非常事態令が解除されるも各地で大規模デモが発生、オバマ米大統領は声明のなかで「暴力の即時停止」を求める(2011年4月22日)

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シリア政府の動き

アサド大統領は、2011年政令第161号(2011年4月22日)を発し、1962年12月22日の法律第51号(非常事態法)に従い、1963年3月8日に宣言された非常事態令を解除した。

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アサド大統領は、2011年政令第53号(2011年4月22日)を発し、国家最高治安裁判所(1968年設置)を廃止し、国家最高治安裁判所の権能を刑事裁判所へ移管した。

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アサド大統領は、2011年政令第54号(平和的デモ調整法、2011年4月22日)を発した。

同法は西側諸国のデモ規制法をもとに、平和的デモ権を「シリア憲法が保障する基本的人権の一つ」と位置づけ、デモ主催者が内務省に実施許可を求めることなどを明文化している。

またデモが「実施許可の制限を超えた場合」、デモ中止を要請できる権限を内務省に付与するとともに、本法違反者に対して刑事法に基づく罰則を定めた。

抗議行動

al-Hayat, April 23, 2011

『ハヤート』(4月23日付)などによると、治安機関による厳戒態勢が敷かれるなか、フェイスブックなどでの反体制活動家らによる「大いなる金曜日」と銘打った抗議デモの呼びかけに呼応するかたちで、各地でデモが発生、参加者らは「体制打倒」に加えて「治安機関の解体」などを求めるシュプレヒコールをあげた。

デモが発生したのは、ダマスカス県マイダーン地区、バルザ区、カーブーン区、ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市、ドゥーマー市、ハラスター市、ムウダミーヤト・シャーム市、ザマルカー町、ザバダーニー市、ハサカ県ハサカ市、カーミシュリー市、ラッカ県ラッカ市、ダイル・ザウル県ダイル・ザウル市、ダルアー県イズラア市、フラーク市、ハマー県ハマー市、ヒムス県ヒムス市、タルトゥース県バーニヤース市、ラタキア県ラタキア市などで、『ハヤート』(4月23日付)によると、さまざまな人々(アラブ人、クルド人、アッシリア人)が合わせて数万人参加した。

これに対して、治安当局はデモ参加者に実弾や催涙弾を発射し、強制排除を試み、ロイター通信(4月22日付)はアンマール・カルビー氏の話として、少なくとも49人が死亡、数十人が負傷した、と報じた。

AFP(4月22日付)によると、犠牲者のうち少なくとも14人がダルアー県のイズラア市で、1人が同県のフラーク市で死亡した。

またダマスカス郊外県では、ドゥーマー市で9人、ムウダミーヤト・シャーム市で3人、ハラスター市で1人が死亡した。さらにダマスカス県バルザ区で2人、ヒムス市で4人、ラタキア市で2人、ハマー市で2人が死亡したという。

『ハヤート』(4月24日付)は、死者数に関する情報が錯綜しており、88人、90人、100人といった数値があげられていると報じた。

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一方、「3月15日殉教者委員会」は少なくとも82人が死亡したと発表、死亡が確認された市民の氏名を列記、負傷者や行方不明者の数を踏まえると死者数はさらに上昇するだろうとの所見を示した。

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デモに関して、SANA(4月22日付)は、「シリアが曝されている大規模な扇動キャンペーンや…メディアによる動員にもかかわらず、多くの県で限定的で小規模なデモしか発生しなかった」と報じた。

SANA, April 22, 2011

各県のSANAの特派員によると「参加者の数は都市によって差があり、ダマスカス郊外県の複数の地区、ハマー県、ダイル・ザウル県、ハサカ県、バーニヤース市では、金曜日の礼拝後の集会での国民の数は限定的で、参加者は、自由や殉教者のためのシュプレヒコールを叫んだ。またダルアーでも、数千人が集会を行い、自由や殉教者のためのシュプレヒコールを叫んだ」。

また「警官隊は問題発生を回避するために介入し、これらの集会の参加者と、私有財産・公共財産を破壊から守ろうとする市民の間に入った。これらの集会の一部は、開始後まもなく解散した」という。

しかし、幾つかの問題が「ハラスター市、ハマー市、カーミシュリー市で発生し、それによって複数の負傷者が出た。また一部の泥棒がダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市での混乱に乗じて、商店や民家で略奪行為を行った」という。

