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一般市民による反体制デモがバッシャール・アサド政権の弾圧によって低迷し、離反兵の活動が顕在化するなか、複数の住民・活動家や地元調整諸委員会によると、各地で軍・武装部隊が戦車、ヘリコプターなどを投入し、離反兵の逮捕・掃討作戦を大規模に展開し、複数の死傷者が出た。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市(人口40,000人)で早朝から、軍・武装部隊が大規模な作戦を開始、少なくとも20人が負傷し、うち7人が重傷だという。
複数の住民によると、治安部隊は戦車、ヘリコプターが砲撃を行うなかで、離反兵の追跡・掃討を行った。
また数十台の車輌が市内に進入したとの目撃情報もある。
こうしたなかデモ参加者への発砲命令を拒否した離反兵数百人が「ハーリド・ブン・ワーリド大隊」の名で反乱軍を結成し、インターネット上で声明を読み上げ、「ラスタンはシリア軍の墓場になるだろう」と連呼した(http://www.youtube.com/watch?v=UAVKpd8AnXM、9月26日付)。
同大隊はアブドゥッラフマーン・シャイフ少佐が指揮しており、戦車数輌を保有しているという。
またラスタン市では、離反兵のなかでもっとも階級が高いリヤード・アスアド大佐も活動を行っているという。
ヒムス市では、シリア人権監視団によると、バイヤーダ地区で離反兵が装甲車や戦車を破壊、その後軍・治安部隊が攻撃を行い、少なくとも6人の民間人を殺害、7人が負傷した。
シリア人権監視団によると、ティールマアッラ村、タルビーサ市でも軍・治安部隊が展開し、発砲した。
SANA(9月28日付)は、ヒムス市ワアル地区で大量の武器弾薬を押収したと報じた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ザーウィヤ山のカフルルーマー村で民間人2人が殺害された。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、タファス市で治安部隊の発砲で民間人1人が殺害、5人が負傷した。まトゥスィール村でも軍・武装部隊が展開し、発砲した。
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アレッポ県では、地元調整諸委員会によると、タッル・リフアトに「治安部隊とシャッビーハの車」が進入した。
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ラタキア県では、地元調整諸委員会によると、ラタキア市とジャブラ市で生徒数十人が反体制デモを行った。
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ダイル・ザウル県では、地元調整諸委員会によると、生徒数十人が体制打倒を求めるデモを行った。
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SANA(9月28日付)は、ハマー県サラミーヤ地域のバルドゥーナ村で武装テロ集団が役場を襲撃し、職員1人が死亡したと報じた。
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ダマスカス民主国民変革宣言が声明を出し、反体制勢力の統合に反対しているとの一部非難に反論した。
同声明によると、反体制勢力の統合を求めるシリア国民の要求を「当然の要求」としたうえで、国内外の反体制勢力を区別し、在外の反体制勢力の意図を疑問視する風潮を非難した。
そのうえで反体制勢力の統合が「共通の政治的ビジョン」に基づいて行われるべきと述べ、このビジョンが現段階においては、革命に対する姿勢、およびその目的実現に奉仕する活動に重点を置くべきと主張した。
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シリア民主世俗主義諸勢力連立は声明を出し、シリア国内での平和的革命に向けたあらゆる努力を支援することを表明した。
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シリア国民評議会メンバーのウサーマ・ムナッジド氏は『ハヤート』(9月28日付)に対して、国連総会出席のため訪米中のレジェップ・タイイップ・エルドアン・トルコ首相、アフメト・ダウトオール外務大臣、AKP代表らと会談したと述べた。
同氏によると、会談ではアサド政権による反体制運動弾圧をめぐる「トルコの新たな役割」について話し合われ、そのなかでトルコ側は同問題に粛々と対処し、すべての選択肢を検討していることを明らかにしたという。
また近くトルコが経済制裁を宣言するとの意思を示したことも明らかにした。
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9月18日に複数の地元活動家によって結成された「ガド」(明日)同盟は声明を出し、軍・治安部隊による弾圧を改めて強く非難した。
ワリード・ムアッリム外務大臣は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、イランのアリー・アクバル・サーリヒー外務大臣、ブラジルのアントニ・パトリアタ外務大臣、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長、潘基文国連事務総長と相次いで会談した。
このうち潘国連事務総長との会談は、複数の消息筋は、「きわめて悪かった」と評した。
同消息筋によると、会談では「激しいやりとりが行われ、事務総長は会談の雰囲気、ムアッリムの言葉に激しい怒りを示した」という。またムアッリム外務大臣が「外交的でない言葉」を発したという。
国連安保理が会合を開き、パレスチナ問題を含む中東問題に関する審議が行われた。
『ハヤート』(9月28日付)によると、同会合において、フランスはシリア情勢に関するあらたな決議案を回付したという。
