スワイダー県では、SANA(9月4日付)によると、スワイダー市で爆弾が仕掛けられた車2台が相次いで爆発し、住民26人が死亡、多数が負傷した。
スワイダー県警察によると、爆発した2台の車のうち1台は、東部郊外のダフル・ジャバル街道で、またもう1台はスワイダー市中心部の国立病院の南側の門の前でほぼ同時に爆発した。
1台目の爆発で4人が死亡、8人が負傷、2台目の爆発で4人が死亡、14人が負傷、また爆発により国立病院と周辺のビル、さらには通行中の車多数が被害を受けた。
ワーイル・ハルキー内閣はスワイダー市で発生した連続爆破テロに関してただちに声明を出し、犠牲者と遺族に哀悼の意を示すと友に、「こうした卑劣なテロ行為は、テロに対するシリア国民の抵抗を挫くことはなく、国民の抵抗力を増すだけだ」と表明した。
またバアス党シリア地域指導部のヒラール・ヒラール副書記長もスワイダー市での連続爆破テロに関して「シリアの敵がスワイダー県民の姿勢と抵抗を挫くことに失敗した末に、スワイダーを狙ったものだ」と述べ、反体制勢力が関与しているとの見方を暗示した。
そのほか、ウムラーン・ズウビー情報大臣、アフマド・バドルッディーン・ナッスーン共和国ムフティー、ドゥルーズ派のシャイフ・アクルのヒムマト・ヒジュリー師やユースフ・ジャルブーア師も連続爆破テロを厳しく非難した。
なおシリア国内では、2日にラタキア市で爆破テロが発生している。
ラタキア市、スワイダー市はいずれもシリア政府の支持者が多い地域。
またクッルナー・シュラカー(9月4日付)によると、爆発はその後、クライヤー村でも発生したという。
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一方、クッルナー・シュラカー(9月4日付)は、現地の複数の消息筋の話として、ダフル・ジャバル街道で発生した1回目の爆破テロで、ドゥルーズ派の「カラーマの男たち」の指導者のワヒード・バルウース師(アブー・ファフド)の車列が爆発に巻き込まれ、乗っていたバルウース師と同師の兄弟1人が重傷を負い、市内の病院に搬送されたと伝えた。
またスワイダー市住民によるとされる複数のSNSページによると、身元不明の遺体3体が病院に搬送され、そのなかにバルウース師が含まれていたという。
バルウース師は反体制活動家として知られ、アサド政権に対して公然の異議を唱えていた人物で、最近ではドゥルーズ派の若者にシリア軍、国防隊などへの従軍を拒否するよう呼びかけていた。
また、シリア人権監視団は、バルウース師が「民兵指導者」で、彼が率いる民兵はダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線と戦っている、と記している。
「カラーマの男たち」(単数形は「シャイフ・カラーマ」)とは、シリア政府を支持するドゥルーズ派の「シャイフ・アクル」(複数形は「マシャーイフ・アクル」)と一線を画し、反体制的な姿勢をとるアブー・ファフド・ワヒード・バルウース師らを中心とするシャイフのグループ。
スワイダー市では1日、スワイダー市で、地元の活動家が「お前たちは我々を絞め殺した」(خنقتونا)と銘打って汚職に抗議するデモを呼びかけ、住民数千人が県庁舎前に集まり、燃料不足、停電、断水などへの不満を訴えた。
デモ主催者は、スワイダー県知事、バアス党スワイダー支部書記長、燃料、電力、水道公社総裁、治安機関幹部、警察署長、供給局長の解任を求めていた。
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クッルナー・シュラカー(9月4日付)によると、スワイダー市内では3日晩、バルウース師の死に対して怒りを露わにした「カラーマの男たち」の指導者や住民ら合わせて「数千人」がデモを行い、市の中心に位置する広場でハーフィス・アサド前大統領の立像を破壊、その後、軍事情報局スワイダー支部、刑事保安局に向ったが、治安部隊と「もみ合い」となり、デモ参加者、治安部隊隊員双方合わせて「数十人」が死亡した。
トルコのイスタンブールで活動するシリア革命反体制勢力国民連立は「スワイダーの革命家たちは、空軍情報部、軍事情報局、刑事保安局、軍警察、バアス党支部のすべてを完全制圧した」と吹聴した。
また、クッルナー・シュラカー(9月4日付、5日付)などによると、シリア政府は、連続爆破テロ発生の数時間後には、ダマスカス・スワイダー街道を封鎖し、インターネット回線を遮断するなどして、スワイダー市一帯を孤立化させようとしているという。
しかし、シリア人権監視団は、デモに参加し、スワイダー市内で発生した連続爆破テロに対するシリア政府の責任を追及したのはバルウース師の支持者ら「数十人」だけで、デモをめぐるもみ合いで治安部隊隊員が死亡したと発表した(その後(6日)、シリア人権監視団は、スワイダー市での連続爆破テロの死者が子供1人、女性5人を含む31人に及び、その直後に発生した市内でも暴動で、治安部隊隊員6人が殺害されたと発表した。)。
またAFP(9月5日付)などによると、スワイダー市のドゥルーズ派のシャイフらが住民らに平静を保つよう呼びかける一方、バルウース師を支持する若者ら数十人は、県庁舎など政府関連施設に投石し、施設前に駐車していた車に放火するなどの破壊行為を続け、ガラスが割れる音や発砲音が夜通し聞こえたという。
AFP, September 4, 2015、September 5, 2015、AP, September 4, 2015、ARA News, September 4, 2015、Champress, September 4, 2015、al-Hayat, September 5, 2015、September 6, 2015、September 7, 2015、Iraqi News, September 4, 2015、Kull-na Shuraka’, September 4, 2015、September 5, 2015、al-Mada Press, September 4, 2015、Naharnet, September 4, 2015、NNA, September 4, 2015、Reuters, September 4, 2015、SANA, September 4, 2015、UPI, September 4, 2015などをもとに作成。
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ロシア当事者和解調整センターの…