その後、SANA(4月23日付)は、ダルアー県イズラア市でバイクに乗った武装集団が市の警備要員を襲撃し8人を殺害したほか、ダマスカス郊外県ムウダミーヤト・シャーム市の軍の検問所なども襲撃を受けたと報じた。

同報道によると、武装した数人を含む集団が、金曜日の午後にダルアー市郊外のイズラア市の北側から「オートバイや車で」侵入、「市内中心に向かい、イズラア地区局の護衛要員に投石し、その一部は発砲したのを受け、軍はこれに応戦すべく、発砲し、この集団は逃走した」。

また「その後、この集団の背後に控えていた民生用の乗用車から発砲音が聞こえ、覆面をかぶった数名が無差別に発砲、この集団と軍の8人が死亡し、28人が負傷した」という。

同消息筋は、別の集団がオートバイに乗って「フラーク市から西ムライハ村とフラーク市の間にある軍の監視地点に向かって移動し、同時に西ムライハ村かと近隣の村々からこの監視地点に向かってさらに別の集団も徒歩で向かっていた。これらの集団の面々はそのほとんどがナイフ、棍棒、火炎瓶、さらには赤い液体が詰められたプラスチックの容器を携帯し、軍の監視地点を攻撃した。これに対して、軍は対抗し、空砲を撃って警告、彼らをフラーク市方面に排除した。けが人はなかった」と指摘した。

また、ダマスカス県ジャウバル区では「犯罪集団」が消火作業に当たっていた消防車に発砲、投石し、破壊したと報じた。

これにより多くの消防隊員が重傷を負い、病院に搬送された。

SANAはまた別の武装集団が「ダマスカス周辺のティシュリーン地区で複数の国内運輸用バスに放火した」と報じた。

一方、ダルアー県フラーク市では、SANA(4月23日付)によると、軍の検問所を襲撃しにきた武装集団から、軍が「シリア以外のSIMカードが取り付けられていた携帯電話、GPS機器、ねつ造された暴行シーンやデモ弾圧シーが映った画像が納められた高性能デジタル・カメラ」を押収した。

また軍が「ねつ造されたデモでの暴力行為を撮影する際に用いられる本物の血が詰められた瓶、さらには放火に用いられる火炎瓶」を押収したことも明らかにした。

反体制勢力の動き

地元調整諸委員会を名乗る反体制活動家は「初めて」(『ハヤート』4月23日付)共同声明を発表し、そのなかでバアス党の権力独占の停止、民主的政体の確立を要求した。

また同声明で、地元調整諸委員会は、すべての政治犯の釈放、既存の治安機関の解体、「法的権限が限定され、法に従って活動する」治安機関の新設を求めるとともに、平和的民主的変革を通じた自由、尊厳の実現を訴えた。

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『シャルク・アウワト』(4月22日付)は、インターネットでデモを呼びかける活動家マラーッズ・ウムラーン(ラーミー・ナフラ)なる活動家について紹介記事を掲載した。

同記事によると、ウムラーン(28歳)は数ヶ月前に逮捕を逃れ、ベイルートに移り、そこからフェイスブックやツイッターを通じて、偽名で反体制抗議デモを主導していたが、4月初めにシリアの当局に身元が割れた、という。

また、ウムラーンには、フェイスブック上に2,800人の友達が、ツイッター上で3,000人のフォロワーがいるの だという。

諸外国の動き

バラク・オバマ米大統領は声明を出し、22日のシリアでのデモ参加者に対するシリア政府の力の行使を非難し、「暴力の即時停止」を呼びかけるとともに、シリア政府が国民を弾圧するためイランの支援を得ようとしていると非難した。

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米国高官は『ハヤート』(4月23日付)に対して、ロバート・フォード在シリア米大使がシリア指導部に暴力行為への米国の懸念を伝え、「政府と国民の対話を通じた(危機)解決と特別且つ早急な改革の実施の必要」を強調した。

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CNN(4月22日付)は、イスラーム教伝道師のユースフ・カラダーウィー氏が、シリアのムハンマド・ムハンマド・アブドゥッサッタール・サイイド宗教関係大臣を「バカ者」と評し、シリア、イエメン、リビアの「共和国(を支配する)家族」を批判、彼らがすべて「去るだろう」と述べた、と報じた。

AFP, April 22, 2012、CNN, April 22, 2012、al-Hayat, April 23, 2011, April 24, 2012、Kull-na Shuraka’, April 22, 2011、Reuters, April 22, 2012、SANA, April 22, 2012, April 23, 2012、al-Sharq al-Awsaṭ, April 22, 2012などをもとに作成。

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