軍・治安部隊がサラーフッディーン地区に戦車を突入させ掃討作戦が最終段階に、イランの国家安全保障最高会議書記がイラクを電撃訪問しシリア情勢について協議(2012年8月8日)

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国内の暴力(アレッポ県)

各紙によると、アレッポ市では、軍・治安部隊がサラーフッディーン地区に戦車を突入させ、掃討作戦の最終段階に入った。

SANA, August 8, 2012

SANA(8月8日付)はサラーフッディーン地区が軍・治安部隊によって制圧されたと発表したが、反体制武装勢力側はこれを否定した。

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ダマスカスの治安筋は、AFP(8月8日付)に対して、「二正面から(サラーフッディーン)地区に軍が進軍し…、反体制武装勢力兵士が若干残ろうとも、その回復にさして時間はかからないだろう」と述べた。

同消息筋によると、総攻撃は早朝7時に始められ、激しい戦闘のち、軍はマルアブ街道とシャルイーヤ街道を制圧し、「激しい戦闘ののち、(反体制武装勢力が)完全崩壊したことに(軍も)驚いている…。(反体制武装勢力)に甚大な損害があった」という。

またサラーフッディーン地区のほかにも、サイフ・ダウラ地区が軍・治安部隊によって制圧された、という。

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SANA(8月8日付)は、「勇敢なる我らが武装部隊は今日、アレッポ市サラーフッディーン地区を完全制圧した」と報じた。

同通信社によると、同地区の戦闘で多数の戦闘員が死亡し、そのなかにはアラブ人、外国人などが含まれていた。

またサラーフッディーン地区でも、軍・治安部隊はサイフ・ダウラ地区、スッカリー地区、ナスル地区、マイサル地区、マサーキン・ハナーヌー地区、ナイラブ地区など、アレッポ市郊外のマーイル地方、フライターン市などで反体制武装勢力の残党追跡および掃討を行い、戦闘員多数を殺傷、甚大な被害を与えた、という。

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シリア・アラブ・テレビ(8月8日付)は、アレッポ市に対する軍・治安部隊の掃討作戦でバーブ・ハディード地区やバーブ・ナイラブ地区で反体制武装勢力の戦闘員7人が死亡した、と報じた。

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自由シリア軍のヌール・ハック大隊の司令官だというワースィル・アイユーブ大尉はAFP(8月8日付)に対して、反体制武装勢力が午後にサラーフッディーン地区を奪還し、軍・治安部隊はサラーフッディーン広場周辺しか制圧していないと述べた。

この「奪還」は、約700人の兵士からなる反体制武装勢力の援軍がスッカリー地区、ブスターン・カスル地区、シャッアール地区、マサーキン・ハナーヌー地区からサラーフッディーン地区に派遣されることで実現した、という。

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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバールアカイディー大佐もAFP(8月8日付)に対して、「攻撃は激しいが、政府は(サラーフッディーン)地区を制圧していない」と述べた。

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自由シリア軍シャフバーの楯大隊の司令官だというフサーム・アブー・ムハンマド大尉もAFP(8月8日付)に対して、7時間にわたる戦闘の末、サラーフッディーン地区を奪還した、と述べた。

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英国を拠点とする反体制組織のシリア人権監視団によると、サラーフッディーン地区での戦闘はこれまで「もっとも激しい」もので、それ以外にもマサーキン・ハナーヌー地区、バーブ街道地区、シャッアール地区、マイサルーン地区、サーフール地区などで激しい交戦があった。

同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表はAFP(8月8日付)に対して、軍・治安部隊が「サラーフッディーン地区を複数の方向から攻撃した」が、反体制勢力が「展開していなかった第15街道を制圧できただけだった」と語った。

また軍・治安部隊はサラーフッディーン地区を奪還しようとした反体制武装集団の激しい抵抗で甚大な被害を被ったという。

国内の暴力(その他の県)

ヒムス県では、SANA(8月8日付)によると、タッルカラフ地方で、レバノン領内から潜入を試みる反体制武装勢力を国境警備隊が撃退した。

またヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区、クサイル市郊外などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺害した、という。

一方、『クッルナー・シュラカー』(8月8日付)は、虐殺があったとSANA(8月7日付)が報じたヒムス市郊外のジャンダル・リゾートの所有者が、アサド政権に近いヒヤーン・アタースィー氏だと暴露した。

シリア政府の動き

SANA(8月8日付)は、ダマスカス県のラジオ・テレビ機構ビル前で、記者連盟の呼びかけで、メディアに対するテロに反対する集会が行われ、ジャーナリストやメディア機関労働者が参加したと報じた。

SANA, August 8, 2012

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ラタキア県では、SANA(8月8日付)によると、サルマー町で軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに突入し、戦闘員多数を殺害、逮捕、武器弾薬を押収した。

