イスタンブールで「シリア国民評議会」の発足が宣言、国連人権理事会はシリアでの人権侵害状況の調査に向けた委員会設置を定める決議を33カ国の賛成で可決(2011年8月23日)

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反体制運動をめぐる動き

ヒムス県では8人が軍・治安部隊の弾圧で殺害された。シリア人権監視団によると、ヒムス市グータ地区に軍・治安部隊が突入した。しかしSANAは、武装集団がヒムス県で14人の市民を誘拐、拷問の末に殺害したと報じた。

ハマー県では、シリア軍・治安部隊がハマー市郊外を砲撃、目撃者によると「軍とともにシャッビーハがいた」。複数の活動家によると5人が殺害された。

シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル県のクーリーヤ市、ティヤーナ村に治安部隊が突入し、数十人を逮捕。またダイル・ザウル市でもジャウラ地区などで大規模な捜索活動が行われ、数百人が逮捕された。

シリア人権監視団によると、イドリブ県では、カフルナブル市の説教師でウマル・ムスタファー氏が死亡。同氏はフバイト村で狙撃兵に撃たれて重体だった。またサラーキブ市でも治安部隊が突入し、活動家のウサーマ・フサイン氏、ハーイル・ダルウィーシュ氏を逮捕した。

ダマスカス県内シャーム・パレス近くにある弁護士組合本部で弁護士数十人がアサド政権によるデモ弾圧に抗議する座り込みを断行するが、程なく治安機関、シャッビーハが強制排除した、と複数のメディアが報じた。

しかし衛星テレビ局ドゥンヤーは、デモが発生したとの報道を否定、ロバート・フォード米大使がシャーム・パレス近くを訪れ、一部の市民に反体制デモを行うよう扇動したところ、アサド政権を支持する通行人に包囲され、騒動が生じたと報じた。

こうしたなか、弁護士組合ハサカ支部長はハサカ市内の組合施設での同様の座り込みを禁止した。

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イスタンブールでは、反体制勢力が4日間にわたる会合を閉幕し、反体制運動の調整を目的とした「国民評議会」の発足を宣言した。発足宣言はアフマド・マダーン氏が記者会見で行った。

会合は20日に開幕し、当初は2日間の予定だったが、2日間延長されていた。

「シリア国民評議会宣言に向けて」と題された閉幕声明では、「すべての反体制組織の統一は危機的状況下において不可欠であり、本評議会創設者たちは複数の反体制潮流に属している」と述べ、シリア国内外の様々な反体制勢力を代表していることをアピールした。

また国民評議会に関して、在米の反体制活動家で政治問題の専門家であるルワイユ・サーフィー氏は、国民評議会が「2週間以内に会合を開き、指導部メンバーと書記長を選出する」と述べた。同評議会は、60人の在外活動家、60人の国内活動家から構成され、国内外のさまざまな反体制勢力の代表が参加する、という。

こうしたなか、『スーリーユーン・ネット』(23日付)は、在米シリア人反体制活動家筋の話として、「統一暫定評議会」発足に向けた準備がほぼ完了したと報じた。同評議会は55人から構成され、うち16人がテクノクラート、10人がアンタリア国民変革大会の参加者、7人がブリュッセル大会の参加者、8人が国民救済大会の参加者、4人が世俗主義者、2人がウラマー、8人が青年活動家からなり、また女性、左派、世俗主義者、ドゥルーズ派、イスマーイール派、アラウィー派などの宗派なども包摂されている。一部の反体制活動家は評議会発足に合意していないが、現在協議中だという。

この動きに関連して、シリア・ムスリム同胞団のムハンマド・リヤード・シャカファ最高監督者、ムハンマド・アブドゥッラー氏らはアラビーヤなどで発足が近いと述べている。

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しかしイスタンブールでの国民評議会発足宣言は、反体制勢力の不協和音を強めた。

アンタキア・シリア変革大会はイスタンブールで開催された国民評議会発足のための会合からの脱会を宣言する声明を発表。声明のなかで、同大会は、反体制勢力の糾合する姿勢を支持するとしながらも、国民評議会発足に代表される民主的な基準が考慮されていないいかなる措置や努力にも与しないとの立場を示した。

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一方、ダマスカス宣言執行部がダマスカス県内で会合を開き、反体制活動家が提起した「すべての場所のシリア人解放運動家への呼びかけ」や反体制運動の近況について審議。国内外の反体制勢力の糾合をめざすという考え方に賛同しつつ、変革のための明確なビジョンが提示されるべきとの認識に至った。そのうえでダマスカス宣言にとっての「変革」が、既存の政治体制の転換を意味しており、アサド現政権による変化を意図していないとの立場を示した。

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アッシリア民主機構はシリア国内の他のアッシリア教徒の組織と会合を開き、アサド政権崩壊後をにらんで、政治連合を発足することで合意。また政治綱領などを採択するための会合を27日に開催することを決定。

