アサド大統領は、RT、『ロシースカヤ・ガゼータ』、第1チャンネル、ロシア24、リヤ・ノーヴォスチ、NTVによる合同インタビューに応じた。
質問はロシア語で行われ、アサド大統領はアラビア語で答えた。
インタビュー全文はSANAに全文が公開され、映像もSANAがユーチューブ(https://www.youtube.com/watch?v=Q0sjXVFchqU&feature=youtu.be)を通じて配信した。
インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り。
**
「危機発生(2011年)当初から、我々は対話路線を採用してきた。シリア国内、モスクワ、ジュネーブでシリア人どうしによる対話を数ラウンドにわたって行ってきた。しかし実際のところ、成果がもたらされたのは、モスクワ2だけだった。ジュネーブ(2)も、モスクワ1も部分的なステップだった…。しかし危機が大きなものだということを踏まえると当然だった。数時間、ないしは数日で解決策にいたることなどできない。我々は現在モスクワ3の開催を…待っている。我々はシリアのさまざまな政治組織、政党と対話を続けねばならないと考えている。同時に、シリアの未来について合意に達するため、テロと戦う必要がある」。
「シリア、イラク、そして地域全体にテロが拡散していることを考慮せずに、何かを実現できるだろうか? 我々は合意にいたるために対話を続けねばならないが、真に何かを実行したいと考えるのなら、人々が殺され、流血が続き、安全な暮らしができないなかで何もできない…。安全であることをすべてのシリア人にとっての最優先課題としなければ、我々は(対話で)合意したことをどのように実行できるというのか? つまり我々は合意をめざすが、シリア国内でテロを打ち負かさない限りは何も実行できない。それゆえ、我々はダーイシュ(イスラーム国)だけでなく、テロそのものを打ち負かさねばならないのだ」。
「多くのテロ組織が存在する…。そのなかで国連安保理がテロ組織と認定しているのがダーイシュとシャームの民のヌスラ戦線だ…。権力分有に関して、我々は当初から一部の反体制派と権力を分有してきた。彼らは数年前に政府に参画するかたちで権力分有を受け入れた…。しかし、現下の危機ゆえに、我々は今も権力分有を行おうと言っているのだ」。
「難民問題に関して言いたい。西側の対応、とりわけ先週の西側メディアのプロパガンダは…、これらの難民がシリア政府、ないしは彼らが言うところの体制から逃げてきた人々だとしたうえで、難民のために片目で涙を流し、もう一方の目で狙い撃ちしようとしているようなものだ。なぜなら、こうした難民は、テロリスト、そして殺戮…、さらにはテロによってもたらされた結果を避けてシリアを去ったからだ…。テロが生じ、インフラが破壊されれば…、人々はテロから逃れ、生活の糧を求めて世界のどこかに移動せざるを得ない…。西側は彼らのために涙を流す一方で、危機発生当初からテロリストを支援してきた…。当初は平和的な蜂起だったが、その後穏健な反体制派となったはずが、彼らは今ではヌスラ戦線やダーイシュといったテロが存在し、その原因がシリアの国家、ないしは体制、あるいは大統領にあると言う…。問題は欧州が難民を受け入れるか否かにあるのではなく、問題にどう対処するかにある。難民のことを心配するのであれば、テロリストへの支援を止めるべきだ…。これが難民問題の本質だ」。
「戦時下では、敵が国内のテロリストであろうが、国外から来るテロリストであろうが、国民は敵に対して一致団結しなければならない。今日、どのシリア人に何が今欲しいかと質問しても、みなが「私たちは個人、そして家族が安全でいることを望む」と言うだろう。つまり、我々は、政府内に身を置く勢力であれ、その外に身を置く勢力であれ、シリア国民が望むことのために一致団結しなければならない。つまりは、何よりもまずテロに対して一致団結しなければならないのだ…。このインタビューの場を借りてすべての勢力に呼びかけたい。テロに対抗するために一致団結することで、我々がシリア人として望む政治的目的にも対話や政治プロセスを通じて到達できる、と」。
「ジュネーブにおける国際社会の対応は中立的ではなかったが、ロシアの対応は中立的で…、国際法、国連の諸決議に沿ったものだった…。モスクワ3で求められているのは、シリアのさまざまな当事者の間にある渉外を解消することだ…。我々はモスクワ3が成功しなければ、ジュネーブ3を成功させるのが困難だと考えている」。
