武装勢力が交戦した。
一方、SANA(1月7日付)によると、ナワー市で軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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イドリブ県では、『ハヤート』(1月8日付)によると、タフタナーズ空軍基地周辺で軍と反体制武装勢力の交戦が続いた。
一方、SANA(1月7日付)によると、マストゥーマ村、タフタナーズ市、トゥウーム村、ビンニシュ市などで軍が反体制武装勢力と交戦、多数の戦闘員を殺傷、武器・弾薬などを押収した。
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ハマー県では、SANA(1月7日付)によると、タイバト・イマーム市で軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
ローマ法皇ベネディクト16世は、各国および国際機関の大使ら外交官179人を前に年始恒例のフランス語による演説を行い、そのなかでシリアの紛争への対話による解決を呼びかけた。
ベネディクト16世は演説のなかで、「できるだけ早期の武装放棄、建設的対話」による「紛争終結」を呼びかけるとともに、「もし紛争が続けば、勝者などなく、敗者だけとなろう」と警鐘を鳴らした。
また「危機的な人道状況に対処するため緊急の支援を拡充」するよう呼びかけた。
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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、外務省ホームページで公開された声明のなかで、「アサド大統領の危機解決に向けた包括的イニシアチブを支持する」と表明した。
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中国外交部報道官は、記者団に対して、「中国はシリアの紛争当事者が共通の計画を遵守することを支持する…。シリア当局、反体制勢力にできるだけ早く武力衝突を止めるよう呼びかける」と述べた。
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国連の潘基文事務総長は、「ジュネーブ合意の重要な要素のほとんど、とりわけ政治的移行、すべてのシリア人の代表を包摂し、全権を委任された移行期政府の創設を拒否している」と非難、「アサド大統領の演説はシリア国民の苦しみを終わらせることには資さない」との失望の意を示した。
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フランス外務省報道官は、アサド大統領の演説に関して、「現実を否定し、シリア国民への抑圧を正当化」するものと批判した。
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オランダ軍のパトリオット・ミサイル発射台2基および関連機材を搭載した車輌160台および兵士約300人がトルコに派遣された。
AFP, January 7, 2013、Akhbar al-Sharq, January 7, 2013、al-Hayat, January 8, 2013、Kull-na Shuraka’, January 7, 2013、al-Kurdiya News, January
7, 2013、Naharnet, January 7, 2013、Reuters, January 7, 2013、SANA, January
7, 2013などをもとに作成。
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ナハールネット(11月21日付…
イドリブ県では、テレグラムの「…