クウェートやバーレーンの元首がアサド大統領への支持を表明、また米国務長官はシリアへの軍事介入の可能性を否定(2011年3月27日)

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反体制デモをめぐる動き

複数の住民が述べたところによると、ダルアー市やラタキア市に、軍・治安部隊、ムハーバラートの増援部隊が派遣され、市内制圧を支援する一方、監視態勢を強化し、大規模なデモは発生しなかった。

ただし、ダルアー市内には、戦車、兵員輸送車輌は投入されていないという。

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複数の通信社によると、衛星テレビ局アフバール・スーリーヤは、当局が約300人を逮捕し、そのなかにはイラク人、ヨルダン人、レバノン人、アルジェリア人が含まれていたと報じた。

彼らは3月26日(土曜日)、ラタキア市で、ビルの屋上を占拠し、通行人に発砲したという。

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『クッルナー・シュラカー』(3月27日付)は、「クルド青年革命」を名乗るグループが、フェイスブックなどでダルアー市との連帯を表明するため、カーミシュリー市での座り込みを呼びかけたと報じる。

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アラブ社会主義連合民主党は声明を出し、「平和的な手段による愛国的、民主的な運動のただ中にを見出す」と述べ、反体制抗議行動支持を表明。

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人民議会の審議で、ユースフ・アブー・ルーミヤ議員(75歳、ダルアー県選出、無所属)が、ダルアー市で治安部隊が「執拗に」デモ参加者に発砲したと非難した。

アブー・ルーミヤ議員は「ハウラーン地方で起きているのは、大統領ではなく、ヘリコプターを投入して市民に発砲した…ダルアーの政治治安部の無思慮に抗議するものだ」と述べた。

この発言はYoutubeで配信された。

アサド政権の動き

大統領府声明によると、バッシャール・アサド大統領はクウェートのフバーフ・アフマド・ジャービル・スバーフ首長、バーレーンのハマド・ブン・イーサー・アール・ハリーファ国王と電話会談した。

同声明によると、スバーフ首長は「クウェートが治安と安定を揺るがそうとする試みに対抗するシリアを支持するとの意思」を示し、この試みを退けるシリア政府および国民の能力を信頼していると述べた。

一方ハマド国王は「アサド大統領に対して、バーレーンが治安と安定を標的とした陰謀に立ち向かうシリア政府および国民を支持し、この陰謀を排除し、克服するシリア国民の意思と能力を信頼している」と述べた。

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SANA(3月28日付)は、公式筋の情報として、「武装集団が2日間にわたってラタキア市民、街区を攻撃し、治安部隊兵士、市民、10人と、武装集団メンバー2人がした。同集団は市内を徘徊し、家々の屋根を占拠して、市民に無差別に発砲、市民をパニックに陥れた…。約200人が負傷した。そのほとんどが治安要員で、武装集団はまた、ラタキア市内の公共施設、私有施設、福祉施設、焦点を破壊し、家々に押し入り、住民を脅迫した」と報じた。

またその際、市内の国立病院も襲撃され、多数の救急車両や医療クルーを攻撃した、という。

しかし、「ラタキア市民は、すべての地区で治安部隊に協力し、武装集団の居場所を知らせ、メンバー多数の逮捕、尋問に寄与した」。

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AFP(3月27日付)によると、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報顧問は、ラタキア市での3月26日(土曜日)の事件に関して「治安要員と市民2人、武装した男2人がラタキア市の住民や市街地に対する武装集団の攻撃によって死亡した」と公式筋の発表を繰り返した。

シャアバーン顧問はまた「攻撃の背後には過激派がおり、国内に宗派主義的亀裂をもたらそうとしていた」と疑った。

そのうえで「非常事態令解除は決定済みだが、それがいつ実施段階に入るかは分からない」と付言した。

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シリア・アラブ・テレビの報道によると、米国籍を持つエジプト人は外国から金銭を受け取り、シリアで撮影した映像を送っていたという。

シリア・アラブ・テレビで公開されたムハンマド氏の証言映像で、同氏はインターネットでコロンビア人からダマスカスでのデモの映像を撮影したら100EPの報酬を与えると持ちかけられたと述べた。

