アサド大統領がオーストラリアのSBSのインタビューに応じる「私が大統領に望むのは、テロリストと外国の干渉から国を救うことだ。それ以外の問題はシリア国民の審判に委ねたい」(2016年7月1日)

オーストラリアのSBSテレビ(http://www.sbs.com.au/news/article/2016/07/01/exclusive-sbs-speaks-syrian-president-bashar-al-assad)は、アサド大統領とのインタビューを放映した。

インタビューは、SANA(7月1日付)で英語全文(http://sana.sy/en/?p=81447)およびアラビア語訳文(http://www.sana.sy/?p=399968)が配信され、また大統領府がYoutube(https://youtu.be/gq3SOUPyfng)を通じて映像を公開した。

インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, July 1, 2016

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「(シリアでの紛争の)終わりは見えているし、その解決策は非常に明らかだ。それは簡単だが不可能だ。どのようにシリア人どうしが政治プロセスについて対話するのかは…簡単なことだが、同時にシリアでテロ、そしてテロリストと戦わねばならない。テロリストと戦わずして、いかなる真の解決もない。西側であれ、トルコ、サウジアラビア、カタールといった地域諸国であれ、テロリストを支援している国があらゆるテロ支援を止めなければ、それは不可能だ」。

「(ラッカ制圧は)レースではない。ラッカはアレッポ、ダマスカスなどと同じく重要だ。テロ組織の危険とは彼らが占拠している土地に限られるものではない。なぜなら伝統的な戦争ではないからだ…。洗脳がもっとも危険なのだ。ラッカに至ることは軍事的には難しくはなし、時間の問題だと言いたい…。問題なのは、戦争について話す時、相手が何をするかということだ。これはトルコ、とりわけ(レジェップ・タイイップ・)エルドアンがテロ組織を支援していることと関連している。これは当初から起こっていることだ…。トルコのテロ支援を考慮せず答えることは、現実離れした叫びになってしまう」。

「ヒズブッラーはシリア軍を支援してくれている。シリア軍とは敵対していない…。シリア軍とヒズブッラーはロシア空軍の支援を受け、ダーイシュ(イスラーム国)であれ、シャームの民のヌスラ戦線であれ、それ以外のアル=カーイダとつながりのある組織であれ、あらゆるテロ組織と戦っている」。

「機関銃などの武器を持って、人々にテロを行い、民間人を攻撃すれば…、テロリストだ。反体制派について話す場合、シリアの反体制派について話すべきだ。サウジアラビアなどといった国のプロキシとして活動する代理人のような反体制派について話すべきでない。シリアの反体制派とはシリアの草の根とつながっていなければならない」。

「停戦は今も有効だが、我々が忘れてはならないのは、テロ組織がこの合意を日々破っていることだ。同時に、我々は合意に従い、政府軍へのテロリストの攻撃が行われたときは、いつでも報復する権利を持っている」。

「(シリアの紛争は)さまざまなものが合わさって起きた。改革が必要だとしてデモを行う者もいた。我々はこのことは否定し得ない。「みながテロリストだった」、「みなが傭兵だった」などとは言うことはできない。しかしデモ参加者の大多数はカタールからカネを受け取り、最初はデモを行い、その後は武器をもって反乱した…。(ダルアー市で子供が拘束され、暴行を受けたという)話は作り話で、そのような事件は起きていない」。

「我々は要求されたすべての改革を、5年前に危機が発生してから実施した…。我々は憲法も変えた。だが、何も変わらなかった。つまり、改革するかどうかが(危機の)原因だったのではない。カタールから資金が持たされたことが問題なのだ」。

「一部の閣僚は、サウジアラビア、フランスなどから離反するよう頼まれ、離反した…。彼らは現在、シリア人ではなく、これらの国に帰属するいわゆる反体制派に加わっている。彼らには何の価値もない。我々は彼らのことをまったく気に留めていない」。

「実際のところ、和平協議はまだ始まっていないし、シリア人どうしの対話はまだ行われていない。なぜなら我々は仲介者、すなわち(スタファン・)デミストゥラ氏と協議しているからだ」。

「(ロシアとイランがアサド大統領を支援しているという見方は)西側の誤解、そしておそらくはプロパガンダだ…。ロシアとイランがシリアを守ろうとするとき、これらの国は安定、すなわち彼らの国の安定を守ろうとしている。これらの国はそれぞれの国益を守ろうとしている」。

「(米国と対話をしているか、との問いに対して)まったくしていない。しかし、間接的にはしている。さまざまなチャンネルを通じて。しかし彼らがそれを否定するのであれば、我々もそれを否定しよう。しかし、実際のところ、対話は行われている…。ビジネス間が世界中を旅し、米国や欧州の高官と会っている…。彼らはメッセージを伝えようとしている。しかし真摯な取り組みはない。なぜなら米政権はシリアの問題解決に真剣ではないからだ」。

