ダマスカス県マイダーン地区で激しい交戦が継続し政府軍はヘリコプターを投入、英外相がヨルダンを訪問し「国連憲章第7章に基づく安保理決議」の必要性を強調(2012年7月17日)

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ダマスカス県内での暴力(シリア政府側の発表)

SANA(7月17日付)は公式筋の話として、ダマスカス県内での治安維持部隊と反体制武装集団(武装テロ集団)の交戦に関して、以下の通り報じた。

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治安維持部隊がナフル・イーシャ地区内の道路を封鎖し発砲を続けてきた反体制武装集団と交戦、排除した。

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マイダーン地区では、反体制武装集団がマイダーン・コルニーシュ近くの交差点で車爆弾を爆発させ、2人が負傷、周辺の商店、車が損害を被った。

同地区では、反体制武装集団が市民を人間の盾として犯罪行為を行ったが、軍が掃討に成功し、砲撃・銃撃から避難していた住民は帰宅した。

同地区の住民によると、反体制武装集団が市民に無差別に発砲する一方、軍は市民の避難に尽力し、住民の支援のもと反体制武装集団の排除を行った、という。

マイダーン地区では治安維持部隊が反体制武装集団の残党の追跡を続けている、という。

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マイサート地区で救急車両に発砲した反体制武装集団3人を治安維持部隊が追跡、2人を逮捕した。救急車両への発砲により、運転手と助手が負傷した。

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バーブ・サリージャ地区では、市民や商店に無差別発砲を行った反体制武装集団全員を治安維持部隊が射殺した。

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バルザ区では、反体制武装集団が出版公社ビルをRPG弾などで攻撃し、出版・印刷関連の機器などが破壊された。

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カーブーン区では、反体制武装集団が第3カーブーン発電所をRPG弾などで攻撃、これにより、変電機3台が破壊された。

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シリアの治安筋によると、軍・治安部隊がカーブーン区、マイダーン地区での掃討作戦を開始し、テロリスト33人を殺害、15人を負傷させ、145人を逮捕した。

ダマスカス県内での暴力(反体制側の発表・報道)

ダマスカス県内マイダーン地区などで、反体制武装集団による「ダマスカス火山、シリア地震」作戦が継続され、軍・治安部隊との交戦が続けられたものと思われるが、明確な戦果があがったとの発表はなかった。

また戦闘が行われたとされる地区はそのいずれもが、過去数ヶ月にわたって反体制武装集団が拠点とし、治安維持部隊と散発的に戦闘を繰り返してきた地域であり、反体制武装集団の作戦は実質的な戦闘というよりは、プロパガンダ的色彩が強かったと言える。

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『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、ダマスカス県内の車・人通りをまばらで、省庁の職員もそのほとんどが欠勤するか、早退したと報じた。

また『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、ダマスカス県内の消息筋の話として、治安部隊がタクシーで逃走する反体制武装集団を追跡、逮捕したと伝えた。

同消息筋によると、タクシーは、ヒジャーズ地区からジスル・ヴィクトリアを経て、サブウ・バフラート広場に逃走し、その間、治安部隊と銃撃戦を繰り広げ、最後は反体制武装集団の弾薬がつき、通行人らの前で取り押さえられたという。

同報道は、この逮捕劇が政権側の自作自演で、同日にサブウ・バフラート広場で予定されていたアサド政権支持のデモを中止とするための口実だった、と断じているが、真偽は定かでない。

なおAFP(7月17日付)などによると、サブウ・バフラート広場、ハミーディーヤ地区、ナスル通り、アッバースィーイーン広場などでも銃声が聞こえたという。

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『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、大統領府内の軍関連筋の話として、アサド大統領がダマスカス県内の治安維持任務の全権を共和国護衛隊に委ねたと報じた。

この措置は、ダマスカス県内での軍・治安部隊の離反を回避するためだという。

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『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)ともに、マイダーン地区での戦闘で、ダマスカス警察のイーサー・ドゥーバー副所長が重傷を負い、死亡した。

また同行していた警察幹部1人も死亡した。

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シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘が続くマイダーン地区に軍・治安部隊の増援部隊が入る一方、軍のヘリコプターがバルザ区に対して攻撃を加えた。

カーブーン区での戦闘では12人が死亡、カダム区での戦闘では軍・治安部隊の兵士2人が死亡した。またナフル・イーシャでの戦闘では1人、サイイディー・ミクダード地区でも1人が死亡した。

軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘はこのほか、カフルスーサ区、ジャウバル区、タダームン区、アサーリー地区、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市でも続いた、という。

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自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・タキーッディーン大佐は、AFP(7月17日付)に、カーブーン区で軍のヘリコプターを撃墜したと語った。

これを受け、反体制活動家が撃墜されたヘリコプターの写真を公開したが、タルトゥース・ニュース・ネットワーク(7月17日付)によると、使用された写真は2012年5月24日にアフガニスタン西部で墜落したNATOのヘリコプターの写真だった。

その他の国内での暴力(シリア政府側発表)

ダマスカス郊外県では、SANA(7月17日付)によると、ヤブルード市で反体制武装集団の爆弾製造所が爆発し、テロリスト8人が死亡した。

SANA, July 17, 2012

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ダルアー県では、SANA(7月17日付)によると、ヒバブ市の交通警察が反体制武装集団と交戦し、テロリスト2人を負傷させた。

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アレッポ県では、SANA(7月17日付)によると、ビスラートゥーン市、バヤーヌーン町、アアザーズ市で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリストに甚大な被害を与えた。

またアレッポ市のバーブ・ナスル地区の喫茶店で爆発があった。

治安維持部隊は爆発の直後容疑者を逮捕した。

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ハマー県では、SANA(7月17日付)によると、ハマー市のハミーディーヤ地区、ハーディル地区にある反体制武装集団のアジトに治安維持部隊が突入し、甚大な被害を与え、多数のテロリストを逮捕、大量の武器弾薬を押収した。

SANA, July 17, 2012

その他の国内での暴力(反体制側の発表)

自由シリア軍広報局によると、ダマスカス郊外県のスバイナ、ズィヤービーヤの両検問所を「使徒末裔大隊」を名のる新たな反体制武装組織が攻撃し、軍・治安部隊兵士8人を捕虜にした。

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AFP(7月17日付)は、トゥライムサ村での虐殺疑惑に関して、地元の指導者だというアブー・ウマルなる人物の言葉を引用し、「アサドの軍はアラウィー派居住地区の縁に位置する町々を15日前から砲撃している…。トゥリームサはアラウィー派に囲まれている。これが(虐殺の)理由だ」と報じた。

シリア政府の動き

リヤード・ファリード・ヒジャーブ内閣が定例閣議を開き、新内閣の施政方針について審議した。

タイスィール・ズウビー内閣事務局長によると、施政方針では、祖国と国民の安全の確保、内外の脅威への抵抗を通じた安定の確保、危機の解消をめざすことが改めて確認される、という。

またすべての国民に武器の放棄と国民和解のための政治的プロセスへの参加を呼びかけるという。

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『クッルナー・シュラカー』(7月17日付)は、バアス党消息筋の話として、ドゥーマー市とハラスター市の避難民のためにアドラー市内の労働総同盟の集団住居(800戸)が提供されたと報じた。

またアレッポ市でも住宅公社の住居(独身向、1,800戸)が避難民のために提供されたという。

反体制勢力の動き

離反したナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使はBBC(7月17日付)のインタビューで、「シリア国民がさらにバッシャール・アサド体制に圧力をかければ、政権はこのような兵器を使用するだろう」と述べ、弾圧に化学兵器が用いられる可能性を示唆するとともに、「未確認だが、ヒムスで科学兵器が使用されたとの情報がある」と述べた。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、ダマスカス県での反体制武装集団による活動を支援するため、全国民に対してゼネストや市民的不服従に訴えるよう呼びかけた。

同胞団は16日からイスタンブールで大会を開催していた。

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マナーフ・トゥラース准将が離反後初の声明を出し、自身がパリに避難したことを明らかにするとともに、「建設的な移行期間を経て危機が解消する」ことを望むとの意思を示した。

また「私は、いかなる野望も持たない普通のシリア人として、国民としての義務を果たし、でき得る限りのことを行う準備がある」と述べた。

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「民主的文民国家のためのシリア人外交官連合」なる組織が声明を出し、国内での暴力・殺戮の継続に反対の意思を示すとともに、平和的手段による体制転換を通じた民主的文民国家の建設を呼びかけた。

同組織はまた、外国の軍事介入、ロシア・イランによるアサド政権支持の姿勢にも異議を唱えた。

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自由シリア軍構内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐は、AFP(7月17日付)に対して「ダマスカス解放の戦いが始まった…。ダマスカス全土を制圧する明確な計画がある…。勝利は近い」と語るとともに、「多くのサプライズ」を約束した。