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フェイスブックなどを通じて反体制活動を行う複数の団体が、同サイト上で「アレッポ・シリア革命調整連合」の発足を宣言。参加組織は以下の通り。

1. 反アサド政権アレッポ革命、2. アレッポ市および郊外平和的変革解放運動家連合、3. アレッポ解放運動青年、4. サラーフッディーン革命運動家調整連合、5. アレッポ・
アアザーズ青年、6. アンダーン解放運動家青年調整委員会、7. タッル・リフアト・アレッポ郊外調整委員会、8. マーリア革命青年調整連合、9. ジャラーブルス解放運動家、10. マンビジ反バッシャール・アルアサド・シリア革命、そのほかウェブサイトを運営していない様々な組織。

アサド政権の動き

アサド大統領は政令第107号を発令し、地方自治法(改正法)を施行。SANAによると、同法は「権力と責任の非中央集権の実現、民主主義の原則のための権力と責任の人民への集中」をめざし、地方自治体の権力や権限を拡大し、地方自治体の経済、社会、文化、建設といった面での開発を担うことを保障した。また地方自治体は開発計画策定、実行を行うことができるようになる。

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アーディル・サファル内閣は閣議を開催。行政改革近代化委員会の提言に関する審議を行う。

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「シリアは元気です」の参加者はダマスカス県内のティシュリーン軍事病院を訪問、反体制デモ弾圧で負傷した軍・武装部隊兵士らを見舞った。

諸外国の動き

国連人権理事会は、シリアでの人権侵害を非難し、同国の人権侵害状況を調査するための委員会の設置を定めた決議を33カ国の賛成で可決した。決議は委員会メンバーの米国、英仏独、ポルトガル、サウジアラビア、ヨルダン、カタール、クウェートが作成・提出し、シリア政府に調査委員会への全面協力を求めるとともに、9月末までに国連事務総長および関係各機関への委員会報告を定めている。

しかしロシア、中国、キューバなど4カ国が、決議内容を「バランスを欠く」、「問題を複雑にするだけ」と非難し、採決では反対票を投じた。また9カ国が棄権した。

シリアのファイサル・ハッバーズ・ハマウィー代表は、「動機は100%政治的だ」と述べたうえで、「シリア独自の調査が完了したうえで国際人権チームを受け入れる」と述べた。

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米英仏独、そしてポルトガルは、国連人権理事会での決議採択を追い風とするかたちで、アサド政権高官への制裁を目的とする国連安保理決議案を提出した。

同決議案は、アサド大統領を含む23人の資産凍結、渡航禁止、武器禁輸を定めているが、「国連憲章第7章第41条に基づき」という表現で軍事介入の可能性を排除している。

安保理決議案で制裁対象となっている政府高官は以下の通り。

バッシャール・アサド、マーヒル・アサド、アリー・マムルーク、アースィフ・シャウカト、ジャミール・ハサン、アブドゥルファッターフ・クドスィーヤ、ムハンマド・ディーブ・ザイトゥーン、ムハンマド・ナースィーフ、ヒシャーム・ビフティヤール、ハーフィズ・マフルーフ、アーティフ・ナジーブ、ルストゥム・ガッザーラ、イヤード・マフルーフ、ダーウード・ラージハ、ムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール、ファールーク・シャルア、ラーミー・マフルーフ、タウフィーク・ユーニス、ムハンマド・アムハド・ムフリフ、アムジャド・アッバース、ファウワーズ・アサド、ムンズィル・アサド、アイマン・ジャービル。

また資産凍結の対象となる機関は、ビナー機構、マシュリク投資会社、軍住宅機構、総合情報部。

在米の反体制活動家ラドワーン・ズィヤーダ氏は、人権理事会の決議について「すばらしい。強い決議だ。安保理にも大いに圧力をかけることになる」と絶賛。

また西側諸国の攻勢に関連して、米国務省高官は米国の追加制裁がアサド政権の財源を大きく制約するだろう、と述べた。

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ロバート・フォード駐シリア米大使はダルアー県のジャースィム市をシリア側の許可を得ず訪問した。

スーザン・ライス米国連代表はCNNとのインタビューで、リビアでの体制崩壊に関連して、「リビアで起きていることが(アサド政権に)明確なメッセージとなっている」と述べる。

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中国外交部報道官は、米国や西側諸国によるアサド大統領退任要求といった圧力を非難し、国家の将来は国内で決せられるべきとの立場を示した。その一方、「シリアのすべての当事者にさらなる自制と暴力行為の回避」を呼びかけた。

AFP, August 23, 2011、Akhbar al-Sharq, August 23, 2011、August 24, 2011、AKI, August 23, 2011、al-Hayat, August 24, 2011、Kull-na Shuraka’, August 23, 2011, August 27, 2011、August
24, 2011、Reuters, August 23, 2011、SANA, August 24, 2011、Sooryoon.net, August
23, 2011、UPI, August 23, 2011などをもとに作成。

 

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