「今の時点で、イランはイニシアチブを発揮していないが、その基本原則は…シリアの主権、シリア国民の自決…、テロとの戦いを後押しするものだ…。それゆえ、我々はイランの役割が重要だと考えている…。イランがシリアに軍や部隊を派遣したとの西側メディアの報道は正しくない。イランは我々に軍需品を供与しており、シリアとイランの間では軍技術者の往来はある。しかし常に行われているものだ」。
「シリアとエジプトは決して断交することはなかった…。エジプト大統領がテロ組織のムスリム同胞団に所属するムルスィー氏だった時も、エジプトの諸機関はシリアとの関係を維持しようとした…。我々とエジプトの間には(テロとの戦いをめぐって)共通のヴィジョンがあると言える。しかし、現在の関係は治安レベルにとどまっている」。
「トルコとの国境でテロを根絶し…、それ以外の地域でのテロは許される、というような言説は受け入れられない。テロはあらゆる場所で根絶されねばならない。我々は3年以上も前から、テロとの戦いを行うための国際同盟を提唱してきた…。しかし、我々は現在、誰がヌスラ戦線やダーイシュに武器、資金を提供し、テロリストを送り込んでいるのか知っている。それはトルコだ…。しかし、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領もアフメト・ダウトオール首相も、米国、そしてそれ以外の西側諸国と調整せずには何の措置も講じることはできない。つまり、ヌスラ戦線やダーイシュがこの地域に存在していることで、西側諸国の行為を隠蔽されている。なぜなら、西側諸国は常に、テロが自分たちのポケットから取り出して、利用できるカードだと考えているからだ。彼らは今、ヌスラ戦線をダーイシュに対抗させるために利用しようと考えている。なぜなら、おそらくはダーイシュが彼らの管理を逸脱することがあるからだ。しかし、このことは彼らがダーイシュの根絶を望んでいることを意味しない」。
「我々にとって、ダーイシュ、ヌスラ戦線、そして武器を持ち、民間人を殺すそれに類するすべての組織が過激派だ…。しかし、我々は一部の武装集団と対話し、混乱した地域で合意に達し、事態を収束させた。別の場所では、こうした武装集団がシリア軍に参加し、シリア軍とともに戦っている…。つまり、我々は、ダーイシュ、ヌスラ戦線、そしてそれに類する組織をのぞくすべての者と対話している」。
「ロシア、イラン、そしてイラクといった友好国と我々は協力し合っている。イラクとは同じテロに対抗している。それ以外の国については、我々は、テロと戦う意志を持っていれば、いかなる拒否権も発動はしない…。(米国が主導する)有志連合は、現場で実際の影響力を持っていないがゆえに、失敗している。同時に、トルコ、カタール、サウジアラビアといった国、そしてフランスや米国といったテロを隠蔽しようとする国とともに、テロとの戦いは行えない。テロに与する者とテロに反対する者がともにいることはできない。しかしこうした国が政策を変更し…、有志連合がテロとの戦いを行う真の同盟…となれば、これらすべて国との協力を妨げるものはない」。
「テロ組織であるダーイシュはもちろん、国を作り…さらなる戦闘員を引きつけようとしている。これらの戦闘員は、宗教のためにイスラーム的な性格を持った国が存在するという過去の夢にとりつかれている。しかしこうした体裁は…偽りのものだ…。国家とは社会の産物として生じ、社会を代弁するため、社会のために発展を遂げる…。テロ集団は存在するが、彼らが社会を代弁することはない」。
「クルド人のみを対象とした政策があると言うことはできない。国家が一つの国民を区別することなどあってはならず、そうすれば国家に分裂が生じる…。我々にとって、クルド人はシリアの調和の一部をなしており、異邦人ではない…。彼らを我々の同盟者と呼ぶことができるだろうか? それはできない。彼らのなかには愛国的な人もいるが、彼らを十把一絡げにしてはいけない。クルド人には、シリアのほかの社会集団と同じようにさまざまな潮流がある。彼らはさまざまな政党に属し、左派、右派もある。部族もある…。つまりクルド人を一つの集団と捉えること自体が客観的ではないのだ」。
「しかし、我々はクルド人をはじめとするすべての社会集団とともにある…。我々はダーイシュとの戦闘で一致団結しなければならないと述べた通りだ。ダーイシュ、ヌスラ戦線、そしてそれ以外のテロリストに対して勝利したうえで、我々は一部のクルド人の党派が求める要求を議論できるようになる…。こうしたことがシリアの国民統合、領土保全、テロとの戦い、シリア国民の多様性…、すなわち民族、宗派にかかる自由を踏まえているのであれば、我々はいかなる拒否権も行使しない」。
