ラマダーンを間近に控え、ハマー市、ダイル・ザウル市、ダマスカス郊外県などシリア各地で軍・治安部隊による治安回復作戦が激化し、約150人が殺害、約400人が負傷、また反体制抗議行動に参加した市民ら数百人が逮捕された。
とりわけハマー市に対する軍・治安部隊の掃討作戦は激しく、欧米の政府高官、メディア、そしてシリアの反体制勢力は1982年2月から3月にかけてのいわゆる「ハマー虐殺」(15000人以上の犠牲者を出したとされるハーフィズ・アサド前政権によるシリア・ムスリム同胞団の掃討作戦)の再発との非難を強めた。
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シリア革命調整連合によると、ハマー市などで日曜日(31日)早朝から軍・治安部隊による作戦が開始され、約150人(うち民間人が約130人)が殺害、400人が負傷した。BBCが住民の話として報じたところによると、軍・治安部隊は日曜日(31日)早朝、ハマー市のサラミーヤ街道、ヒムス街道、アレッポ街道で大規模な捜索活動を展開した。戦車による激しい銃声が聞こえた。ロイター通信が目撃者の証言として報じたところによると、戦車が四方からハマー市を攻撃。負傷者が搬送されたハウラーニー病院をも包囲した。
シリア人権国民機構によると31日だけで、145人が殺害され、うちハマー市では113人が犠牲となり、数百人が逮捕された。アンマール・カルビー同機構所長によると、ハマー市以外でも、ダイル・ザウル市で19人、ダルアー県フラーク市で6人、ブーカマール市(ダイル・ザウル県)で1人が殺害された。犠牲者のほとんどが狙撃手によって頭と首を撃たれたという。なおダイルザウル市に関して、シリア革命調整連合は軍が同市を包囲し、ライフラインが遮断されていると伝えた。
シリア人権連盟のアブドゥルカリーム・リーハーウィー所長によると、ヒムス市内でハマー救済を求めて市民がデモを行ったが、5人が軍・治安部隊によって射殺され、イドリブ市郊外でも同様のデモが発生し、3人が殺害された。シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、ハマー市郊外のスーラーン市でも、ハマー救済を叫ぶ市民がデモを行ったが、2人が殺害された。同所長は、住民の話として日曜日早朝以降の逮捕者数が350人を越えたと述べた。逮捕された人々の多くが拷問にさらされているという。さらにダマスカス郊外県のドゥーマー市、アラバイン市、クドスィーヤー市では、ハマー、ダイル・ザウルなどに対する軍・治安部隊の包囲に抗議して数千人が街頭で抗議行動を行ったという。一方、アブドゥッラフマーン所長は、ヒムス市で、ラマダーン月の夜の礼拝後にワアル、ハムラー地区、ジャウラト・シヤーフ地区、バーブ・スィバーア、ハドル地区、クスール、インシャーアートの各地区でデモが発生したと明らかにした。
アブドゥッラフマーン所長はAFPの取材に対して、ダイル・ザウル市から35キロ離れたムサッラブ村で住民がシリア軍の車輌24輌を焼き討ちにしたと述べた。またアレッポ・ダマスカス街道が市民によって封鎖され、イドリブ市郊外のハーン・シャイフーン市、マアッラト・ヌウマーン市、サラーキブ市の住民がデモを行った。ダマスカス郊外県ハラスター市でも約4000人がデモを行ったが、治安部隊の発砲により10人が負傷した。ダマスカス郊外県キスワ市では300人以上が逮捕されたという。
なお「アフバール・シャルク」などによると、アレッポ市内サラーフッディーン地区のアブー・ハニーファ・ニウマーン・モスク、ハドル・モスク、ズバイル・モスクで夜の礼拝の後、市民が街頭に出て抗議行動を行った。
シャーム・ニュース、シリア革命調整連合、オガレット・ニュースなどは、ハマー市で殺害された市民、「頭のない遺体」などの映像をウェブ上にアップし、公開した。
『シャルク・アウサト』(2011年8月1日付)によると、バッカーラ部族のシャイフ、ナイワーフ・ラーギブ・バシール氏の逮捕(30日)を受け、バッカーラ部族の長たちが集まり、「平和的方法による革命の追求」を確認するとともに、政権、とりわけアサド大統領の抗議行動弾圧による被害の責任を追及した。
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シリア国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、ハマー市、ダイル・ザウル市で武装集団が治安維持軍兵士6人、および警官8人を殺害した。武装集団はハマー市の警察署に砲火、公共財産、私有財産を破壊し、同市の入り口や街路にバリゲードを設置し、タイヤを燃やし、往来を阻止している、という。
アーディル・サファル内閣は、政党法、総選挙法に続いて、地方自治法案を閣議承認した。SANAによると、同法案は、地方分権、地方自治の効率化、地方社会の振興などを目的とするほか、地方自治最高会議設置、地方自治を県、市、村の三レベルに分割し、各レベルに局長職を設置することなどを定めている。
バッシャール・アサド大統領はシリア軍創設記念日を祝して軍・武装部隊に対して祝辞を送った。このなかで大統領は、最近のデモを暗示するかたちで、「誠実なるシリアの全国民は、我々がこれまで以上に力強く危機を克服すると確信している」と述べるとともに、「シリアは自由、民主主義、政治的多元主義に関する独自のモデルを提示し、民族の敵ではなく、シリア国民自身の信念や利益に基づき、自ら未来へと向かって進んでいく」と述べ、「上からの改革」をもって事態に対処することを改めて強調した。
米国ワシントンDCで、在米シリア人がデモを行い、バラク・オバマ政権の対シリア政策に反対し、バッシャール・アサド政権の改革路線を支持。これに対して在米の反体制シリア人が表現の自由を求めるデモを行った。
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バラク・オバマ米大統領はハマー市での弾圧に関して、「シリア政府が国民に対して暴力と野蛮な行為を行うことに懸念を感じる」と非難した。
フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、シリアでの弾圧継続に関して「ラマダーン月直前という時期を踏まえると、決して受け入れられない」強く非難。また英国、ドイツ外相も同様の調子で、アサド政権による弾圧を非難した。
トルコは、民間人に対する殺戮行為を停止し、混乱を収束させるため平和的方法をとるよう呼びかけた。
レバノンのサアド・ハリーリー前首相は、「ラマダーン月を間近に控えるなかで、シリアのハマー市が曝されている虐殺、そしてヒムス、イドリブ、ダイル・ザウル、ダルアーなどで行われる血塗られた殺戮行為は…望まれているような解決策をもたらさず、姉妹国シリアの国民にさらなる犠牲を強いるだろう」と非難した。
Akhbar al-Sharq, July 31, 2011, August 1, 2011、BBC, July 31, 2011、al-Hayat,
August 1, 2011、Kull-na Shuraka’, July 31, 2011、al-Nahār, August
1, 2011、Reuters, July 31, 2011、SANA, August 1, 2011、al-Sharq al-Awsat,
August 1, 2011などをもとに作成
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