ダマスカス県で駐シリア米大使の車列が襲撃される、国連安保理の西側諸国はシリア政府非難決議の原案を緩和することで妥協点を模索するも米国は関心を示さず(2011年9月29日)

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米大使襲撃

ロバート・フォード駐シリア米大使が乗った車列がダマスカス県内にある反体制活動家のハサン・アブブドゥルアズィーム弁護士(国民民主諸勢力国民調整委員会代表)の事務所を訪問した際、市民の襲撃を受ける。http://www.youtube.com/watch?v=3PzqdON1_eI

Kull-na Shuraka’, September 29, 2011

ラジャー・ナースィル弁護士はAKI(9月29日付)に対して、数百人の市民、治安要員、シャッビーハが事務所周辺を包囲しており、あたかも明確な襲撃命令を受けているかのようだった、と述べた。

米大使が反体制勢力指導者らと会談を続けるなか、西側消息筋によると、シリア政府は米大使「追放を検討」しているという。

またSANA(9月30日付)は、外務省筋が、「暴力の助長に関与」していると非難したと報じた。

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なおAKI(9月29日付)によると、国民民主諸勢力国民調整委員会は、米国だけでなく、スペイン、トルコの外交団の訪問も受けているという。

離反兵掃討作戦続く

シリア軍部隊はヒムス県ラスタン市とタルビーサ市での攻撃を拡大した。

複数の活動家、住民によると、約200輌の戦車が昨日、ラスタンに新たに向かう一方、タルビーサは、武装部隊と民間人への発砲を拒否して離反した兵士との間の戦闘のなかで激しい砲撃に曝された。

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ラスタン市では多くの犠牲者が出て、その数は3日前の戦闘開始以来27人にのぼった。

地元調整委員会によると、ラスタン市での犠牲者のうち、2人が離反兵、それ以外が住民だと発表した。

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タルビーサ市では、複数の目撃者によると、サウラ通り、ブサンクー通りで空爆により火災が発生。複数の住居が完全に破壊。貯水槽などが標的となり、ライフラインが寸断。

その他の反体制運動をめぐる動き

イドリブ県のマアッラト・ヌウマーン市で生徒たちがデモを行い、シャッビーハや軍・治安部隊の弾圧に曝された。

一方、SANA(9月30日付)は、マアッラト・ヌウマーン市北の国際幹線道路沿いのハーン・スブル村で、「武装テロ集団」がムハンマド・アブドゥルアズィーズ・ダフルージュくんを殺害したと報じた。

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SANA(9月30日付)は、「武装テロ集団」のメンバーの一人、ビラール・ハッスーン氏が、シリア・アラブ・テレビでヒムス市国立病院のハサン・イード外科部長暗殺や軍・民間人への発砲を計画、実行したと証言したと報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官は、9月30日、10月1日の2日間の予定でイスタンブールで非公式会合を開くと発表した。

同報道官によると、会合には、シリア・ムスリム同胞団、ダマスカス国民民主変革宣言、ブルハーン・ガルユーン氏、クルド民族主義諸政党、国民民主変革諸勢力国民調整委員会などが参加し、シリア国民評議会のメンバーを最終確定し、諸委員会を設置するという。

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ミシェル・キールー氏は国民民主諸勢力国民調整委員会に参加する政党・政治組織、活動家がシリア国民評議会に参加する意思がないことを明らかにした。

その理由としてキールー氏は「国民評議会に参加した反体制活動家がシリア国内の危機解決のため外国の干渉を指示している」ためと述べ、「これに対して、国内の反体制勢力はこのような介入に反対している」と明言した。

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SANA, September 29, 2011

AKI(9月29日付)は、シリア人権協会のファーイズ・ファウワーズ所長が、ロシア上院の使節団との会談に関して、自身が国民民主諸勢力国民調整委員会を代表していないことを明らかにしたうえで、個人の見解として、「シリア革命の根本に持てる者と持たざる者の亀裂の拡大」という原因があることを説明したと語ったと報じた。

アサド政権の動き

『ダマス・ポスト』(9月29日付)は、シリア政府の複数の高官が近く発足予定の憲法改正委員会に反体制勢力のメンバーが参加する見込み、だと報じた。

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タルトゥース市で市民数十万人が参加し、全長2.3キロの巨大なシリア国旗を掲揚し、アサド大統領による改革路線支持、外国の干渉拒否を訴えた。

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シリア高官は、6月以来、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相が、破壊行動停止への協力の条件として、シリア・ムスリム同胞団に主要閣僚ポスト四つを与えるよう求めてきたが、アサド大統領はこの提案を拒否した」ことを明らかにした。

シリア高官によると、8月9日、アフメト・ダウトオール外務大臣はシリア側にこの提案を行った、という。

SANA, September 29, 2011

諸外国の動き

国連安保理メンバーの西側諸国は、シリア政府を非難する声明案において国際刑事裁判所に関する文言を削除する一方、制裁発動への猶予を15日から30日に延ばすことで、妥協点を模索した。

この修正案に関して、ブラジルが支持する意向を示した。

一方、米国は西側の決議案に関して「歯の抜けた弱い」内容とみなし、採択に向けた動きに参加しなかった。

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レバノンのウマル・カラーミー元首相がシリアを訪問し、アサド大統領と会談。

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ロイター通信(9月29日付)は、レバノンの北部県アッカール郡ワーディー・ハーリドに避難するシリア人たちが、「体制が打倒されるまで戻ることはできない」と述べるとともに、シリアによるレバノン主権侵害が続くなかで自らの身の安全も保障されていないと語ったと報じた。

同報道によると避難民たちは地元小学校に仮住まいをして、地元NPOの支援を受けているという。

ただし本ウェブサイト作成者が9月下旬に行った調査によると、ワーディー・ハーリドに滞在するシリア人のほとんどは半定住労働者、ないしは季節労働者であり、また同村は反シリアのムスタクバル潮流が有力だという。

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レバノンのベカーア県ヒルミル郡ダイル・アシャーイル村で、たばこ、アルコール類をシリア国内密輸しようとしたシリア軍兵士を逮捕。

AFP, September 29, 2011、Akhbar al-Sharq, September 29, 2011、AKI, September 29, 2011、Damas Post, September 29, 2011、al-Hayat, September 30, 2011、Kull-na Shuraka’, September 29, 2011, September 30,
2011、Reuters, September 29, 2011、SANA, September 30, 2011などをもとに作成。

 

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