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ダマスカス県南部のカッザーズ地区で午前8時(通勤通学時間帯)、自爆テロと思われる爆発が2件ほぼ同時に発生し、シリア内務省によると、民間人および軍人55人が死亡、372人が負傷した。
在外の反体制組織のシリア人権監視団は死者数が59人に達し、そのほとんどが治安要員だったと発表した。
爆発は同地区にある軍事情報局パレスチナ課前の街道で発生し、シリア内務省によると、1トン以上の爆発物を積んだ車2台が自爆し、現場には深さ1メートル、長さ5.5メートル、幅3.3メートルのくぼみと深さ2.5メートル、縦横8.5メートルのくぼみができ、周辺の建物や通行中の車100台以上が大破した。
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SANA(5月10日付)によると、ダルアー県ムライハ村とスワイダー県サマー村間の街道に武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、治安維持部隊兵士6人が殺害された。
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SANA(5月10日付)によると、ダイル・ザウル県でユーフラテス石油社の石油パイプラインが武装テロ集団によって破壊された。
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SANA(5月10日付)などによると、アレッポ県ライラムーン交差点で、治安維持部隊の車輌を標的とした爆弾テロがあり、治安維持部隊兵士1人が死亡、9人が負傷した。
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シリア人権監視団によると、イドリブ県ハーン・シャイフーン市、ヒムス県ヒムス市バーブ・フード地区、ダルアー市郊外で子供1人を含む3人が殺害され、ダマスカス郊外県ドゥマイル市などで治安部隊による大規模な逮捕・摘発が行われた。
シリア外務在外居住者省はダマスカスでの同時多発テロ発生を受け、国連安保理と事務総長宛てに書簡を提出し、「テロを実行・奨励する諸外国、当事者、メディアに対して適切な措置」を講じるよう求めた。
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『ハヤート』(5月11日付)によると、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣は、ダマスカスでの同時自爆テロの発生がアル=カーイダと武装テロ集団の犯行だと断じ、非難した。
シリア国民評議会のサミール・ナッシャール運営委員会メンバーはAFP(5月10日付)に対して、ダマスカスでのでの同時自爆テロが「UNSMISに危険だと警告し…、国際社会にはシリアに武装集団とアル=カーイダがいると主張する」ためにアサド政権が行った自作自演だと非難した。
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自由シリア軍事評議会のムスタファー・シャイフ議長は、ダマスカスでの同時自爆テロに関して、「このようなことを実行する能力も手段も持たない反体制勢力が行うことなどあり得ない」と述べ、アサド政権の関与を疑い、国連に対して事件を調査するための国際調査団の設置を呼びかけた。
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ダマスカス・郊外軍事評議会司令官ハーリド・ハッブーシュ大佐は声明を出し、ダマスカスでの同時自爆テロに関して、反体制勢力にはこの規模の攻撃を行う能力はない、と述べ、アサド政権が行った自作自演だと非難した。
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『ザマーン・ワスル』(5月10日付)は、フェイスブックの情報として、ダマスカスでの同時多発テロでの被害者のなかに治安当局に逮捕されていたはずのムアイイド・フサイン・スバイイー氏が含まれていたと報じた。真偽は不明。
アナン特使は、ダマスカスでの同時多発テロに関して、「受け入れられず、シリアでの暴力は停止されねばならない」としてうえで、「すべての当事者に暴力停止の実行」を呼びかけた。
またUNSMISのロバート・ムード司令官はダマスカスでの同時多発テロの現場を視察後に記者会見を開き、「私はシリア国内外のすべての当事者に暴力行為停止への支援を呼びかける」と述べた。
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国連安保理では、ダマスカスでの同時自爆テロ発生を受け、ロシアが安保理決議案を提出、審議がなされた。
決議案では、同時自爆テロが非難されているとともに、「すべての当事者」に停戦遵守を呼びかけている。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、北京での中国の楊潔チー外務大臣と会談後に記者団に対して、「我々はすべての当事者に暴力停止とアナン特使への協力を呼びかけている」と述べた。
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フランスのベルナール・ヴァレロ報道官は、ダマスカスでの同時多発テロに関して「シリアが目の当たりにしている惨状の責任のすべては政府にある」と非難した。
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『ハヤート』(5月11日付)によると、ドイツ国連大使は、ダマスカスでの同時多発テロを非難しつつ、「シリア政府がアナン特使の停戦案を遵守していないことが暴力を煽っている」と非難した。
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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長付報道官のマイケル・マン氏は、ダマスカスでの同時多発テロに関して「アナン特使のミッションを困難なものとしているが、重要なものともしている」と述べた。