レバノンの動き

ジャズィーラ(7月17日付)は、5月にアレッポ県で誘拐されたレバノン人巡礼者11人の最新の映像を放映した。

Naharnet, July 17, 2012

同映像において、誘拐犯は、レバノン・イスラーム教ウラマー委員会とカタールの監督のもと、11人のうちの2人を近く釈放することを明らかにした。

また、誘拐犯は、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長への謝罪を求めた声明が自分たちの声明ではないと否定した。

諸外国の動き

イスラエル国防軍のアヴィヴ・コチャヴィ少将はクネセトで、アサド政権がゴラン高原に展開している軍部隊を紛争地域に移動させた、と証言した。

コチャヴィ少将はまた「アサドがイスラエルとの戦争を最後の手段とする可能性は少ない」述べる一方、アサド政権が弱体化した場合、「シリアでジハード運動が台頭することで…、ゴラン高原がイスラエルに敵対する活動の拠点となる可能性がある」と指摘し、「シリアへのアル=カーイダやジハード主義者が断続的に流入している」への危機感を表明した。

さらに「ヒズブッラーとイランがアサド政権後に備えている」としたうえで、「テロ集団の手に近代的・非伝統的な兵器がわたる」ことを監視する必要があると主張した。

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コフィ・アナン特使はモスクワでウラジーミル・プーチン大統領と会談した。

プーチン大統領は、「シリアの危機を正常化するためのアナン特使の努力を政治的手段を通じて支援するため、でき得るすべてのことをするだろう」と述べた。

一方、アナン特使は、シリア情勢を「悲劇的」と評し、「重要なターニング・ポイント」に達しているとの見方を示した。

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潘基文国連事務総長は中国を訪問し、胡锦涛国家主席ら中国首脳と会談した。

会談ではシリア情勢が主に議論されたと思われる。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣がヨルダンを訪問した。

ナースィル・ジャウダト外務大臣との共同記者会見でヘイグ外務大臣は、「求められているのは国連憲章第7章に基づく安保理決議」と強調した。

またヘイグ外務大臣はジャウダト外務大臣とともに、対シリア国境にあるラムサー市のシリア人避難民キャンプを慰問した。

キャンプを訪問したヘイグ外務大臣に対して、シリア人避難民たちは「あなた方から水も食糧も欲しくない。我々に施しをしてくれる人など要らない。我々がして欲しいのはバッシャールを終わらせることだ」と述べた、という。

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米国務省のパトリック・ベントレル副報道官は記者団に対して、「我々は最悪のシナリオを恐れている。それ(シリアの紛争)が同国国境の外に及び、宗派間の戦闘に至ることを。我々は多いに懸念している」と述べた。

一方、米国防総省のリトル報道官は、「シリアはもちろん、米国の安全保障にとって最優先事項だ」と述べ、レオン・パネッタ攻防長官が米空母ジョン・ステニスを予定より4ヵ月早く地中海に展開させることに合意したことを明らかにした。

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国連事務局人道問題調整事務所のジョン・キング所長は、シリア政府がシリア国内で人道支援を必要としている85万人への支援到達を「妨害する政策」をとっている、と批判した。

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イラクのアリー・ダッバーグ内閣報道官は、シリアに居住するイラク人(そのほとんどが避難民)に対して、退避勧告を出し、イラクへの帰国を呼びかけた。

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ロイター通信(7月18日付)は、トルコ消息筋の話として、シリア1,280人がトルコのハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)に避難したと報じた。

避難民のなかにはシリア軍の准将1人、士官多数、そしてその家族も含まれている、という。

なおこの新たな流入により、トルコ領内のシリア人避難民の総数は42,680人に達した、という。

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AFP(7月17日付)は、カザフスタンのアルマトイにあるシリア領事館が、「シリアの紛争を作り出し、それと関係のある分子」によって襲撃され、火災が発生し、2、3階部分が焼失した、と報じた。

AFP, July 17, 2012、Akhbar al-Sharq, July 17, 2012、Aljazeera.net, July 17, 2012、Facebook, July 17, 2012、al-Hayat, July 18, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 17, 2012、Naharnet.com, July 17, 2012、Reuters, July 17, 2012、SANA, July 17, 2012などをもとに作成。

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