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UNSMISのロバート・ムード司令官は、ヒムス県のハウラ地方(ヒムス市郊外)でUNSMISが子供32人を含む92人の遺体を確認し、検死から「戦車の砲撃が行われた」可能性が高いと述べた。
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UNSMISの訪問に先立って、シリア人権監視団は「ハウラ地方で虐殺が発生し、子供25人を含む90人以上が死亡した…。正規軍が金曜日(25日)朝から砲撃を始め、深夜過ぎの早い時間まで砲撃は続いた」と発表していた。
同監視団によると砲撃は、同地方南部のタッルドゥー市と西部のタイバ村で激しかったという。
なおシリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長はその後、AFP(5月26日付)に対して、死者数が114人にのぼると述べた。
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殺害された遺体は一カ所に集められ、反体制活動家らがユーチューブやストリーミング・テレビを通じて公開した。
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『ハヤート』(5月27日付)は、ハウラ地方の反体制活動家の話として、同地方がスンナ派の村々からなる一方、周囲をアラウィー派の村々に囲まれているとしたうえで、「彼ら(アラウィー派)が村々に進入し、殺戮行為を行った」と断じたと報じた。
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ハウラ地方の住民の一人はUPI(5月27日付)に対して、同地方に入ったUNSMISを住民が歓迎しておらず、「去るよう求めた」と述べた。
同住民によると、UNSMISが訪問する地域のほとんどはその後砲撃を受けている」という。
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これに対して、SANA(5月26日付)は、アル=カーイダがハウラ地方のシューマリーヤ村とタッルドゥー市で住民を虐殺したと報じた。
同通信社によると、武装テロ集団が25日夜にタッルドゥー市とシューマリーヤ村で家々を破壊し、彼らの犯罪活動を支援するメディアを通じて、軍がハウラ地方を砲撃したと見せかけているという。
また武装テロ集団は、タッルドゥー市の国立病院や治安維持警察本部を焼き撃ち、治安維持部隊との交戦で双方に多数の死傷者が出たという。
またシリア・アラブ・テレビ(5月26日付)も、コフィ・アナン特使の訪問を数日後に控えるなか、「アナン特使の停戦案を失敗させるために国民に対する反体制勢力の虐殺がエスカレートしている」と断じた。
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ダマスカスで活動する自由シリア軍は、ハサン・アフマド・ワフブ准将を捕捉、ユーチューブを通じて、同准将がハウラでの「虐殺」がアサド政権による犯行だと証言するビデオを発信した。
ワフブ准将は第24防空師団第96大隊司令官でアラウィー派だと証言している。
なお、自由シリア軍は3月17日にもドゥーマー市でナイーム・ハリール・アウダ准将(アラウィー派)を捕捉し、弾圧に関する取り調べ、証言を行わせたのち、シリア赤新月社に身柄を引き渡し、釈放している。
『ハヤート』(5月27日付)によると、イドリブ県、ダマスカス郊外県、ダルアー県、ハマー県、アレッポ県などでハウラ地方での虐殺に抗議するデモが発生した。
デモでは「アナンのイニシアチブを打倒しよう」、「アナンこそハウラ虐殺の責任者だ」といった横断幕などが掲げられた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市で、ハウラ地方での虐殺に抗議するため、ダマスカス・アレッポ街道を封鎖しようとしたデモ参加者に治安部隊が発砲し、1人が死亡した。
またアリーハー市では治安部隊の発砲で2人が死亡した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市郊外のブワイダ村などが軍・治安部隊の砲撃にさらされ、8人が死亡した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊が要撃を受け、兵士5人が死亡した。
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アレッポ県では、SANA(5月26日付)によると、アレッポ市のサアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)でアサド政権の改革支持、武装テロ集団の破壊行為拒否を訴えるデモが発生した。
自由シリア軍国内合同司令部は声明を出し、国連が民間人保護のために早急に対処しない限り、アナン特使の停戦案は遵守できない、と警鐘をならした。
声明で同指導部は「監視団がいるなかで…ハウラ地方などでの虐殺は…、アナン特使の停戦案の失敗を示すものであり、バッシャール・アサドと彼の悪党が力と暴力以外の言葉を理解していないことを認識させるものだ…。(国連安保理は)責任を追及するとともに、アナン特使の停戦案の失敗を宣言し、シリアとその国民を救済する迅速かつ断固たる措置を講じる」べきだと述べた。
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ヒムス市・郊外軍事評議会のサーミー・クルディー報道官は、AFP(5月26日付)に対して、自由シリア軍国内合同司令部の声明が国内外の軍事評議会の間の調整を経て発表されたことを明らかにした。
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また在外の自由シリア軍最高軍事評議会のムスタファー・シャイフ准将は戦闘員に向けて声明を出し、「アサドの軍、シャッビーハ、体制の象徴に対して組織的に軍事的打撃を与える」呼びかけた。
また「利用可能なすべての手段を駆使して、住宅地域に政府とその武装した私兵が入ることを阻止する」よう呼びかけた。
一方、「シリアの友連絡グループ」に対して、「アサドの軍と体制の象徴に対する空爆を行うため、安保理の枠外で軍事同盟をただちに結成するよう」求めた。
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シリア国民評議会は声明を出し、ハウラ地方での「残忍な虐殺」に対処するための緊急会合の開催を安保理に呼びかけ、「国連憲章第7章に依拠することも念頭においたかたちでシリア国民を保護するための必要な措置」をとることを求めた。
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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、ハウラ地方での「虐殺」に関して、アナン特使とUNSMISが「政府の犯罪を隠蔽することに荷担している」と非難した。
NNA(5月26日付)によると、レバノン人がシリア領内に金7キロを密輸しようとして、北部県アッカール郡の対シリア国境の町アリーダでレバノン税関当局に拘束された。
国連の潘基文事務総長とアナン特使は共同声明を出し、UNSMISが「遺体を検証し、住宅地に戦車や迫撃砲による砲撃が加えられたことが確認された」ことを明らかにし、「国際法と、人口密集地域での重火器の使用停止に対するシリア政府の目に余る違反であり…関係者と責任者は処罰を受けねばならない」と厳しく非難、シリア政府に人口密集地域での重火器の使用停止を改めて求めた。
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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、ハウラ地方での「残忍な虐殺」を厳しく非難すると発表し、民間人に対する体系的な犯罪・侵害の責任者の処罰が必要だと述べた。
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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、ハウラ地方での「虐殺」を厳しく非難し、「シリアの友連絡グループ」の会合を呼びかけるとともに、国際社会に対して「シリア国民への殺戮を停止させるためさらなる動員」を求めた。
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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、ハウラ地方での「虐殺」に対して国際社会が「協力な反応」を行う必要があると述べた。
AFP, May 26, 2012、Akhbar al-Sharq, May 26, 2012, May 28, 2012、al-Hayat, May 27, 2012、Kull-na Shuraka’, May 26, 2012、Naharnet.com, May 26, 2012、NNA, May 26, 2012、Reuters, May 26, 2012、SANA, May 26, 2012、UPI, May 26, 2012などをもとに作成。
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