フェイスブックでシリアの反体制派が「勝利の吉報の金曜日」と銘打ったデモを呼びかけるなか、米英仏独、そしてEUがバッシャール・アサド大統領に初めて明確なかたちで退任を求めるとともに、さらなる制裁発動に動いた。また国連安保理では、人権高等弁務官がシリア情勢に関して「人道に対する罪のレベルを超えている」と報告、シリア制裁決議をめざす西側諸国を後押しした。
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シリア人権監視団によると、軍・治安部隊が治安維持作戦を完了したラタキア市のラムル地区で早朝銃声が聞こえた。
SANAによると、ラタキア市ラムル地区の複数カ所で大量の武器、弾薬が隠されているのを関係当局が発見し、押収。
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複数の活動家によると、ラタキア市以外では、ハマー市のクスール地区、ダマスカス県ルクンッディーン区は夜間、軍・治安部隊やシャッビーハが大規模な家宅捜索を行った。またダルアー市ダルアー・バラド地区の主要な広場などに装甲車、戦車が展開した。イドリブ県ビダーマー町ではラタキア市からトルコに向かう避難民に対して軍・治安部隊が発砲した。
一方、シリア人権監視団によると、ダマスカス郊外県のハジャル・アスワド、キスワ、ムウダミーヤト・シャーム、ジュダイダト・アルトゥーズで逮捕・捜索が行われた。これらの都市、さらにカタナー、タッル、ザバダーニーなどでは夜の礼拝後のデモが続けられ、ラタキア市との連帯、体制打倒が叫ばれた。ダマスカス郊外県以外でもアレッポ各所、ダルアー市および郊外、ハマー郊外でもデモが発生した、という。
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フェイスブックでは、ラマダーン月に入って、夜の礼拝後にデモを行うよう呼びかけているが、「勝利の吉報」の金曜日を記念して、19日に大規模なデモが呼びかけられた。
ダマスカス県内の複数のモスクにアサド大統領の死亡を告知するビラ(フェイスブックなどで若者が配信)が張られる。
在米シリアの反体制活動家が明らかにしたところによると、FBIはマラアフ・ビカーイー氏、ラドワーン・ズィヤーダ氏、ムハンマド・アブドゥッラー氏に対する脅迫を調査中。彼らは何者かから殺すと脅迫のメールを受けている、という。3人とも8月初めにクリントン米国務長官と会見している。
シリア人権機構(SWASIAH)が声明を発表し、過去約2ヶ月間の逮捕者数百人の氏名を公開。
シリア情報省のリーム・ハッダード渉外関係課長は、オバマ米大統領や西側諸国首脳の声明に関して「オマバや西側諸国が、改革プログラム実施のための支援の手をさしのべずに、シリアでの暴力をさらに激化・拡大させようとするのは奇異なことだ」と非難した。
SANAによると、トルコに避難していたジスル・シュグール住民126人がシリアに帰国。
『ディヤール』(22日付)によると、シリア軍は先週木曜(18日)、ロシア製の対空防衛システムを搭載した車輌25輌をトルコ国境地帯に展開した。同紙によると、西側諸国の圧力への「警告」としての意味合いがあり、(リビアのように)NATOの軍事介入があった場合に断固たる抵抗を行う意思を示したものと見られる。
バラク・オバマ米大統領は声明を出し、以下のように述べて、アサド大統領に初めて退任を求めたが、あからさまな干渉は行わないことを強調し、外国の軍事干渉を恐れるシリア国民や多くの反体制勢力に配慮した――「我々は一貫してアサド大統領が民主主義への転換を指導するか去らねばならないと行ってきた。彼は指導しなかった。シリア国民のため、アサド大統領が退任する時が来た…。合衆国はこの転換をシリアに押しつけることはできないし、そのようなことはしない。シリア国民が自分自身の指導者を選ばねばならず、我々は彼らがこの運動への外国の干渉を望んでいないことを耳にしている。合衆国が支援するのは、民主的で公正ですべてのシリア人を包摂したシリアをもたらす努力を支援することだ」(オバマ大統領の声明全文はホワイトハウスのHPを参照のこと)。
またオバマ大統領は声明のなかで、シリアの石油・ガス部門などを対象としたより厳しい制裁を科すための大統領命令に署名したと述べた。これを受け、米財務省は、米国内のシリア政府の資産凍結、シリアへの米国の投資禁止、シリアの石油企業との取引禁止などといった追加制裁を発動した。
なおNaharnet(18日付)は、『ラアユ』(19日付)で掲載される予定の米国の報告書の情報として、米国のシリアテルに対する制裁が、ナジーブ・ミーカーティー首相の弟でビジネスマンのターハー・ミーカーティー氏への制裁も念頭に置いたものだと報じた。ターハー氏は、シリアへの携帯電話の導入に主導的な役割を果たした人物で、ラーミー・マフルーフ氏とも親しいとされる。
一方、米国務省報道官は、米国がラタキアのパレスチナ難民キャンプでシリア軍部隊が発砲したことを示す「信頼できる」情報を持っていると述べた。
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デーヴィッド・キャメロン英首相、ニコラ・サルコジ仏大統領、アンゲラ・メルケル独首相は共同声明で、オバマ米政権に追随するかたちで、アサド大統領に退任を求めるとともに、アサド政権へのさらに厳しい制裁発動を支持すると発表。またキャサリン・アシュトン欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表は「EUはバッシャール・アサドがシリア国民にとって完全に正統性を失い、退任するべきと見ている」。また新たに制裁リストに高官を加えると発表した。
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国連安保理会合でシリア情勢が審議された。同会合でナバメセム・ピレー国連高等人権弁務官は、「シリアでの抗議行動に対する弾圧は人道に対する罪のレベルを越えている」と報告し、安保理に本件の国際刑事裁判所での調査を求めた。報告書は12ページからなる。
国連安保理での報告を受け、西側諸国は、安保理声明を準備。『ハヤート』(19日付)によると、①軍事作戦が停止したとのシリア側の主張に反論、②シリアの人権侵害、人道法違反を指摘、③アサドに退任要求、という3点を盛り込むことをめざしている、という。だがロシア、中国、インド、南ア、ブラジルはこうした強硬な姿勢に難色を示している。
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シリア人避難民女性400人が強姦され、彼女らの身体にその傷跡が残されているとの情報をトルコのウェブサイト(A Dinilik)が発信。シリアの反体制人権団体が作るシリア人権ネットワークは、トルコの非難キャンプでのシリア人女性の強姦についての調査と処罰を求める。一方、トルコに避難する多くのシリア人が電話で事実無根と答える。
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サウジアラビアのウラマー50人が名前で、シリアでのデモ弾圧を非難する声明を発表。
スイスは駐ダマスカス・シリア大使を召還。
AFP, August 18, 2011、Akhbar al-Sharq, August 18, 2011, August 19, 2011、aljazeera.net,
August 18, 2011、al-Diyar, August 22, 2011、Facebook、Kull-na Shuraka’, August 18, 2011、Naharnet.com, August 18, 2011、al-Hayat, August 19, 2011, August 22, 2011、Reuters, August 18, 2011などをもとに作成。
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