これに対して、アブー・バクル・ラドワーン氏(エジプト人)が3月27日晩にアラビーヤの電話取材に対して、息子のムハンマド氏がダマスカスで3月25日に逮捕されたと語った。

ムハンマド氏はウマイヤ・モスクで発生したデモを携帯電話のデジカメで撮影しただけであるにもかかわらず、シリア当局はイスラエルのスパイとの容疑をかけたという。

しかし、アブー・バクル氏は、ムハンマド氏がヨルダン経由でイスラエルに入国したことを認める。

ムハンマド氏は米国生まれの32歳で、テキサス大学を卒業。米在住。石油技師。

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AFP(3月27日付)はミシェル・シャンマース弁護士の話として、3月16日に内務省舎前で座り込みを行い「ダマスカスで逮捕されたディヤーナー・ジャワービラ女史ら17人の釈放を当局が決定した」と報じた。

ジャワービラ女史の逮捕は出身地であるダルアー市でのデモを激化させる原因ともなった。

この措置は、3月23日の女性参加者釈放に次ぐ動きであった。

しかし、シャンマース弁護士は9人が依然身柄拘束中で、そのなかには人権活動家のスハイル・アタースィー女史、ナーヒド・バダウィーヤ女史が含まれていると付け加えた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、米国にはシリアへの軍事攻撃の意思がないと明言した。

リビアでの軍事攻撃に関する米テレビ局CBSの質問に対して、国務長官は「いいえ、(中東での)情勢にはそれぞれ個別の特性がある」と答えた。

そのうえで、国際的な連携のもと、国連での「グローバル」な合意のもとで暴力行為が非難された状況下において、軍事的介入を考慮することが初めて可能になるとの見解を示し、「今後こうしたことは起きないだろう。なぜなら我々は現在何が起きており、その結果何が生じ得るかを完全には把握していないからである」と述べた。

さらに「もちろん、シリアでの暴力行為を遺憾に思っており、平和的なデモを認め、経済・政治改革の開始を呼びかけている」と付け加えた。

そしてシリアで起きていることを「大いに懸念しているが、それでも航空機を動員した無差別な都市への空爆と、我々の誰もが期待していなかったような過剰な実力行使を明白に伴う警察活動とは異なっている」と述べた。

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Naharnet.com, March 27, 2011

ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領は、シリアでの反体制デモに関して「彼(アサド大統領)を退任させようとする帝国主義の新たな運動」と非難、「社会主義指導者」にして「兄弟」のアサド大統領への支持を表明した。

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レバノンの首都ベイルート県内ハムラー地区にあるシリア大使館前で、数百人のシリア人がバッシャール・アサド大統領と政府との団結を訴えるデモを行った。

参加者はアイン・ムライサ地区に集まり、ハムラー地区に向かって行進、アサド大統領を支持するプラカード、大統領の写真、父ハーフィズ・アサド前大統領の写真を掲げ、「アッラー、シリア、バッシャールのみ」と連呼した。

またダナー地区近くでも約200人が集まり、イマーム・アリー・モスクに向かって行進、アサド大統領支持を訴える写真やプラカードを掲げて、ジュダイダ街道地区を通過した。

デモ参加者がコーラ地区に到着すると、地元住民との間で小競り合いが起き、殴り合いに発展したが、現場にいたレバノン軍が事態を収拾した。

この衝突に関して、『アフバール・シャルク』(3月28日付)は、ムスタクバル潮流の支持者と、アサド政権を支持するヒズブッラーの支持者が衝突し、1人が銃で撃たれて負傷したと報じた。

ベイルート郊外のブルジュ・ハンムード(レバノン山地県)のナブア地区では、アサド大統領の写真を掲げるアラブ人労働者が集まり、大統領を支持するシュプレヒコールを連呼した。

一方、レバノン国営通信社NNAが伝えたところによると、シリア大使館周辺で、アサド政権に反対する約50人が行進を行った。

AFP, March 27, 2011、Akhbar al-Sharq, March 27, 2011, March 28, 2011, March 30, 2011, April 3, 2011、al-Hayat, March 28, 2011、Kull-na Shuraka’, March 27, 2011, March 28, 2011、Naharnet.com, March 27, 2011、NNA, March 27, 2011、Reuters, March 27, 2011、SANA, March 28, 2011などをもとに作成。

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