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スーザン・ライス米国連大使は、ダマスカスでの同時自爆テロに関して、ツイッターで「手遅れになる前に政治的解決を急ぐ必要がある」としたうえで、アサド政権の存在が「シリアと地域の安定を揺るがす」と述べ、引き続きシリア不安定化のための内政干渉への意思を表した。
また、ライス米国連大使はロイター通信(5月10日付)に対して、「ダマスカスでの同時爆破事件に誰が関与しているか分からないが、米国はシリア政府が最終的には暴力激化の責任を負っていると考える…。我々は過激派の活動が活発化している証拠を持っており、事件はこうした現象の一つだと考えられる」と述べ、反体制勢力による犯行ではないとの見方を示した。
しかし「UNSMISとアナン特使のイニシアチブが失敗したと言うには時期尚早だと思う」と述べ、慎重姿勢を示した。
CNN(5月10日付)はCIA高官の話として、シリアにおける真空がイラクからのアル=カーイダの潜入を助長している」が、「デモを行う人々とは関係がなく、独自の兵を有している」と報じた。
アル=カーイダの関与が事実だとすると、アサド政権の自作自演を断じる反体制勢力の主張が偽りだということになる。
『アクス・サイル』(5月10日付)は、シリア軍高官の話として、政府は平和的デモを根絶し、「シリア革命を武装闘争への変容させる」戦術をとっている、と報じた。
同報道によると、この高官はベイルートでレバノン国軍が開催した会議で、弾圧には「死の師団」と称される「第三の当事者」がおり、治安機関の監督のもと、弾圧を行っている、という。
また政府は、レバノン内戦に干渉した経験をもとに、外国の干渉が続く限り徹底弾圧を続ける意思を持っており、都市部の調整(タンスィーク)のほとんどを根絶した、という。
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『クッルナー・シュラカー』(5月10日付)は、アサド政権がクルド人からなる三つの大隊を創設し、クルド人の反体制勢力弾圧に充てていると報じた。
時事通信(5月10日付)などによると、玄葉光一郎外相は日本を訪問中のシリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長と外務省で会談した。
玄葉外相は、シリア情勢に関して「全ての暴力が停止され、シリア国民の正当な希求が達成されることを期待する」と表明し、日本政府として追加の人道支援を検討していることを明らかにし、中立的な姿勢を示した。
一方、ガルユーン事務局長は、アサド政権がアナン特使の停戦案を遵守していないと非難した。
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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長はAKI(5月10日付)に対して、中国訪問中に、評議会はシリアの危機を解決するため政治的解決に依拠し、アナン特使の和平案を支持し、外国の干渉に反対する、と述べた」との報道に関して、「アナン特使の和平案の失敗は必然的に国際社会の介入をもたらすだろう」と述べたに過ぎないと否定した。
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シリア・クルド民主諸勢力連合が声明を出し、参加型で多元的な民主的市民国家建設のために、クルド人が居住する地域での革命青年の結集や他の諸勢力との調整の必要などを確認した。
SCN-sy.com(5月10日付)が報じた。
シリア・クルド民主諸勢力連合は2011年12月22日に結成された反体制組織。
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フェイスブックのページ「栄光のシリアネットワーク」(http://www.facebook.com/SyriaGloryN)はダマスカス県での同時多発テロに関して、犠牲者の一部が短パン、部屋着などを着用していたと指摘し、その写真を公開、事件がアサド政権による自作自演だと非難した。
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『クッルナー・シュラカー』(5月10日付)は、アサド政権を支持するデモに参加していた「市民」と、アラブ連盟監視団が視察した際に面談した「テロリスト」が同一人物であることを示す写真を公開した。
ダマスカス戦略研究センターのバッサーム・アブー・アブドゥッラー所長は、ドゥンヤー・テレビ(5月10日付)での対談で、「ブルハーン・ガルユーン(シリア国民評議会事務局長)、エルドアン首相、ハサン・アブドゥルアズィーム(民主的変革諸勢力国民調整)委員会代表は、シリア国民の名をかたって話していることの罰として、舌を切り落とされるべきだ」と述べた。
ミシェル・スライマーン大統領は、アサド大統領と電話会談し、ダマスカスでの同時多発テロに関して、「民主主義に至る正しい手段ではない…。唯一の理想的な方法とは対話のテーブルに着き、静粛かつ知的に民主主義への転換をもたらす文明的手段を検討すること」と述べた。
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ヒズブッラーは声明を出し、ダマスカスでの同時多発テロに関して「ワシントンやアラブの親米国が望んでいるアラブの春とはこれか?シリアやアラブ諸国民が期待しているアメリカ型自由の実践の見本なのか?」と非難の意思を示した。
AFP, May 10, 2012、Akhbar al-Sharq, May 10, 2012、AKI, May 10, 2012、ʻAks al-Sayrl, May 10, 2012、al-Hayat, May 11, 2012、Kull-na Shuraka’, May 10, 2012, May 11, 2012、Naharnet.com, May 10, 2012、Reuters, May 10, 2012、SANA, May 10, 2012、SCN-y.com, May 10, 2012、al-Watan, May 10, 2012、Zaman al-Wasl, May 10, 2012、時事通信などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.
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