ヒジャーブ前首相の離反をめぐる動き

ヨルダンのサミーフ・マアーイタ情報問題担当国務大臣はAFP(8月8日付)に対して、「リヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相およびその家族が水曜日(8時)午前1時にヨルダン領内に入った」と述べ、前首相らの入国を初めて公式に認めた。

なお、ユーチューブ(8月7日付)やアラビーヤ(8月8日付)では、ヒジャーブ前首相らがヨルダンに密入国する映像が公開された。

http://www.youtube.com/watch?v=wEL3sjTje0Y
http://www.youtube.com/watch?v=h8k0_V3fjh0&feature=plcp

 

クルド民族主義勢力の動き

PKK系のクルド民族主義政党、民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首はロイター通信(8月9日付)に対して、「シリアのクルド人の問題はトルコとは無関係」の述べ、シリア国内における最近のクルド人の台頭をトルコが恐れる必要はない、と強調した。

ムスリム共同党首(カーミシュリー市)は、「我々の地域、都市を護ることは我々の権利だ。誰もこの権利を否定できない」と付言した。

反体制勢力の動き

シリア・トルクメン国民ブロックなる組織のユースフ・ムッラー議長は、アサド政権がトルクメン人に対して「革命」への参加を放棄すれば、トルクメン人に自治を与えるとの取引を持ちかけてきた、と語った。『クッルナー・シュラカー』(8月8日付)が伝えた。

Kull-na Shuraka’, August 8, 2012

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『ザマーン・ワスル』(8月8日付)は、イランのアーラム・チャンネルがアレッポ市サラーフッディーン地区での戦闘として報じた映像が、イドリブ県カフルナブル市の戦闘の映像だと暴露した。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、サウジアラビアのメッカで開催予定のイスラーム諸国会議機構首脳会議に自身を招待するべき、と『ハヤート』(8月9日付)に語った。

レバノンの動き

北部県アッカール郡にあるアクルーム村(スンナ派)とハウラーニー村(シーア派)の住民が衝突し、前者の村民1人が死亡、複数が負傷した。

衝突は、両村に隣接するシリアのヒムス県クサイル地方からシリア人数名がハウラーニー村に密入国しようとしたことに端を発していた、という。

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アレッポ県で拉致されたレバノン人巡礼者の親戚2人が同県アアザーズ地方で人質と面会し、LBC(8月8日付)がその様子を報じた。

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レバノン軍団のサミール・ジャアジャア代表はアラビーヤ(8月8日付)に対して、アサド政権は「生き残らないだろう。政権は確実に最後の時を迎えている」と述べるとともに、「ヒズブッラーは、シリアの体制が崩壊すれば、対話に対してより開放的になるだろう」との見解を示した。

諸外国の動き

イランのサイード・ジャリーリー国家安全保障最高会議書記はシリア、レバノン訪問後、イラクを電撃訪問し、ホシュヤール・ゼバリ外務大臣と会談した。

会談後にイラク外務省が発表した声明によると、両者は二国間関係、地域情勢、とりわけシリア情勢について協議し、シリア情勢については「暴力の激化と解決に向けた政治的展望の不在ゆえ、地域諸国全体にとって懸念すべき段階に達し…、周辺諸国に波及しようとしている」と認識を共有した。

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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、ダマスカス郊外県で拉致された「イラン人巡礼者のなかに、革命防衛隊、軍などの退職者が多数含まれていた」と述べた。

イラン学生通信(8月8日付)が伝えた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣と会談し、ダマスカス郊外県でのイラン人巡礼者拉致の責任がトルコにあるとしたファイルーズ・アバーディー・イラン参謀長の発言を非難、イラン側に「率直かつ友好的な姿勢」を求めるとともに、「こうした高官が発言前に何度も熟考することを期待する」と述べた。

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ヨルダンのアブドゥッラー国王はCBC(8月8日付)に対して、シリア国内の混乱激化の結果、アサド大統領が「シリア全土を支配できなくなれば、「アラウィー派ポケット」の建設を次に計画するだろう」と推察し、「国の分裂をもたらし、数十年にわたるエスニック紛争の原因となるだろう」と懸念を表明した。

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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、クロアチア、マケドニア、アイスランド、セルビア、アルバニア、リヒテンシュタイン、ノルウェー、モルドバ、グルジアがEUの制裁に同調し、武器やその他禁止されている機器のシリア国内への持ち込みが疑わわれる航空機や船舶の臨検調査を決定したことに歓迎の意を示した。

AFP, August 8, 2012、Akhbar al-Sharq, August 8, 2012、Alarabia.net, August 8, 2012、al-Hayat, August 9, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 8, 2012、LBC, August 8, 2012、Naharnet.com,
August 8, 2012、Reuters, August 8, 2012、SANA, August 8, 2012、UPI, August
8, 2012、Zaman al-Wasl, August 8, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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