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国連安保理でのシリア情勢をめぐる審議と時を一にするかたちで、反体制勢力がプロパガンダを活発化させ、ハマー県トゥライムサ村で12日に軍・治安部隊(そしてシャッビーハ)が多数の市民を虐殺した主張、西側メディアが大々的に報じた。
この手の虐殺報道は、西側諸国が国連などでアサド政権への圧力強化を試みるのと並行して、5月末のハウラでの虐殺騒動以来繰り返されている。
反体制活動家は虐殺の犠牲者とされる映像を事件発生直後にYoutubeにアップする一方、フェイスブックに専用のページを作成する用意周到ぶりを見せた。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.202538969875633.42146.168224839973713&type=1
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シリア国民評議会によると、トゥライムサ村に軍・治安部隊が突入し、少なくとも22人を殺害、55件の家屋を破壊したという。
またシリア人権監視団によると、軍・治安部隊はトゥライムサ村制圧のため戦車やヘリコプターで砲撃を加え、その後市内に突入した、という。
一方、シリア情報センターによると死者数は227人にのぼる、という。
ハマー県内で反体制活動をしているというシリア革命総合委員会メンバーのバースィル・ダルウィーシュはアラビーヤ(7月13日付)に対して、犠牲者のほとんどはナイフで首を切られており、焼け焦げた遺体数十体がアースィー川に遺棄されていた、という。
ハマー革命指導評議会なる組織によると、トゥライムサ村は軍・治安部隊による大規模な砲撃に曝された後、親政府の民兵(シャッビーハ)が進入し、220人以上の民間人を集団虐殺した、という。
トゥライムサ村出身だという反体制活動家のファーディー・サーミフ氏はロイター通信(7月13日付)に対して、「近隣の村のアラウィー派の民兵がトゥライムサ村に進入した」と証言した。
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しかしシリア人権監視団はその後、犠牲者のなかに反体制武装集団の戦闘員数十人が含まれていたと発表し、軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘が行われていたことを事実上認めた。
殺害された反体制武装集団戦闘員のなかにはイブラーヒーム・ズアイト・タルカーウィー少尉など離反した士官も含まれているという。
また反体制活動家だというジャアファル氏はSNN(7月13日付)に対して、「民間人の犠牲者の数は7人だけで…、それ以外の犠牲者は自由シリア軍だ」と述べた。
ジャアファル氏によると、「自由シリア軍がハマー郊外を進軍中の軍を襲撃した…。これを受け、軍は報復としてトゥライムサ村に結集していた自由シリア軍を近隣のアラウィー派の村の支援のもとに攻撃した。自由シリア軍は1時間程度抵抗したが、軍がトゥライムサ村を制圧し、自由シリア軍の兵士を殺害した」。
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アブー・ガーズィーを名のる反体制活動家はAFP(7月13日付)に対して、トゥライムサ村の住民は殺されるか避難して、市内には残っていない、と述べたが、別の活動家は「軍は約30輌の車輌で街を包囲し、誰も逃げられない」と述べた。
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一方、SANA(7月13日付)は「血塗られたメディアが武装テロ集団とともに…シリアおよびシリア国民に敵対する世論を醸成し、安保理会合に合わせて外部介入を助長しようとしている」との非難記事を掲載した。
その後、軍消息筋の話として、軍・治安部隊が12日早朝、トゥライムサ村の市民の要請を受け、反体制武装集団掃討のための作戦を実行、その司令部やアジトを制圧、テロリスト多数を殺害、逮捕、武器弾薬を押収した、と報じた。
またシリア・アラブ・テレビ(7月13日付)によると、トゥライムサ村での戦闘で、反体制武装集団は市民に無差別発砲した、という。
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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長はジャズィーラ(7月12日付)に対して、「トゥライムサ村での虐殺は安保理やアラブ連盟に対する辱めるものだ…。この虐殺は国連憲章第7章に基づく明確な決議を求めるものである」と述べた。
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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、トゥライムサ村での虐殺疑惑を強く非難し、コフィ・アナン特使、ロシア、イラン、そして国内での弾圧に沈黙を続けるすべての者もその責任の一端を担って然るべきだと主張した。
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シリア人権委員会は声明を出し、トゥライムサ村での虐殺疑惑を強く非難し、国際社会に対してアサド政権による弾圧継続の時間的猶予を与えないよう求めた。
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コフィ・アナン特使はトゥライムサ村での虐殺疑惑に関する報道に関して「衝撃と恐怖」を感じたとしたうえで、「暴力行為やこうした残虐行為を停止させねばならない」と述べた。
また国連安全保障理事会に宛てた書簡で、同氏の調停案を支持した安保理決議に、アサド政権側が「違反している」と明言、「(違反行為には)深刻な結果が伴うとのメッセージを送るべきだ」と述べた。
一方、UNSMISは、トゥライムサ村での虐殺疑惑に関して、「ハマー県は依然として混乱しており、事態を予測することは困難だ」としたうえで、トゥライムサ村まで約6キロの地点まで接近した団員の情報に基づき、「ハマー県北部の人口密集地域を空軍が攻撃目標としており、トゥライムサ村での作戦もその一環だったものと見られる」との報告を行った。
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米ホワイトハウス報道官は、トゥライムサ村での虐殺疑惑を新たな「残虐行為」と非難した。
またスーザン・ライス米国連代表大使は、トゥライムサ村での「虐殺に関する報告は悪夢のようだ」と述べた上で、「安保理がシリア問題に対して必要な措置を報じる必要が生じている」と述べた。
