アサド大統領がロシアのテレビ局のインタビューに応じる「ダーイシュは米国が支援、ないしは黙認するなかタドムルに進攻した」、「我々はタドムルを解放する…。しかし、目下の最優先事項はアレッポ市だ」(2016年12月14日)

アサド大統領はロシアのテレビ局2社(ロシア24およびNTV)のインタビューに応じた。

インタビューはロシア語とアラビア語で通訳を解して行われ、SANAが全文(http://www.sana.sy/?p=480296)を掲載、大統領府が映像(https://youtu.be/uwqR2Fonl-4)を公開した。

インタビューが行われた日にちは不明だが、シリア軍が反体制武装集団支配下のアレッポ市南東部を事実上の解放が確定した後に実施されたと思われる。

SANA, December 14, 2016

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

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「アレッポ市について言うと、もちろん同市の解放は重要だ。だが、他の地域(アレッポ市に続いて解放がめざされる地域)について話す前に、アレッポ市を外敵から守らねばならない。つまり、アレッポ市周辺からテロリストを掃討しなければならない。現時点で、テロリストが籠城しているアレッポ市内の地域は数平方キロになっているが、アレッポ市外にいるテロリストは依然として、ロケット弾や迫撃砲で連日アレッポ市に対して砲撃を続けている…。つまり、アレッポ市解放で同市の解放が終わるのではなく、市外の安全を確保せねばならない。その後であれば、どの都市が続いても構わない。次にどこを解放するかは、テロリストの数、外国による兵站支援の度合いによって決まる。現在、アレッポとイドリブは、アレッポ市、その周辺、さらにはイドリブにヌスラ戦線(シャーム・ファトフ戦線)がいることで直接つながっている。しかし、最終的な答えは、同市(アレッポ市)を第一に解放してからでなければならなず、我々とロシア指導部が議論によって決する」。

「(戦闘)停止はない。戦闘停止は、テロリストがすぐにでも武器を棄てるか、退去する準備ができたと言ってくる地域でしか起こり得ない。交渉の間も、作戦が中断することはない。なぜなら、テロリストは信頼できないからだ…。彼らは再武装したり、武器兵站支援を受けるため、停戦を要求してきたからだ」。

「(投降した戦闘員が再び戦闘に加わらないという)保障はない…。しかし、我々は彼ら(投降者)の非常に多くが、日常生活に復帰し、またそれ以上の数の投降者がシリア軍とともに戦闘に参加していると言うことができる」。

「我々はタドムルの問題をモスルとだけ結びつけることはできない。なぜなら、ダーイシュ(イスラーム国)はシリア、つまりはラッカや北部にいる。そこでは米国の同盟国(有志連合)が2年もの間、ダーイシュを空爆してきたとされる。しかし、こうした言葉は正しくはない。ダーイシュはダイル・ザウルにもいるが、米軍は同盟国軍とともに、ダーイシュではなくシリア軍を空爆した。ダーイシュが多くの戦闘員や高性能兵器を投入して、数日前にタドムルに対して行った攻撃は、これまでにダーイシュが行った攻撃とは異なっていると考えている…。つまり、ダーイシュは複数の国から直接支援を受けたということであり、ダーイシュは単にモスルから転戦してきたのではないということだ。モスルやラッカに米軍が空爆を続けているというのに、どうやってモスルから重火器部隊がどのように転戦できるのか。実際には、戦闘員の多くはラッカ、ダイル・ザウルから、米国の直接支援を受けるなか、トルコ、カタール、サウジアラビアの直接支援を受けてつつ…米国が見過ごすなかで、転戦してきたのだ」。

「(ダーイシュによる)タドムルでの作戦の真の目的、そして同市への攻撃のタイミングはアレッポ市での戦闘と直接結びついている。ダーイシュはなぜ、その能力があったのに1ヶ月前にタドムルを攻撃しなかったのか? なぜ、ダーイシュは、アレッポ市に対する(シリア軍)の大規模な進攻が始まってから攻撃を始めたのか? 二つの目的があったからだ…・第1に、アレッポ市解放の価値を減じること…、第2に、より重要な目的として、シリア軍を複数の前線に分散させ、アレッポ市に現在展開するシリア軍の主力部隊をタドムル方面に撤退させることだ。現在、シリア軍とロシア軍の司令部レベルの会合でこの緊急事態にどう対処するかを議論している。結論から言うと、我々は前回同様タドムルを解放する…。しかし、現下の最優先事項はアレッポ市であることを承知するべきだ」。

「(バラク・オバマ米政権が最近になって、いわゆる「穏健な反体制派」への武器輸出を解禁したことに関して)米国は常に偽善的だ。だから解禁を宣言するまでもない…。だから、私はオバマ大統領が解禁を発表したのと、ダーイシュが(タドムルを)攻撃したことの時期やタイミングを結びつけて話したい。米国の武器はどこに行くのか? ヌスラ戦線なのか、ダーイシュなのか? この二つの組織は、名前は違うが、同じだ…。この問題はアレッポ市のシリア軍の進軍と結びつけていると考えている…。自らの計画が頓挫したこうした状況下で米国がとる方法というのは…、混乱を作り出し…、そのうえで混乱を利用して当事者を恫喝することだ…。武器輸出解禁は、そのタイミングにおいてこうした政策の一貫をなしている。さらに、別の側面もある。オバマ政権は今、終わろうとしているが、次期政権、すなわちドナルド・トランプ政権とロシアが接近することを懸念しており、おそらくはその障害となるような問題を作り出そうとしているのだ」。

「外国政権を打倒するための干渉は行わないとする…トランプ氏の発言は明白なもので…、それは良いことだ。だが、重要なのは、こうした手法をトランプ政権が続けるか、こうしたことを能力があるのかにかかっている…。我々は、トランプ氏に抵抗し、全力で圧力をかけようとする巨大なロビーが米国にあることを承知している…。彼はさまざまな分野で前言を撤回させられるか、国会やメディアでこうしたロビーに立ち向かうことになろう…・もしトランプ氏がこうした困難に対抗し、テロに対して実際に行動することができれば、彼は我々にとって本質的な同盟者になり、ロシアの本質的な同盟者にもなろう」。

「復興に関して、明白に言っておきたいのは、シリア国民はシリア、そしてその領土的一体性に異論を唱え、テロリストを支援してきたいかなる国のいかなる企業も受け入れないということだ…。優先されるのは、ロシア、中国、イランなど我々を直接支えてきてくれた友好国、あるいは中立の立場をとったとしても最低限シリアに敵対しなかった国だ」。

「(シリア難民の)帰国はわずかではあっても、既に始まっている。戦争が終われば、シリアから非難した大部分の人々が戻ると確信している」。

AFP, December 14, 2016、AP, December 14, 2016、ARA News, December 14, 2016、Champress, December 14, 2016、al-Hayat, December 15, 2016、Iraqi News, December 14, 2016、Kull-na Shuraka’, December 14, 2016、al-Mada Press, December 14, 2016、Naharnet, December 14, 2016、NNA, December 14, 2016、Reuters, December 14, 2016、SANA, December 14, 2016、UPI, December 14, 2016などをもとに作成。

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