シリア人避難民を乗せて、トルコ領内からギリシャのコス島方面に向かっていたボート2隻が2日に相次いで沈没し、『インディペンデント』(9月2日付)などによると、子供2人を含む12人が死亡した。
トルコ日刊紙『デイリー・サバフ』(9月2日付)によると、最初に沈没したボートには16人が乗っていたが、トルコ領のアクヤルラル市近郊の海岸を発でまもなく沈没し、7人が死亡した。
またもう1隻のボートは、最初のボートが出発した直後、6人を乗せて、ほぼ同じルートでギリシャに向かおうとしたが、沈没し、女性1人、その子供3人が死亡した(なお『デイリー・サバフ』は死者数を11人と報じた)。
犠牲者のうちの幼児1人の遺体は、トルコ領内の海岸に仰向けとなった状態で打ち上げられ、トルコの国境警備隊が回収、その様子は写真に納められ、『インディペンデント』(9月3日付)によると、トルコの各メディアを通じて2日中に公開された。
ドアン通信などによると、写真は9月2日にドアン通信の特派員・カメラマンのニルフェル・デミル(Nilufer Demir)女史が撮影し、近くには兄、母の遺体もあったという。
また、ハフィングトン・ポスト(9月3日付)によると、米人権団体のヒューンマン・ライツ・ウォッチ緊急対応部門ディレクターのピーター・ブッカー(Peter Bouckaert)氏によって、『インディペンデント』紙など欧米諸国の主要メディアに拡散されたという。
写真に写っていた幼児は、アイラーン・クルディーくん(3歳、クルド語名アーラーン・シャンノー)で、同じボートに乗っていた兄のガリーブくん(5際)、母親のリーハーナ氏(28歳)も死亡した。
父親のアブドゥッラー氏(36歳、ただし40歳との報道もあり)は無事だった。
アイラーンくんの父親のアブドゥッラー氏は記者らに対して、事件が起きた時の状況に関して以下のように語った。
「延長5メートルほどのボートに12人が乗っていた。出発後まもなく、波が高くなり、密入国を斡旋していたトルコ人が海に飛び込み、逃げてしまった。残された我々は、波と格闘したが、ボートは転覆した。私は息子2人と妻をつかんで、転覆したボートに1時間ほどしがみついていたが、子供たちが死にそうになった。1人(アイラーンくん)は高波のなかで息絶えたので、もう一人(ガリーブくん)をつけるために、死んだ息子を手放した…。(泣きながら)もう一人も死んでしまった。口から泡を吹き始めたので、母親を助けるために彼を手放した。しかし、妻も死んでいることに気づいた。その後私は3時間、海上に取り残されたが、ギリシャの沿岸警備隊がやって来て、私を助けてくれた」。
なお、アブドゥッラー氏一家を含むシリア人避難民は、トルコのブローカーに対して1人1,000ドルもの大金を支払い、欧州への密入国の仲介を依頼しているという。
欧米諸国でアイラーンくんの遺体の写真が拡散された直後、アイラーンくんと兄のガリーブくんの生前の写真(出所不明)が2日に公開され、『インディペンデント』(9月3日付)などに掲載された。
ARA News(9月3日付)などによると、アイラーンくんらの遺体は、西クルディスタン移行期民政局コバネの中心都市であるシリア領内のアイン・アラブ市(クルド語名コバネ)に運ばれ、同地で4日に埋葬された。
AFP(9月4日付)によると、葬儀にはシリア人数百人が参列した。
AFP, September 3, 2015、September 4, 2015、AP, September 3, 2015、ARA News, September 3, 2015、Champress, September 3, 2015、The Daily Sabah, September 2, 2015、The Daily Telegraph, September 5, 2015、DHA, September 2, 2015、September 3, 2015、al-Hayat, September 4, 2015、The Huffington Post, September 2, 2015、September 3, 2015、The Independent, September 2, 2015、September 3, 2015、Iraqi News, September 3, 2015、Kull-na Shuraka’, September 3, 2015、al-Mada Press, September 3, 2015、Naharnet, September 3, 2015、NNA, September 3, 2015、Reuters, September 3, 2015、SANA, September 3, 2015、UPI, September 3, 2015などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.
イドリブ県では、テレグラムの「…
イランを訪問中のバッサーム・サ…