「我々が自分の国を守る時、我々は感謝を必要としていない。これは当然の義務だ…。もし既存の構造を変革したいのなら…、問題は大統領にも政府と関わるものではなく、憲法と関係している。憲法は大統領の所有物でも、政府の所有物でもない。憲法の所有者とは国民だ…。憲法を変更するには国民対話が必要だ…。この問題がシリアの統合、国民の自由、多様性に抵触しないのであれば、我々の国家にいかなる異議申しても生じない」。
「(ダーイシュに対する米国のシリア領内での空爆に関して、米国と調整がなされているかとの問いに関して)調整はなされていない。この答えが現実に即していないと思われることは分かっている…。今や我々は共通の敵…と戦っており、調整なしに、共通の標的に対して、同じ地域で攻撃を行っている。そして(米軍との)いかなる衝突も起きていない。奇妙に思えるだろうが、これが現実だ。シリア米両政府、両国軍の間にはいかなる調整も連絡もなされていない…。(調整を仲介する)第三者も存在しない…。(米軍による)攻撃が行われる前、イラクを通じて彼らは我々に(空爆を行うと)告知しただけだ」。
「いかなる人がシリアから出国しようと、それは祖国にとって大きな損失だ。その人がどのような立場に立ち、またどのような能力を持っているは関係ない…。欧州は今日、自らの罪が難民に資金を供与せず、そしておそらくはこれらの移民を規則的に受け入れてこなかったことにあり、その結果として、多くの難民が海を渡って来ざるを得なくなり、多くの難民が死んだ、というイメージを作ろうとしている…。我々も無実の人々が犠牲になったことを悲しく思っている。しかし、海に沈んだ犠牲者が、シリアで殺されている人々よりも尊いのだろうか? テロリストに斬首された無実の人々よりも尊いだろうか? 溺死した児童を悲しんでおきながら、シリア国内でテロリストによって殺された数千の児童、老人、女性、そして男性の死をどうして悼まないのか? こうした欧州のダブルスタンダードはもはや受け入れられない…。基準は一つだ。欧州はテロを支援してきたがゆえに責任がある。しかも未だにテロリストを支援し、彼らを「穏健な反体制派」などと呼んで、隠蔽している」。
「西側メディアは当初から…問題の原因は大統領がいるからだと報じている…。なぜか? それは、彼らがシリアのすべての問題が一人の人間にあるというイメージを作り出そうとしているからだ。そうすれば、多くの人が…、この人物が去れば、事態は良くなる…と考えるようになる」。
「大統領が去れば事態が良くなると彼らは言うが、これは実質的にどのような意味を持っているのか? あなたが大統領としてここにとどまる限り、我々はテロを支援し続ける、というのが西側の原則なのだ…。彼らはこの人物が去り、別の人物が自分たちの利益のために就くことを望んでいる…。しかし大統領というのはどのようにしてその地位に就くのか? それは国民、そして選挙を通じてだ。大統領が去る場合、国民を通じて去らねばならず、米国の決定、安保理の決定、ジュネーブ会議、ジュネーブ合意などを通じて去ってはならない。国民が彼を望めば、彼はとどまるだろう。国民が彼を拒めば、彼はただちに去らねばならない」。
AFP, September 16, 2015、AP, September 16, 2015、ARA News, September 16, 2015、Champress, September 16, 2015、al-Hayat, September 17, 2015、Iraqi News, September 16, 2015、Kull-na Shuraka’, September 16, 2015、al-Mada Press, September 16, 2015、Naharnet, September 16, 2015、NNA, September 16, 2015、Reuters, September 16, 2015、SANA, September 16, 2015、UPI, September 16, 2015などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.
ナハールネット(11月21日付…
イドリブ県では、テレグラムの「…