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フランス外務省のベルナール・ヴァレロ報道官は記者会見で、トゥライムサ村での虐殺疑惑に関して、「安保理の制裁による脅迫を通じて、強い意思を示さねばならない」としたうえで、シリアへの強硬な姿勢をとることに「安保理が責任を負うときが来た。フランスは責任を負うだろう」と述べた。
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GCCのアブドゥッラティーフ・ズィヤーニー事務局長は声明を出し、トゥライムサ村での虐殺疑惑を非難、国連憲章第7章に基づく迅速且つ断固たる決議が必要だと主張した。
SANA(7月13日付)によると、ダマスカス県マッザ区(オートストラード・マッザ、イラン大使館近く)で駐車中の車が爆発した。死傷者はいなかった。
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ダイル・ザウル県では、SANA(7月13日付)によると、治安維持部隊がダイル・ザウル市で反体制武装集団と交戦し、テロリストに甚大の被害を与えた。
この際、治安維持部隊兵士1人が殺害された。
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ヒムス県では、SANA(7月13日付)によると、クサイル市郊外で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリストに甚大な被害を与えた。
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アレッポ県では、SANA(7月13日付)によると、ICARDA近くで爆発物を運んでいた反体制武装集団の車が爆発し、テロリスト2人が死亡した。
またダール・イッザ市では治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、テロリストに甚大な被害を与えた。
シリアを脱走したマナーフ・トゥラース准将の兄でビジネスマンのフィラース・トゥラース氏(ドバイ在住)は『シャルク・アウサト』(7月13日付)に対して、「自由シリア軍ファールーク大隊に人道支援を行っている。この支援は武器供与とは無関係だ」と述べた。
また1ヵ月半前からファールーク大隊の司令官で甥のアブドゥッラッザーク・トゥラース氏と連絡を取り合っており、トゥラース家の士官45人が離反したことを明らかにした。
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自由シリア軍国内合同司令部は声明を出し、脱走したマナーフ・トゥラース准将と父でパリ在住のムスタファー・トゥラース元国防大臣に対して、「シリア国民に対して、自分たちがどこにいたのか、(政権において)どのような役割を果たしてきたのか、革命当初から出国まで何をしていたのかを説明するべき」と述べ、両氏が政治的に沈黙していることを非難した。
またナウワーフ・シャイフ・ファーリス駐イラク・シリア大使のカタールへの亡命については、「正しい方向へのステップとみなす」と評価した。
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地元調整諸委員会は、ダマスカス県(バーブ・サリージャ、カダム、マッザ、カーブーン、マイダーン、カフルスーサ、アサーリー)、アレッポ市、ダルアー県、イドリブ県、ダイル・ザウル県各地で「シリアとイランの召使い、アナン打倒の金曜日」と銘打って反体制デモが行われたと主張した。
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ダマスカス県では、『クッルナー・シュラカー』(7月13日付)によると、パレスチナ人が多く住むヤルムーク区の5カ所で金曜礼拝後に反体制デモが発生した。
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自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐は声明を出し、体制内の文民やシリア軍兵士に対して、「離反のための猶予期間を1ヵ月」与えると発表し、離反しない場合「直接の攻撃目標になるだろう」と脅迫した。
NNA(7月13日付)によると、レバノン軍がアッカール郡ワーディー・ハーリド地方の対シリア国境など北部県に兵力を増強し、監視活動を強化した。
またレバノンの軍事裁判所筋によると、シリア領内に武器弾薬を密輸しようとしてたシリア人1人とレバノン人7人(ベカーア県バアルベック郡アルサール地方出身者)が逮捕された。
UNSMISのロバート・ムード司令官はダマスカスで記者会見を開き、ダイル・ザウル県で当事者間の対話促進のための仲介措置を行い、暴力のレベルの軽減や信頼醸成を支援している、と述べた。
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イエズス会の修道士のパウロ・ダッローリオ(Paolo Dall’Oglio)氏はAKI(7月13日付)に対して、「多くのシリア国民は、シリアでのアラブの春の最初の数ヵ月間は、バッシャール・アサドが国を民主主義に導き、影の指導者たちの闇基金によって運営された治安機関の手にある権力から脱却するのに主導的役割を果すと思っていた」と述べた。
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『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月13日付)は、シリア政府が武器庫に保管していた化学兵器の一部を移動させたと報じた。
AFP, July 13, 2012、Akhbar al-Sharq, July 13, 2012、Alarabia.net, July 12, 2012、Aljazeera.net, July 12, 2012、al-Hayat, July 14, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 13, 2012, July 14, 2012、Naharnet.com,
July 13, 2012、NNA, July 13, 2012、Reuters, July 13, 2012、SANA, July 13,
2012、al-Sharq al-Awsat, July 13, 2012、The Wall Street Journal, July 13, 2012、Zaman al-Wasl, July 13, 2012などをもとに作成。
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ナハールネット(11月21日付…
イドリブ県では、テレグラムの「…