イドリブ県でヌスラ戦線などが軍の一大拠点であるハーミディーヤ基地に突入する一方、ブラーヒミー共同特別代表が露外相との共同会見のなかで「体制打倒を対話プロセスの条件とすること」を非難(2012年12月29日)

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国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装勢力がマアッラト・ヌウマーン市南部の軍の一大拠点であるハーミディーヤ基地に突入した。

同監視団によると、シャームの民のヌスラ戦線などが、ワーディー・ダイフ軍事基地攻略を円滑に進めるべく、同基地に突入し、軍と激しく交戦したという。

一方、SANA(12月29日付)によると、イドリブ市・サルミーン市間の街道沿いで軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ハマー県では、アリー・イドリビーを名乗る活動家によると、軍がイドリブ県ワーディー・ダイフ軍事基地方面に至るダマスカス・アレッポ街道に位置するムーリク市の拠点を強化した。

イドリビーによると、軍はワーディー・ダイフ軍事基地攻略を試みる反体制武装勢力の南部からの兵站路を遮断しようとしている、という。

なお、ワーディー・ダイフ軍事基地北部のダマスカス・アレッポ街道は、反体制武装勢力の兵站線が伸びきっているために放棄されている、という。

他方、シリア人権監視団によると、カルナーズ町に対して軍が空爆を行い、10人が死亡したという。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、軍がヒムス市ダイル・バアルバ地区を制圧した。

制圧に先立って、軍は同地区に激しい攻撃を加え、反体制武装勢力は撤退を余儀なくされていた。

これに関して、軍武装部隊総司令部は声明を出し、ヒムス市ダイル・バアルバ地区の浄化を完了したと発表した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(12月29日付)によると、ダーライヤー市、ドゥーマー市、アルバイン市、ザマルカー町、ズィヤービーヤ町、ヤブルード市などで、軍が反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(12月29日付)によると、ラスム・アッブード村、マンナグ村、ナイラブ村、マーリア市、アレッポ市マアスラーニーヤ地区、ジャズマーティー地区、カーディー・アスカル地区、マイサル地区、サーリヒー地区、カースティールー地区、ハーディル地区、ライラムーン地区などで、軍が反体制武装勢力を追撃し、アブー・バクル大隊メンバーなど多数の戦闘員を殺傷した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(12月31日付)によると、ジャブサ石油パイプラインを反体制武装勢力が爆破した。

国内の動き

ロイター通信(12月29日付)は、カイロ国際空港高官の話として、シリア・アラブ航空のアレッポ・カイロ便が現地の治安情勢悪化を受けて運休となったと報じた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、モスクワ訪問中のアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表と会談、シリア情勢を協議した。

SANA, December 29, 2012

ラブロフ外務大臣は会談後の記者会見では、政治的解決が依然として可能だとしつつ、「アサド大統領は何度もいかなる国にも行く意思はない、最後まで現職にとどまると言ってきた…。この姿勢を変えることはできないだろう」と述べた。

シリアの現状に関して、ラブロフ外務大臣は「アル=カーイダによるテロが拡大し、シリアを自らの目的を達成するために利用している」と非難、紛争が「ますます宗派主義的な傾向を強めている」と危機感を露わにした。

そのうえで、ジュネーブ合意を紛争解決をもたらす政治的プロセスが依拠する唯一の政治的基礎だと強調、暴力停止を実現したうえで、国連の監視団を派遣する必要があると述べた。

一方、ロシアとの対話を拒否したシリア革命反体制勢力国民連立の姿勢に関して、「体制打倒…を対話プロセスの条件とすることは建設的でなく、客観的でない」と非難、こうした姿勢が事態を「行き詰まらせ、事態悪化以外の何ものももたらさないだろう」と述べた。

さらに「在外の反体制勢力にはシリア国内の軍事紛争に影響を及ぼすツールがない…。我々はこの点に関して、西側のパートナーと議論してきた」と付言した。

またシリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長については、「政治での手腕がない」と非難した。

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一方、ブラーヒーミー共同特別代表は、「もし地獄か政治的解決のいずれかを選択しなければならないのなら、我々は、政治的解決のために活動しなければならない」と述べた。

またブラーヒーミー共同特別代表は「シリアで体制転換が起きたとしても、それによって紛争が必ずしも収束はしないだろう」と述べ、シリアが「第2のソマリア」化する危険を指摘した。

そのうえで「すべての当事者が流血停止のための責任ある行動と支援を行う」よう呼びかけ、「シリア国民が指導する真の政治プロセスこそが(武力紛争に代わる)オルターナティブ」と強調した。

ジュネーブ合意に関して、ラブロフ外務大臣と「政治プロセスの基礎」をなすとの点で意見が一致したとしつつ、「修正がなされなければならない」とも述べた。

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エジプトのムハンマド・ムルスィー大統領は、シューラー議会でシリア情勢について触れ、そのなかでシリアの危機解決のためのエジプトの最優先事項が流血停止にあるとしたうえで、「シリア国民に対するあらゆる軍事介入に反対する」と述べた。

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共同通信(12月29日付)によると、UNDOFに参加している自衛隊部隊の第1陣が撤収を開始した。

AFP, December 29, 2012、Akhbar al-Sharq, December 29, 2012、al-Hayat, December 30, 2012、Kull-na Shuraka’, December 29, 2012、al-Kurdiya News,
December 29, 2012、Naharnet, December 29, 2012、Reuters, December 29, 2012、SANA,
December 29, 2012, December 30, 2012, December 31, 2012、UPI, December 29,
2012などをもとに作成。

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