「米国の現政権と前政権の違いは、(ジョージ・W・)ブッシュが軍を派遣したのに対して、現政権は傭兵を送り、サウジアラビア、トルコ、カタールがしていることに目をつぶっているという違いだ…。つまり同じ政策だ…。米政権は1950年代から問題を作り出すが、決して解決しないということでおなじみだ」。

「我々は米国との間に問題を抱えてはいない。彼らは敵ではない…。我々の間には意見の相違があるだけだ…。我々は米国と協力してきたし、協力には反対しない。しかしここで言う協力とは、相互利益について話し合い、議論し、行動することを意味しており、我々の国益を犠牲にして彼らの国益を追求することではない」。

「(英国での国民投票でEU離脱が決してことに関して)この問題に立ち入ることができるとは思っていない。これは英国の問題で、私は英国人でもなければ、欧州人でもない…。しかし、これが我々にとって含意しているのは、私にシリアの危機にどう対処するかでアドバイスするとして、「アサドは去るべきだ」…と言ってきた英国の高官が、現実から乖離していたということだ。彼らが現実と乖離していなかったら、このような国民投票を行うことはなかっただろう。しかし、私はこれが…「二流政治家」への国民の反乱だと考えている。英国民には自分の国を運営する国政術を持つ優れた政治家が必要なのだ。もし別の政権が表れ、難民や治安に関する問題が我々の地域(中東)の問題と関係していることを理解すれば、より前向きな影響をもたらすような異なった政策が行われるだろう」。

「我々はシリアでテロと戦おうとするあらゆる努力を歓迎している。だが、この努力とは何よりもまず、本物でなければならない…。シリア北部では60カ国(からなる有志連合)はダーイシュの拡大を阻止できなかった。ロシア軍の支援が始まって、ようやくダーイシュの拡大は止まった…。またシリアの正統な政府を通じて努力がなされねばならない…。我々は政党な政府であり、主権国家だ」。

「西側は総じてダブルスタンダードだ。彼らは政治的我々を攻撃する一方で、我々のもとに高官、とりわけ治安関係の高官を派遣し、テーブルの下で我々と取引している。そのなかにはあなたの国(オーストラリア)の政府もいる…。彼らは米国を困らせたくないのだ。ほとんどの西側の高官は、米国が言って欲しいことを繰り返しているだけだ。これが現実だ…。彼らは我々の現実とは乖離している。なぜなら、私はテロリストと戦っている。我が軍、我が政府はテロリストと戦っている…。もしテロと戦うことをと殺と呼ぶのなら話は別だが」。

「シリアを離れたほとんどの難民はシリアに戻りたいと考えている。彼らが新たな国、つまり新たな祖国に移ることを支援する国は、人道的な行為を行っているとして歓迎されるべきだ。しかし、より人道的で、廉価なことがある。それは彼らが自分の国にとどまるのを支援することだ。シリアの安定に向け支援することで彼らが帰国することを支援することだ…。彼らは、政府を転覆させるためでかにシリアのテロリストを支援するサウジアラビアや英仏といった国々に、西側諸国政府が反対の立場をとるという決定を下して欲しいと考えている」。

「私は他のシリア人と同じシリア人だ。シリア人のどんな悲劇に対しても人一倍同情をしている…。しかし、私は公人でもあり、たんなる一人の人間ではない…。公人として、こうした感情を持った時にまず問われるべきは、他のシリア人を同様の苦しみから守るために何をするかだ」。

「我々はまず、シリアがかつてのように安定するのを目にしたい…。これが実現できて、初めて次の望みが出てくる。これなくしては何もできない。つまりこれが実現すれば、殺戮のなかで暮らしてきた世代にどのように対処するのかといった問いも出てくる。さらにシリア復興のために難民として去ってしまった人々をどのように帰国させるかという問題もある。

「私が望んでいるのは、この職(大統領職)に就く人がテロリストと外国の干渉から国を救う者であるということだ…。それ以外の問題はシリア国民の審判に委ねたい。これが私の唯一の望みだ」。


AFP, July 1, 2016、AP, July 1, 2016、ARA News, July 1, 2016、Champress, July 1, 2016、al-Hayat, July 2, 2016、Iraqi News, July 1, 2016、Kull-na Shuraka’, July 1, 2016、al-Mada Press, July 1, 2016、Naharnet, July 1, 2016、NNA, July 1, 2016、Reuters, July 1, 2016、SANA, July 1, 2016、SBS TV, July 1, 2016、UPI, July 1, 2016などをもとに作成。

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