新決議案は「即時の制裁発動を定めていないが、2週間後にそうした措置を講じるとの警告が盛り込まれている」という。
複数の消息筋は、「2週間という事件的猶予は、シリア政府に改革と殺戮停止への真摯な姿勢を示す機会を与えるためのもの」だとしたうえで、ロシアは即時の制裁が盛り込まれていなければ反対はしないと楽観視した。
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国連安保理会合に出席したレバノンのナジーブ・ミーカーティー首相は会談後の記者団との懇談のなかで「レバノンの特殊性を踏まえると、我々は対シリア制裁決議を支持することはできない。なぜなら我々は制裁を実行できないからだ」と述べた。
またレバノンの銀行部門に関して、「国際社会の影響は受けないし、国際社会の要求に反対することもないだろう」と述べたが、ヒラリー・クリントン米国務長官との会談では、「レバノンの銀行におけるシリア人の預金」については議論されなかったと指摘した。
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サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は国連総会で演説、改めて「姉妹国シリアで孤立する国民に対して行われている軍事攻撃を非難」し、「アラブ連盟の決定に従い、攻撃を即時停止し、シリア国民の合法的要求に応えるための包括的改革を遅延なく実施する」よう呼びかけた。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はロシア24チャンネルのインタビューに答え、西側諸国のシリアに対する姿勢を「安易だが安全でない戦略」と形容し、バッシャール・アサド大統領退任要求が「予測できない厳しい結果をもたらしかねない挑発」と非難し、国連安保理での対シリア制裁決議を支持しないと改めて述べた。
その一方で「再三にわたる提案にもかかわらず、シリア政府は外国メディアの取材をなかなか解禁せず、多いに曖昧な点が残る」と述べ、アサド政権の姿勢も批判した。
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米国務省マーク・トナー副報道官は、「過去数ヶ月の暴力のレベルを踏まえると、我々が今…反体制勢力がシリア軍に対して自衛のために武器を用い始めているとしても驚くべきことではない」と述べ、一般市民による反体制デモの収束に伴い、離反兵による散発的反乱が反体制運動の主流になりつつある現状を暗に黙認した。
一方米国財務省は米国のNPOや一部金融機関に、シリアに対する「人道支援」と「シリアの民主主義」や「非営利プロジェクト」を支援する「サービス」を提供することを決定した。
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レバノンの軍事裁判所で、シリア人アブドゥッラー・イブラーヒーム・ダギール氏の「武器弾薬密輸」容疑に関する裁判が行われ、禁固6ヵ月の有罪判決が下された。
ダギール氏はバアス党員でトリポリのレバノン大学で歴史学を専攻、トリポリの下宿で武器弾薬を押収された。
ダギール氏は1,400ドル相当の弾薬を購入したことを認めたが、密輸容疑は否定した。
またダギール氏の代理人は、シリア国内での「革命」、暴動が続くなかで、自らの身の安全を恐れて武器・弾薬を所有していたと述べた。
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FIDHはシリアでの反体制抗議行動に対する弾圧を改めて非難した。
CNN(9月27日付)がDemocracy Councilと合同でシリアで世論調査を行った。
同調査によると、86%がアサド政権のパフォーマンスを否定的に評価し、88.2%が現政権では国の問題を解決できないと考えている。また71.1%が反体制運動を前向きに評価し、消極的な評価をしたのは5.5%に過ぎず、88%がデモ参加者と共通の関心を持っている(share the protestors’ concerns)という。
さらに3分の2以上が「民主主義が他の政治体制よりも好ましい」と考えており、アサド政権の改革だけでは国民の怒りは収まらないと考えていると答えた。アサド政権の存続を望んでいるのは11.5%に過ぎず、87.9%がアサド政権による改革ではデモ参加者を満足させられず、81/7%が政権交代を望んでいるとの結果が出た。
シリアの反体制勢力はトルコのイスタンブールで「円卓会議」開催のための準備会合を27日から本格化させ、反体制勢力の統合をめざした。
複数の消息筋によると、準備会合にはシリア・ムスリム同胞団、アンタルヤ会議の使節団、シリア国民保湯議会メンバーなどが参加するという。
シリア革命総合委員会はワシントンDCで27日に記者会見を開き、民間人保護のための飛行禁止空域の設定への支持を表明、また国連の潘基文事務総長とバラク・オバマ米大統領に書簡を提出し、武器禁輸措置とシリア政府高官の資産凍結を求めた。
地元調整諸委員会などとともに国内で反体制デモを組織・指導していたはずのシリア革命総合委員会が米国で過激な発言を行ったことは、シリアの反体制運動が外国に扇動されているとのアサド政権の主張に説得力を与えてしまうことは必至である。
AFP, September 27, 2011、Akhbar al-Sharq, September 27, 2011, September 28, 2011、AKI, September 27, 2011、CNN, September 27, 2011、al-Hayat, September 28, 2011、Kull-na Shuraka’, September 27, 2011、Reuters, September
27, 2011、SANA, September 28, 2011などをもとに作成。
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